魔導機大全グッドウィン王国編
☆魔導機
全長十メートルほどの鉄の巨人。令和日本でいう、アニメなどに登場するロボット兵器に類似している。基本的に騎士の甲冑をそのまま等身大に大きくしたようなフォルム。その鋼鉄のボディは魔法使いにとっての鎧となり、魔導コア(別名魔導エンジン)によって増幅される魔力は魔法使いにとっての矛となる。
大ドルドゲルス帝国(当時のドルドゲルス王国)に転移したハインリッヒ・フォーダーフェルトによって、元の世界の科学技術とこの世界の魔法技術の組み合わせをもって誕生したこのロボット兵器は、ドルドゲルスの躍進と共にその重要性を上げ、現在では各国こぞって新型を配備している。
操縦席前面の胸部装甲はマジックミラーのようになっており、目視での戦闘を行う。また当初は無線のような装置は搭載されていなかったが、エイミー・キャニングにより風魔法を用いた通信方法が考案され、コアの改良と共に各国の魔導機へ普及している。
農業や荷運びなど民生での活用も期待されるが、動作にある程度以上の魔力を必要とするために、魔力の低い者が多い平民では上手く扱えず普及には至っていない。
☆グッドウィン王国系魔導機
高まるドルドゲルスの脅威に対抗するために製造されたKK101〈バーニングイーグル〉を嚆矢として、多くの機体が製造されている。そのドルドゲルスと一線を画す独自性には、エイミー・キャニングの寄与が大きい。
なお、型式番号の100番系は生産型、200番系は高出力型、300番系は高機動型、400番系は重装型、500番系は魔法戦型を意味する。ちなみに型番のKKは、Kings Knightの略称である。
〇グッドウィン王国製〇
☆KK101〈バーニングイーグル〉
グッドウィン王国初の国産魔導機。第四世代。赤青黄のいわゆるトリコロールカラーがホワイトに映える、ヒロイックなデザインが特徴。ドルドゲルスの第四世代機〈シュトルム〉を凌ぐ性能を持つ。
エイミーの理論は参考にされているものの、エンゼリア入学前であったため開発には直接関与していない。頭部はツインアイで、ドルドゲルス製魔導機と比べるとこの世界の美的基準に即した雰囲気である。標準装備として剣を採用しており、オプション装備としては盾や槍などがある。
☆KK101T〈トレーニングイーグル〉
エンゼリア王立魔法学院や騎士団で使用される練習機。〈バーニングイーグル〉の出力を少し落として扱いやすくしている他、教習用にいくらかの変更が加えてある。カラーリングは白地に黄とオレンジの目立つもの。
一応戦闘に耐えることのできる強度を確保しており、実際にシリウス・シモンズは巧みな操作で襲撃者と戦闘している。装備は〈バーニングイーグル〉と同様の物を装備可能である。
☆KK101T-RC〈トレーニングイーグルレイナカスタム〉
〈トレーニングイーグル〉をオーバーヒートさせてしまうレイナの為にエイミーが開発した機体。レンドーン家の資金によって製作された。
搭載された魔導コアは通常の十倍の魔力を使用し、常人にはとうてい扱うことができない。合わせてフレームも強化されている為、本来の〈バーニングイーグル〉をもしのぐ性能を誇る。機体カラーはレイナに合わせて深紅を基調としたものとなっている。
☆KK105〈バーニングイーグルⅡ〉
激化する戦闘に合わせて王国の主力生産機〈バーニングイーグル〉をエイミーが再設計した機体。第五世代。見た目の変化は少ないが、〈ブレイズホーク〉ら試作機の技術がフィードバックされており、性能が大幅に向上した。カラーリングは従来機と同様。
魔力変換による飛行システムも実用化し、そのシステムの流用で水中での機動性も上がっている。パーツの多くは意図的に〈バーニングイーグル〉の物を流用しており、生産性の確保や改装でのバージョンアップを可能にしている。
☆KK105-SC〈バーニングイーグルⅡシリウスカスタム〉
〈バーニングイーグルⅡ〉をカスタムしたシリウス専用機。大陸侵攻に合わせてエイミーが開発した機体で、〈ブレイズホーク〉らの予備パーツを使用して性能の向上を実現している。原型機から頭部が指揮官機用に交換されており、カラーリングも白地に濃紺、そして派手なサンダーパターンと変更されている。
〈バーニングイーグルⅡ〉を基本にカスタマイズしているためこの型式番号だが、〈ブレイズホーク〉ら試作機のパーツを流用しているため、その実200番系に属するのがふさわしい性能を持つ。高度な魔導機操縦技術を持つシリウス・シモンズあわせた機体である。
☆KK105R〈イグナイテッドイーグル〉
〈バーニングイーグルⅡ〉をレンドーン公爵家が独自にカスタマイズした機体。
魔導砲撃用の砲門を左肩に一門装備しているのが特徴で、レイナを護衛するSP部隊が搭乗する。色は〈ブレイズホーク〉に合わせて深紅に変更されている。
☆KKX505〈ブレイズホーク〉
エイミーがレイナの為に製作したレイナ・レンドーン専用機。飛行可能な第五世代。従来の魔導機とは根本的に異なった設計思想を持ち、その全てがレイナの為に調整されている。
レイナの有り余る魔力を活かす為に両肩にマントにも見える計四本のサブアームが搭載されており、射撃にも格闘にも使用することができる。また、専用の剣〈フレイムピアース〉もレイナの膨大な魔力をまとって炎の刃を形成することを念頭に製造されたものであり、高純度の魔力を帯びても歪まない逸品である。
魔力を込めることで防御にも使える濃紺のマントが機体背面に装備されており、これは後に各専用機の基本装備となった。ボディは炎を思わせる深紅のカラーリングであり、機体の細部には高位貴族らしく、豪奢な金の装飾が入っている。
溢れる魔力を用いた火力による殲滅が得意だが、搭乗者であるレイナの天才的な戦闘センスもあいまって、あらゆる面で”紅蓮の公爵令嬢”に恥じない実力で戦場を支配する。その姿はまさしく業火そのものである。なお、機体名称はレンドーン家の紋章に由来する。
☆〈バーズユニット〉
レイナの膨大な魔力をさらに活かす為に製造された新機軸の装備。王国本土防衛線の前に〈ブレイズホーク〉に装備された。魔力可動式の独立飛行砲台であり、その一つ一つに魔導コアが内蔵されている。レイナ曰く“空飛ぶピーナッツ”の様な細長い見た目をしている。
性能は驚異の一言で、レイナの魔力を吸うことで独自に飛行及び魔法砲撃による迎撃を行い、ただでさえ強力なKKX505〈ブレイズホーク〉の戦闘能力を底上げする。各砲門の火力は絶大、そしてユニット自体も高軌道で、相手からすればエースだらけの敵部隊を相手にするようなものである。
多数の魔導コアの同調が不可欠であり、本来アイデアどまりで実現が難しい装備であったが、開発者のエイミー・キャニングは風の女神シュルツの啓示を受けることによって完成させた。
☆KKX506〈ブリザードファルコン〉
ルーク・トラウト専用機。エイミー謹製の第五世代。KKX505〈ブレイズホーク〉とほぼ同型だがこちらの機体カラーは青。
ルークの魔法の才能を活かす為に多連魔法発生器というものを装備しており、魔法の強弱や発生位置を細かに調節し、複数の魔法を操ることができる。専用の剣〈アヴァランチブレイド〉は一見一本の紐が伸びているようだが、ルークの魔法《氷刃》によって氷の刃をまとい、自在な攻撃を可能にしている。
戦闘においては搭乗者であるルークの視野の広さと器用さからもっぱら補助に徹するが、敵エース機との一騎打ちも十分に制することができる力を持つ。
☆KKX303〈ストームロビン〉
ディラン・グッドウィン専用機。エイミー謹製の第五世代。飛行しての高機動戦闘を想定しており、緑色のカラーに流線型のボディを持つ。
得意の風属性は元より、多くの属性を使いこなすディランのバトルスタイルを鑑みた多くの機能を内蔵しており、あらゆる状況に対応可能な点も一つの特徴である。専用の剣〈ロアオブサンダー〉は柄しかないが、ディランの魔法によって剣、槍、はたまた弓など多様な機能を発揮することができる。
機体名のロビンは、グッドウィン王国の国鳥でもある駒鳥を意味する。戦場を自在に飛行するこの機体は、指揮官機としても直接戦闘をしても王族機に相応しい性能を発揮する。
☆KKX202〈ブライトスワロー〉
パトリック・アデル専用機。エイミー謹製の第五世代。正統派の騎士然とした白銀の機体。
操縦者であるパトリックのバトルスタイルに合わせて、専用の剣〈ジャッジメントソード〉とスペシャルモデル共通のマント以外の無駄を一切省いており、200番系特有の高出力を機動性能と魔法剣の威力に注ぎ込んでいる。その最大威力は海を割るほど。
搭乗者であるパトリックの戦闘技術も相まって、一対一でも一対多でも高水準の戦闘を行うことが可能になっており、戦場ではその加速力を活かして切り込み役を担う。総じて次代の騎士団を率いるにたる戦闘力を持つ。
☆KKX408〈ロックピーコック〉
ライナス・ラステラ専用機。エイミー謹製の第五世代。重装型の400番系であり、ライナスの造形魔法によって各部を強化して戦うことをコンセプトとしている。機体カラーは黄。
黒のパーツは硬さによる攻防、赤のパーツは柔軟性によるスピードとトリッキーさ、黄色のパーツは磁力など特殊な効果をもたらす。専用の剣〈グラウンドファング〉は、魔力を流すことによってドリルの様に回転し、大地をえぐることでライナスの造形魔法を助ける役割を持つ。
他のスペシャルモデルと比べるとスピードはやや劣るが、その分直接的な攻撃力防御力に関しては群を抜いている。また、城塞攻略も得手としている。
☆KKX900〈ミラージュレイヴン〉
アリシア・アップトン専用の漆黒の機体。本来はエイミーが自分用に製造したが、操縦センスなどを鑑みてアリシアに譲渡した。第五世代。
他の魔導機の騎士の様なフォルムとは違い、大きな腕部に尖った脚部を持つ異形とも言える機体だが、その実態は〈ブレイズホーク〉用の強化パーツが魔導機の形をとっていると言った方が正しい。ゆえに便座上900番系の型式番号を与えられている。
アリシアの搭乗が決定して以降、彼女用にエイミーが調整しており、平民出身で剣が不得意なアリシアの為に剣は装備しておらず、格闘戦は《闇の爪》によって強化された腕部を用いて行う。
☆KKX505+KKX900〈グレートブレイズホーク〉
KKX505〈ブレイズホーク〉をベースに、KKX900〈ミラージュレイヴン〉が合体した機体。黒き装甲に包まれた深紅の巨人。装飾は黄金色に輝く。
合体することによって魔導コアを連結し大幅な出力向上が望めるが、合体中は六十三秒間完全な無防備状態になるという重大な欠点を持つ。しかし合体したその能力は〈ブレイズホーク〉を遥かにしのぐ強大さで、間違いなくこの時代最強の魔導機の一機に数えられる。
合体後も〈フレイムピアース〉は用い、レイナの超級魔法《火竜豪炎》をまとわせることによって〈フレイムピアースドラゴンフレイム〉となり、いかなる敵をも焼き尽くす。
形態名称は人と助け合い、協力することの偉大さを感じたレイナによって命名された。なお合体シークエンスは当然ながらプログラム的なものではなく、魔法を用いたある意味人力で行われる。
〇アスレス王国製〇
☆C-003〈エクレール〉
アスレス王国製の魔導機だが、その実態はドルドゲルスのMZ03〈ブリッツ〉のコピー品である。原型機と同じく第三世代。性能的にはほぼ原型機と一緒だが、曲線を多用したアスレス王国風の見た目のみ違う。
アスレス王国はこの機体を量産して各国へと販売しており、魔導機の独自開発能力がない国では重宝されているが、流出し暴動などに用いられる例もあり混乱を呼んでいる。なお、この機体を生産しているアスレス王国は独自の魔導機開発能力は貧弱で、続々と強力な機体を開発するドルドゲルスに次第に圧迫されることになる。
レイナ・レンドーンが初めて操縦した魔導機は、この機体をグッドウィン王国が輸入し幾分かの改良を加え運用していたものである。機体名は稲妻を意味する。




