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紅蓮の公爵令嬢  作者: 青木のう
第3章 Conspiracy~恋心~
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第79話 気炎万丈ブレイズホーク

「行くわよ〈ブレイズホーク〉!」


 愛機(仮)もしくは専用機(暫定)の名前なんて叫んじゃったりして、私はどうしちゃったのかしら?

 けれども〈ブレイズホーク〉は私の操作にビッチりと正確に従い、地面をけってその上を滑るように移動する。飛行の応用だ。前世で言えばホバーと言ったところね。


「敵は……見えた!」


 ディラン、ルーク、パトリックの連携でなんとか足止めしているみたい。

 けれども多勢に無勢。倍以上の相手に防戦一方だわ。

 金属同士が激しく打ち合わせられる音が、雨の森に響いている。


「来たわよみんな!」

「その声は……レイナ!」

「ええ、そうよ。今度は私が助けるわ!」

『レイナ様、敵が密集しているので砲撃を。肩のサブアームを展開してください』

「わかったわ! みんな避けて!」


 私は前線で戦うみんなに退避を促し、エイミーから聞いていた操作を実行する。

 エイミーは長々と機能を説明したかったみたいだけれど、そんな暇はないからざっくり聞いて覚えたわ。私は説明書ってあんまり読まずにとりあえず使ってみるタイプなの。


 あれ? でも家電は保証期間があるけれど、これにはあるのかしら?

 と思う間に、〈ブレイズホーク〉の肩についているサブアームが展開して四門の砲になる。


「こんがり行くわよ《火球》! 五連打!」


 〈ブレイズホーク〉の右手から、そして肩の砲門から、合計五本の光が敵を貫く。これがエイミーの作った私専用のギミックの一つ。私がおとぼけ女神からもらったマシマシ魔力を余すところなく活用する機能だ。


 激しく、そして鋭い私の魔法を避けることができずに、二機の〈シュトルム〉が爆散する。

 すごい威力だけれど、機敏な〈シャッテンパンター〉には避けられた。


 距離を置いては危険と判断したのか、一機の〈シュトルム〉が手斧を片手に突進してくる。

 それを見て私は腰に下げてある剣を引き抜く。


「私だって剣は小さい時から握っていますのよ!」


 相手に聞こえるわけでもないけれど思わず叫び、剣に魔力を込める。

 この剣は〈フレイムピアース〉という大層な名前がついている。そしてこの機体の為に造られたこの剣は、魔力を通せば強化魔法のように強度が上がる特殊な金属でできている。


「もらった! 《炎熱斬(えんねつざん)》!」


 魔力が込められ金色に輝いた〈フレイムピアース〉は、炎を纏い敵を切り伏せる。知識としては知っていた、剣に火の魔力をのせて攻撃する魔法。ディランの《雷霆剣》を参考に見様見真似で決めたけど、上手くいったわね。


「すごいですレイナ!」

「ウヒヒ、ありがとうございますディラン。残りの〈シュトルム〉はお任せできますか?」

「ええ、任せてください。レイナは〈シャッテンパンター〉を?」

「はい。私が戦わなければいけないと思います」

「わかりました。気をつけて」

「ええ、殿下たちも」


 〈シャッテンパンター〉は〈ブレイズホーク〉を組し難しと判断したのか、仲間を放って森の中へと消えた。ディランは大丈夫と言ったし、まだライナスとアリシアも控えている。乙女ゲームのメインキャラ五人が揃えば、同数のモブになんて負けないわよ!



 ☆☆☆☆☆



「あら……? もしかして私を待っていたのかしら?」


 〈シャッテンパンター〉は探すまでもなく、すぐに発見できた。

 雨が降り雷鳴轟く暗い森の中、私を待ち構えるようにたたずんでいた。

 漆黒の外装、悪魔の様な一対の角、そして手に握るハルバードは、見る者を恐怖させる。


「けれど、負けるわけにはいかないのよ! 《火球》!」


 まずは軽い一撃。牽制の一撃だ。〈シャッテンパンター〉は当然のように避けて、その身を低くかがめ跳躍すると、一気にこちらとの距離を詰めてくる。


 あの恐ろしいハルバードの切っ先が私の視界に迫る。


 だけどこれは狙い通り!

 私は〈フレイムピアース〉を構えて迎え撃つ。これを計算に入れて先ほど魔法を放ったのは左手よ!


 ――ガッキーン!


 と、激しくお互いの武器同士がぶつかりあい、鈍い音が響く。

 大丈夫〈フレイムピアース〉なら打ち負けない。それなら次の一手は……!


「肩部装甲展開! 必殺《魔法式(マジカル)ミキサー(ヘルシージューサー)》ダブル!」


 肩部サブアームのギミックは遠距離攻撃用の為だけのものではないわ。砲塔だけでなく四本の腕の様にもなって、近接での魔法も発動できる。


 発動したのは《旋風》を改良した《魔法式ミキサー》。それもダブルで。二本の風のドリルが敵を襲い、削られる装甲にたまらず〈シャッテンパンター〉は飛びのく。


「どうかしら、私のこの美しい髪型の様なドリルのお味は?」


 威圧するように煽ってみるけれど、敵はいまだに戦う気力を失ってはいない。

 体勢を立て直し、再び突進してきた。

 左、いや右からハルバードが襲い来る。


「《炎のマント》!」


 〈ブレイズホーク〉の背中のマントもただの装飾ではない。これも剣と同じく、魔力を吸うことによって強度を増して盾代わりになる。


 そして今私が発動させたのは、マントに魔法の炎を纏わせる呪文だ。これでマントは物理にも魔法にも防御能力を得た。


 防御する素振りを見せなかった私の魔法の発動に、〈シャッテンパンター〉は思わず姿勢を崩す。


「《泥沼》! そしてジャンプ!」


 体勢を崩していた〈シャッテンパンター〉は成すすべなく《泥沼》へとはまる。

 そして私は〈ブレイズホーク〉を跳躍させた。


「わわっ! 本当に飛んでるわこれ」


 まだ乗りたて、自由自在に飛行することは叶わないわ。

 けれど大きくジャンプして浮遊させることくらいはできる。


「この距離なら! コンラッド隊(みんな)(かたき)! 《大火球》!」


 ――閃光。


 サブアームが変形した砲塔も合わせた《大火球》を超えた《大火球》が形成されて、極太の閃光が地上を焼き尽くす。眩い輝きは森中を照らし、さながら地上に太陽が出現したみたいだ。


 やがて閃光がおさまったとき、クレーターの中心地にはボロボロの〈シャッテンパンター〉が立ち尽くしていた。


「この攻撃を受けてまだ立っているのに驚きね。さあて、どこの誰が乗っているか見せてもらいましょうかね」


 私はゆっくりと慎重に近づき――、


「――ッ! 《炎のマント》!」


 魔法で狙撃された!?

 とっさに防御できたけれど、森の中から私を狙う一撃が……!


「――あっ! 逃げられた!」


 私が伏兵を警戒した隙をついて、〈シャッテンパンター〉は姿を消していた。

 周囲にもう敵意は感じない。回収の為の援護だったということね。


「こっちは終わったわ。逃げられちゃったけど……。エイミー、そちらはどうかしら?」

『こちらも殿下たちのご活躍で全機撃破です。それからアリシアさんによると、コンラッド隊の方々はみんな一命をとりとめたそうです』

「そう、良かったわ」


 ホッとして全身から力が抜ける……。

 ハイキングはもう終わり。さあ、学院に帰りましょうか。



 ☆☆☆☆☆



「セリーナ、大丈夫?」

「はい! 私は元々大きな怪我はなかったのでもうすっかり大丈夫です」


 戦闘から数日が経ち、私は学院の病室へとお見舞いに来ていた。コンラッド隊の面々は重傷者こそ出したものの幸いにして死者はなく、今は全員快方へと向かっているわ。


 みんなしきりに私にお礼を言うけれど、増援に来てくれたディラン達のおかげだし、みんなを助け出して初期治療を施したのはアリシアとライナスだ。私としては〈シャッテンパンター〉を取り逃した悔しさも大きいわ。


「それじゃあまた来るわね。お菓子を作って来たから食べてちょうだい」

「はい! ありがとうございますレイナ様!」


 私はみんなへのお見舞いを済ませると、寮への道を急ぐ。

 季節はすでに冬。もうすぐ冬休みだ。

 ううっ、寒いわね。


 そして寮へとたどり着き、自分の部屋へと向かっている途中だった。


「――! ――ッ、――――!」


 なんだろう。すごい怒鳴り声。

 これは……ルシアの部屋から?


 そう言えばルシアもここ数日病欠しているらしいわね。

 卒業パーティーの時の後遺症かしら?

 頭を打つのは危ないわ。


 私は興味本位でルシアの部屋へと近づく。

 すると、扉に耳をたてることなく中の会話が聞こえてきた。


「あんたのご主人様に伝えなさい! 次はもっと使えるおもちゃをよこしなさいって!」


 なんのことだか。

 何か商品を頼んでいたけど満足いく物じゃなくて、癇癪を起しているとか?


「おっと……」


 ルシアの部屋から人が出てくる気配がして、私は飛びのく。

 出てきたのは年若い女性だ。人形の様な顔立ちで、紫色の髪の毛が目をひく。

 女性は私に気がつき、少し頭を下げると行ってしまった。


「なんだったんだろう。……まあいいか!」


 私には関係ない事よね。野次馬根性はいけないわ。

 さてと、クラリスに心配してくれたお礼をしなくちゃね!


読んでいただきありがとうございます!

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