そのさん
「コーに好きなものを作ってあげたいのだ~」
クロサイ獣人は小部屋で呟いた。
人間の銀行家が住まう立派な家の、立派な調理場。
天井の一部にある隠し扉から通じる小部屋では、獣人と人間の料理人ペアが打ち合わせをしていた。
気配をたどってその隠し部屋の扉にジャンピング頭突きして以降、草食獣人の敏感さと肉食獣人の勢いを備えたクロサイは、ただ一人の出入り自由な客人だった。
「何を作りたいのかな」
「私達で助けになるのかな」
人付き合いに疲れた顔出しNGな料理人ペアは、フード付きマントをコック服風にアレンジしている。
クロサイはこの料理人達にコーと同じ匂いを感じてすぐなついていた。
「ししょー達ならコーの好み、分かるのだ~?」
銀行家に拾われるまで、数限りない人々の好みを分析し、数限りない料理を提供し、数限りない疲労を蓄積してきた料理人ペアは、しかし、困惑した雰囲気を出した。
「コーお嬢さんは、難しいかな」
「利益はくれても、素直な味の感想はくれないタイプかな」
「あまり味も感じてないかな」
「手強いかな」
「美味しいとは言ってくれるかな」
「それで満足してはどうかな」
う~。
ししょー達に慰められたクロサイは、大きな体にしっぽをぺたりとさせたまま、隠し部屋からトスリと落ちて歩き出した。




