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紅蓮の公爵令嬢  作者: 青木のう
第7章 Justice~内戦~
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第197話 深まる疑惑と美魔女皇帝

「終身名誉会長、こちらの書類の確認をお願いします」

「わかったわサリア」


 多数の部員、潤沢な備品、轟く名声。もはや弱小部活だったお料理研究会の姿はどこにもない。我がお料理研究会は、今年度も多数の新入会員を迎えることになった。これでも面接でだいぶ弾いたのだ。


 料理の腕は問わない。けれど料理に対する興味は見抜かせてもらう。そうしないとルークやアリシア目当ての出会い厨や、コネ作り目当ての人がわんさか溢れちゃうからね。私は書類に目を通しながらも、新入会員に説明をしているルークとアリシアを横目で見る。


 良い雰囲気だ。このまま原作のスチルに採用されても私は文句ない。二人の関係は悪くないと思う。でもそれが恋愛関係のそれかは判別がつかないわ。アリシアは卒業後にはレンドーン家に仕えることが確定している。そんな公私ともに信頼しあえる関係を築きたいからこそ、私は悩む。


「? レイナ様、何か御用ですか?」

「――え!? な、なんでもないわよアリシア、オホホ」


 おっと、全集中して見過ぎていた。でもこう、やっぱりヒロインのアリシアが楽しそうにしていると落ち着くわね。ウヒヒ。


 おとぼけ女神の言う()()()()()()()がどの程度の内容を示すのかはわからない。まあ妥当なところなら、本編で攻略できなかったキャラのルート実装や、本編キャラたちの違った一面が見られる新規CGなんかよね。


 そしてファンディスクには新キャラが出る。セオリーから言って一人二人の新キャラがいることは確定と言っていいでしょう。そのキャラたちが、どう私やアリシアに絡んでくるか。それが問題だ。


 来るなら来てみなさい新キャラ達! 乙女ゲーマイスターでデッドエンド経験者の私が、全力で私の人生にとって無害にしてさしあげますわ。オーホッホッホッ!



 ☆☆☆☆☆



「それじゃあレイナ、また後で」

「レイナさん、パーティーを抜け出したりしてはダメよ?」

「わかっていますわお母様。それではまた後で」


 とある日、私は王都で開かれているあるパーティーに出席していた。講義もあまり受けなくていいから、レンドーン家の顔としてこういったパーティーには最近よく引っ張り出される。


 私は両親と分かれると、パーティー会場を見渡す。さてと、どうしようかしら?


 今日のパーティーは外国からの要人を招いた交流会のようなもの。ディラン達も出席しているわけだけど、それぞれみんな忙しそうだ。私への挨拶ラッシュはとりあえず両親といた時に済ませたし、少し暇になった。


「やっと人が途切れたか。レイナ殿、久しぶりだな」

「あら、あなたはモグラのお姉さん!」

「いや……、まあそうなのだが、私の本名覚えているよな?」


 声を掛けてきたのは凛々しい顔立ち、ポニーテールがチャームポイントのお姉さん。今日もドレスじゃなくて、シュッとした感じの男装がカッコよく、私と戦い後に共闘したドルドゲルス十六人衆の一人だ。えーっと、名前は確か……、


「もちろん。ユリアーナさんですよね。ユリアーナ・ウルブリヒさん。お久しぶりですわ」

「うん、憶えているならいいんだ。それにしてもレイナ殿は人気者だな。話しかけようと思ってもだいぶ待たせて頂いた」

「あはは……、もう顔と名前を覚えるのが大変で……」


 さっきまでは十重二重の人に囲まれていた。英雄なんてなるもんじゃないわね。


「今日は国王陛下の護衛として来たのだ。十六人衆も数が少なくなってしまったからな。いろいろと忙しい」


 うっ……、それを聞くと僅かばかりは罪悪感が。なにせ十六人衆の大半を倒したのは私だ。


「ははは、レイナ殿を責めているわけではないさ。何人か補充の者も入れたし、我が国の再建はこれからだよ。ところで……」


 ユリアーナさんは快活に笑うと、声を潜める。


「先日の戦闘、レイナ殿の魔法を止める奴がいたそうだな?」


 そうだ。今まではこのユリアーナさんくらいにしか防がれたことのなかった私の魔法を、あの“旋風”のイェルドと魔導機〈フウジン〉には防がれた。その戦いの事は機密情報なので、他国の人間には軽々しく言えない。私が黙っていると、ユリアーナさんは続ける。


「そう警戒するな。そちらの国から我が国に照会が来たから、ある程度は把握している。私も戦場に立って長いが、イェルドなんて男は知らん。そんな奴がレイナ殿の魔法を止めたのは驚きだ」


 まったくもって私も驚きよ。というかユリアーナさんに止められた時も驚いたけれど、確か“強固なる”って異名持ちの防御特化なんですっけ? でもイェルドは防御特化といった感じでもなかったし、なにより私の力はユリアーナさんと戦った時より増している。


「それにあの〈フウジン〉とかいう魔導機、僭称帝(せんしょうてい)ハインリッヒが計画していたものに良く似ている気がする」


 その名前を聞いた瞬間、不快な汗がブワッと出てゾクゾクと悪寒が走った。当然だ。だってその男は私が死ぬ原因となった奴、この世界に魔導機がのさばるようになった原因。不快感しかない。


「それってどういうこと……? まさかあいつが生きているとか……?」


 私の問いかけにユリアーナさんは首を振った。


「わからない。だが気をつけておいた方がいい。この一件、どうやらそれで終わりじゃない気がする……」


 全く勘弁してほしいわ。あの男が生きているとしたら私は終わりのないストーカー被害に気をつけないといけないし、ロボットバトルに身を投じないといけないじゃないの。あー、でも〈フウジン〉とかいうジャパニーズネームの説明がつくし、パズルのピースが埋まり過ぎていて嫌。もう嫌!


「私とて何事もないことを祈っているさ。それではなレイナ殿、また会おう」


 不穏な事を言うだけ言って、ユリアーナさんは立ち去った。

 いやいやいやモグラのお姉さん、それってフラグじゃありませんこと? 新たなる強敵が出てきて前章の中ボスがかませになるとかありますよ? ここは乙女ゲームなんだけど、たまに理屈が少年漫画だからお気をつけて……。


「もし、ちょっとよろしいかしら?」

「はい――、あ、あなたは!」


 見た目はせいぜい四十歳くらいの綺麗な貴婦人。雪のように白い肌に、美しいブルーのドレス。全身を彩る宝石が、並みの貴族ではないことを表している。私はこの女性を見たことがある。というか始まる時に壇上で挨拶をしていた一人だ。


「し、失礼しましたわ。これはバルシア皇帝陛下、お初にお目にかかります」

「まあ、そんなにかしこまらなくていいのよ」


 口を隠しておほほと上品に笑うこの女性は、バルシア帝国の女皇帝リュドミーラ・レオニードヴナ・レオーノヴァ様だ。


 バルシアはドルドゲルスの東方、雪深い地域にある大国で、前大戦の時もドルドゲルスから侵攻を受けたけど自慢の物量と寒さで撃退したらしい。私たちが十六人衆をまとめて相手しなくて良かったのも、東方からバルシアが圧迫してくれたからだ。だからロザルス攻略戦には不参加だったけれど、講和会議にも戦勝国として参加した。


 そんなバルシアをまとめ上げるこの女帝は、まだ若く見えるけれど実際は八十くらいのお年らしい。美魔女(びまじょ)とかそういう次元じゃないわよね。お肌の手入れを教えてほしいわ。


「わたくし、一度あなたとお話してみたかったの。少しお時間よろしいかしら?」

「ええ、もちろん。光栄ですわ、女帝陛下」


 なんだろう。一子相伝のアンチエイジングの秘訣でも教えてくれるのかな? 私はさっきまで抱いていたハインリッヒへの警戒感を頭の片隅へと追いやり、美魔女皇帝にほいほいとついて行った。


読んでいただきありがとうございます!

次回更新【2月22日】

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