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紅蓮の公爵令嬢  作者: 青木のう
第2章 Heroine~入学~
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第35話 ゲームスタート!

「それではお父様、お母様、出発しますわ」

「レイナ、よく勉強するんだよ。身体には気を付けてね」

「レイナさん、レンドーン家の令嬢として恥の無いように振舞(ふるま)わないといけませんよ」

「はい!」


 いよいよエンゼリア王立魔法学院への入学の日がやってきた。お父様とお母様も大事な一人娘を送り出すのが心配でしょうね。でも大丈夫、私は一人暮らしには慣れていますから。前世で!


「クラリス、レイナが意地悪されたらすぐに連絡するように!」

「クラリス、レイナさんが伝統あるエンゼリアの校舎を吹き飛ばすなんてことのないように気を付けておきなさい」

「旦那様、奥様、承知いたしております」


 あら? お母様は私が心配っていうより私がやらかすことが心配?

 私だってもう立派な淑女だし、そんな簡単に校舎を吹き飛ばしたりしませんわ……たぶん。



 ☆☆☆☆☆



「――それでは新入生代表の挨拶を、ディラン・グッドウィン!」


 エンゼリア王立魔法学院入学式。

 大ホールに集まった新入生たちの前で、長々とお偉い人の挨拶があっていた。


 色々考えて挨拶されているのでしょうけれど、こういう時の挨拶ってどうしても頭に残らないのよね。ごめんなさい。


 そして、新入生代表としてディランの名前が呼ばれ、壇上へと歩いていく。

 大勢の観衆の前でも気後れせず、ビシッと歩く姿はまさしく王子様だ。

 女の子たちがこっそりキャーキャー言っているわ。あっ、ウインクした。


「この伝統ある学び舎に、入学を許されたことを光栄に思い――」


 ディラン、堂々としているわね。


 マギキンだとこの入学式の挨拶が最初のイベントスチルだった。主人公であるアリシアが「こ、これが本物の王子様!? カッコいい! これからこんな素敵な人と一緒に学園生活を送れるのね」と、感動する。そんなシーン。


 ということは、このホールのどこかでアリシアが感動しているんでしょうね。

 頑張ってねまだ見ぬアリシアちゃん。あなたの未来は明るいわ。私をデッドエンドに巻き込まないようにだけは気を付けてちょうだい。


「――新入生代表、ディラン・グッドウィン」


 挨拶が終わると、ホールは万雷の拍手とディランへの黄色い歓声に包まれた。

 さあ、いよいよゲームスタートよ。



 ☆☆☆☆☆



 入学式が終わると、各クラスに分かれて担当教諭からの説明がある。

 クラスと言ってもこのメンバーで一日過ごすわけじゃない。必修科目の時やこういった連絡の時に顔を会わせるくらいだ。


 人数は五十人ほど。それが四クラスだから学年は二百人くらいかな。ゲームの印象と比べると多いわ。


 階段教室の端にエイミーとリオと座って待っていると、それほど待たずして一人の男性が入ってきた。


「俺がクラス担当のシリウス・シモンズだ。魔法戦闘を担当している。得意属性は風だ。必修だから顔を会わせる機会も多いだろう。よろしく頼む」


 シリウス先生!


 シリウス・シモンズ先生は冷静だが優しい性格で、マギキンでも人気キャラだった。私たちの少し年上のお兄さんポジなんだけど、このいかにも大人の男性って感じが良いのよね~。


 けれど何故か攻略対象ではなかったの。

 私も残念だったけど、そう思うプレイヤーは多かったらしく「なぜシリウス先生ルートはないのか」というインターネッツの書き込みもよく見かけたわ。


 スタッフによると、ローカライズの都合という話だったけれど一体どういう事なの?


「ウヒヒ。エイミー、カッコいい先生で良かったわね」

「大丈夫ですわレイナ様。私はレイナ様一筋ですわ」


 確かマギキンでのエイミーはカッコいい人が好きなミーハーだったから話しかけてみたけれど、やっぱりゲームとは変わっているみたい。でも友情に厚い良い子で良かったわ。


「それでは軽く自己紹介でもしてもらおうか。そうだな……、レイナ・レンドーンから」


 ――ええっ、私から!?


 そんな展開だったかしら? 油断していた。


「レ、レンドーン公爵家のレイナ・レンドーンです。得意属性は火ですわ。よろしくお願いいたします」


 パチパチと拍手が起こり、知り合いではない方からは「あれが紅蓮の公爵令嬢か」といった声が聞こえてくる。こういう人前での自己紹介とかプレゼンって前世から苦手なのよね……。


 私の次は隣に座っていたエイミー、そして次はリオと、どんどん自己紹介は進んで行く。

 ディランとルークは同じクラスで、ライナスとパトリックは別のクラスだ。


 ゲームだとルークは部屋に籠って魔法の研究をしているので教室では出会えなかったのよね。

 つまり本来はアリシアが教室で接触する攻略対象はディランだけなんだけれど、これがどういう風に影響するのか気をつけておかないと……。


 そう言えばアリシアの得意属性は何だろう?

 ゲームだと選択肢やルートによって変わっていたわ。攻略サイトをみたわけじゃないから厳密にはわからないけれど、アリシアの得意属性から行動やルート分岐を予測できないかしら?


 ……などと考えているうちに自己紹介は進み、ついに()()()()()になった。


 その人物はふんわりとやわらかな蜂蜜色のセミロングで、青い瞳は力強さを感じる。あふれ出るヒロインオーラを放つ少女――。


「アリシア・アップトンです。平民です。両親は小さなパン屋さんを営んでいます」


 ――そう、マギキンのヒロインアリシアだ。


 わあ、ゲームそのままで可愛いわね。まとっているオーラがキラキラのキラよ。

 でも“両親は小さなパン屋さん”っていうのにみんな(ざわ)めいている。


 このクラスにも他に何人か平民の子はいるけれど、みんな豪商(ごうしょう)の子なんかだしね。成功した商人が貴族家出身の奥さんを貰った結果、子どもが高めの魔力を得たってパターンが多いわ。


 だから親族に貴族のいない本当の意味で平民出身の子はエンゼリアには珍しいし、なおかつ推薦入学生だから嫌でも注目を集めてしまう。


「皆様どうかよろしくお願いします。……あっ、得意属性は闇です」


 パラパラとまばらな拍手が起こる。

 ……それにしても闇属性か。


 勘違いしてはいけない事なんだけれど、闇属性というのは単なる魔法の六属性の一つであってイコール邪悪な属性というわけではないのよね。


 たしかマッドン先生の授業によると、自分の強化が得意な光属性と反対に相手の弱体化が得意、そんな属性らしい。


 私の懸念(けねん)材料はそこじゃない。

 私は前世でマギキンをプレイしていた時に、闇属性にはなったことがない。

 まあ属性なんておまけのシステムみたいなものだろうけど、この世界だとどんなイレギュラーに繋がるかわからないわね。これも気をつけなきゃ。



 ☆☆☆☆☆



 一通りの説明が終わって初日は解散となった。

 私は同じクラスになったディラン達と中庭でいろいろと話すことにした。

 しばらくは寮生活に慣れるのと、履修登録なんかで忙しいでしょうね。


「レイナ、同じクラスで嬉しいよ」

「私も嬉しいですわディラン殿下。いろいろとよろしくお願いしますね」


 私はあなたの恋の邪魔はしないから、無事卒業できるようによろしくお願いしたいものだ。

 いつまでもキャラ崩壊の無い王子でいてください……。


「おう、俺もよろしく頼むぜ」

「ルーク、貴方はちゃんと学校に来るのよ?」

「どういう心配だそれ……」


 マギキンだと授業にも出ないで引きこもって研究していたからです。

 ちゃんと学院にくればルークは原作ルートを回避できそうだ。


「そういえば、あの噂の平民の子も同じクラスだったな」

「……まさかルーク、魔力が高いからってあの子に魔法勝負なんて申し込まないわよね?」


 アリシアちゃんの魔力はルークに匹敵するという。原作ならともかく、この世界のルークだと魔法勝負を挑みかねない。なにせ私に勝負を挑んだという前科があるわ。


「しねえよ!? 俺を狂犬か何かと思っているのか? だいたいお前のほうが魔力高いじゃねえか」


 ……私の家に押し掛けて勝負を挑んだのはどこの誰で?


「そう言えば僕は少し話をしましたよ」

「――!? ディラン、どこで話しましたの!?」

「入学式が終わった後、教室に行く際です。彼女、こんなに広い建物に来たことがないので分からないって言っていたので、一緒に行くときに少し」


 こ、これはディランとの初対面イベント!


 アリシアは教室への行き方がわからなかったが、平民出ゆえに誰かに聞くのを躊躇(ちゅうちょ)してしまう。そんな時、途方に暮れるアリシアに声を掛けるのがディランだ。


 「あの素敵な王子様が私なんかを気遣ってくれるなんて」と喜ぶアリシアに、ディランの方も短い会話時間ながら、アリシアの人となりを知って興味を持つ……、という場面だ。


 ゲームと一緒の展開じゃない!

 乗り越えないと、運命を。でないとあのおとぼけ女神が珍しい真顔で言った()()()()()に従って私は死ぬ。


「レイナ、大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫ですわディラン」


 愛を止める権利なんて私にはないわね。みんな自由に恋して結構!

 ただし私は生き残る!

 YESラブ、NOビームの精神で行きましょう。

読んでいただきありがとうございます!

皆様の評価が私のモチベです。

ブクマ、☆評価お願いいたします!

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