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紅蓮の公爵令嬢  作者: 青木のう
第3章 Conspiracy~恋心~
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第87話 火と風の甘い二重奏

今回、最初の部分はウィンフィールド(ディランの執事)視点です。

「どうぞ、こちらが調査報告書です」

「ありがとうございます」


 親愛なる我が主君、第二王子殿下から特命を受けた私――ウィンフィールド・レンヒフォは、普段は公爵令嬢の護衛役を務めているという、筋肉質な男から報告書を受け取り目を通す。


 レンドーン家と提携したのは正解だった。

 かの公爵家は、独自のコネクションをもって調べ上げる。


 調査の結果わかったことがある。例の男の名前は、通称“赤鼻(あかはな)のジョー”という名で、怪しい小商(こあきな)いをやっているようだ。

 

 ジョーはミドルトン男爵夫人だけではなく、複数の貴族と接触していることが判明している。そしてその多くはいわゆるルーノウ派閥に所属する貴族だ。まだジョーの主人は特定できていないが、もはや黒幕は明らかだろう。


 ここまではあのパンツ令嬢――もとい、“紅蓮の公爵令嬢”レイナ・レンドーンの読み通りだ。


 かの令嬢は我が主君の下着をねだるなど特異な性癖を持ちながらも、その才知は優秀と評判だ。エンゼリアで教鞭(きょうべん)をとる我が友シリウスも、手紙の中で大きく評価していた。


「しかし、ルーノウとは……」


 ルーノウ公爵家とその派閥は、間違いなく王国の柱の一つだ。その反乱となると国を二つに分けた内乱となるだろう。そしてその裏には必ず大陸で勢力を伸ばすかの国――ドルドゲルスがいる。


 元来我が国の宿敵は、海峡を挟んだ対岸のアスレス王国だった。けれどもアスレスとは先王の時代より友好的な関係を保っている。


 その為、比較的遠方に位置するドルドゲルスの対応をめぐって我が国の対応は二分されている。すなわち、急拡大するドルドゲルスの事を脅威に思うレンドーン派と、大陸に近いゆえ伝統的にアスレスと敵対し、その敵であるドルドゲルスと結ぶべきと主張するルーノウ派だ。


 外交の基本は遠交近攻。ルーノウ派閥の言い分も一理あると思っていたが、まさかこれほどの野心を見せているとは。かくなる上は、反乱の芽を摘み取るべく少しでも早く確かな証拠を掴んでご報告せねば。


「……これは、農機具の輸入記録?」


 報告書には、ジョーと接触した貴族の経済活動の記録が添付されている。その中の一つに、とある貴族が極めて大量の農機具をドルドゲルスから輸入した記録があった。


 ――不自然だ。


 この貴族はこれほど多くの農機具が必要な領地を持っていない。では販売か? それも怪しい。調べてみる価値はあるだろう。



 ☆☆☆☆☆



 夜のエンゼリアへと潜入し、立ち入り禁止の隠し書棚を限界ギリギリまで調べた私だけれど、結局”オプスクーリタース”の行方はわからず、おそらく既に悪意ある何者かの手に渡っていると結論に至った。まあその何者かは高確率でルシアでしょうけれど、証拠は無いし問い詰めることはできないわ。


 つまり今のところ解決する方法はない。成果なし。いえ、ないとわかっただけでも成果かしら? というわけで私はその件はさておき、一先ず目の前の課題に当たる。それは――。


「さあ、待ちに待った日が来たわよ!」


 お料理研究会の活動!

 部員が倍に増えた我がお料理研究会、いよいよ大型イベントの始動よ。


 私、レイナ・レンドーンプレゼンツのこのイベント。それは一種のお祭りだ。


 前世の文化祭に着想を得て、各部活と連携。その結果、演劇部の新作発表、美術部の展示会、馬術部の競技会、そして剣術部の他校との親善試合を同日に開催することに成功したわ。そして私たちお料理研究会は、出店としてお料理をお出しするというわけ。


「さあ予定通り始めるわよ。ルークとコーネリアスはかき氷の準備を」

「ああ、わかった」

「わかりました!」


 随分と温かくなったこの季節、ルークには私が教えたかき氷を魔法で大量生産してもらう。ルークの高精度の氷魔法なら、とっても美味しいかき氷を作れることを実証済みだ。そしてコーネリアスは新入部員唯一の男子。ルークの補佐をしてもらうわ。


「アリシアはオリヴィアと一緒にホットドッグを焼いてちょうだい」

「はい、レイナ様」


 スポーツ観戦と言えばホットドッグよね。アリシアの焼くパンならきっと美味しいホットドッグができると思う。


「サリアとリリーにはフライドポテトを任せるわ」

「お任せくださいレイナ様」


 サリアの料理の腕はこの一年でメキメキと上達した。ここは任せても大丈夫。


 それにしても、前世でのジャガイモやトマトの原産地は南アメリカだっけ? 確かそういう風に世界史の時間に聞いた記憶があるけれど、この世界では既にどっちも存在するわ。まあここは地球ではないし考えるだけ無駄ね。


「ヨランダは私のお手伝いをしてちょうだい。凄いものを見せてあげるわよー!」

「はい、よろしくお願いしますレイナ様」


 ウヒヒ、私はこの日の為に新しい技を開発したのだ。

 なお売り子は、エイミーの申し出で魔導機研究会の方たちがお手伝いしてくれることになっているわ。


「さあ、お料理開始!」



 ☆☆☆☆☆


「レイナ様、準備ができました!」

「ご苦労様、ヨランダ。下がっていてね」


 この日の為に私が用意した、真ん中に特異な形のついた鉄鍋を設置したヨランダに、礼を言って下がらせる。見慣れない形であろうこの鉄鍋は、私がお祭りに欠かせないと信じる前世のあるものをこの世界で再現する為に職人に作ってもらったものよ。


「さあ行くわよ! 風よ、火よ!」


 私は風の魔力で鉄鍋を浮かせ、それを中心に《旋風》を起こす。そして火の魔力で少しずつ温度を上げていく。成長した私にはこんな繊細な魔法操作もできるのよ。


「ヨランダ、砂糖を」

「はい!」


 ヨランダに呼びかけ鉄鍋の真ん中の器具に、砂糖を入れてもらう。さあ、仕上げよ!


「必殺《魔法式(マジカル)綿菓子(コットンキャンディー)製造機(メーカー)》!」


 熱で溶けた砂糖は鍋が回る遠心力で飛び、冷えて繊維状となる。まさに火と風の二重奏(デュオ)。甘い匂いが周囲に香り立つ。そしてそれを棒でからめとれば完成。


「できたわ、これが綿菓子よ!」

「わた……がし……! まるで雲みたいですね。それに甘くて美味しいです」


 ヨランダは私から受け取った綿菓子を頬張りながら、笑みを浮かべる。

 ウヒヒ、予想通りの称賛をありがとうヨランダ。


 ――これが私の新たなる魔法再現料理、綿菓子だ。


 私のフワッとした記憶を元に、幾度かの試行錯誤を経て完成した綿菓子用の鉄鍋は、立派に役割を果たせるみたいね。私の祭りと言えば綿菓子という執念が、実際のところどんな構造か知らない綿菓子機を作り出した奇跡の再現料理だ。


「さあ、この綿菓子で天下を取るわよ。ついてきなさいミランダ」

「はい、レイナ様!」

「オーホッホッホッ!」



 ☆☆☆☆☆



「いらっしゃい、いらっしゃい。珍しいお菓子を売っているわよー!」


 私の執念が生んだ綿菓子は飛ぶように売れている。見た目も良いし、何より甘くて美味しいからね。綿菓子の製造も私のチート魔力量ならノンストップで続けることができるし、問題なし!


「はいどうぞ。危ないから歩きながら食べちゃダメよ?」


 ルークたちのかき氷、アリシアたちのホットドッグ、サリアたちのフライドポテトも順調みたいだし言うことなしだ。何よりお天気に恵まれて良かったわ。


「ひとついただけるかい?」

「はい、すぐに……ってパトリックじゃない。剣術部の方はいいの?」

「休憩中だよ。ところで聞いたかい? 不穏(ふおん)な噂を」

「……不穏な噂?」

「そう。なんでもお料理研究会は、僕たち剣術部を軽視しているそうだよ。根拠は出店の位置をスタジアムから遠いところに設置しているからだとか」


 私たちが剣術部を軽視!?

 そんなわけないじゃない。


 今回の件は私が友人であるパトリックを頼って、剣術部の部長さんと交渉して実現したことだ。感謝こそすれども軽視する理由はないわ。


「そんなの事実無根ですわ。出店の位置は火や水の都合上です」

「そうだね。もちろん僕や剣術部の皆も信じてはいないさ。でもこういう噂を流す人間がいることは気をつけた方がいい」

「ご忠告感謝しますわパトリック。綿菓子です。試合、頑張ってくださいね」

「ありがとう。今日も君に勝利を捧げて見せるさ」


 まあ噂の出所は考えるまでもなく悪役令嬢四天王でしょうね。正直私の友人たちはそんな噂を信じるとも思えないし、直接的な妨害にでないだけまだまし……かしらね?


読んでいただきありがとうございます!

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