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短淡単譚  作者: MaZ
2/7

ロールプレイング

何故、勇者は魔王を討伐するのか。

何故、王様は全てを知っている風なのか。

何故、親の掃除機はゲーム機によく当たるのか。

「よくぞ来た、勇者よ」

「先祖より受け継いだ伝承に則り、参りました」

「そうか、ならば話は早い。そなたの祖先が討ち果たした魔王が、時を経て蘇った。ただちに討伐せよ」

「はっ」


 よくあるロールプレイングゲームのように王様の前から始まり、魔王討伐に赴く勇者の冒険の始まり。

 しかし、勇者には一つ、引っ掛かる事があった。それは、この国は大陸の片隅に位置する小国であり、国王の世界的な影響力も無いに等しい。魔王の根城は海を隔て、山を越えた遥か彼方の果ての地。勇者はつい、国王の見識の広さに疑問を抱き、尋ねてしまった。


「滅多な事を知るものではない」


 国王は目付き一つ変えずに言い放った。勇者は何も言えず、王の間を後にした。


「ご先祖様からの伝承では、この国の王様に会えとされていたけど……何故、こんな小さな国に?」


 気になって仕方がない勇者は、城下町に出て仲間を探すという順序を無視し、国王の部屋に忍び込んだ。

 決して大きくない本棚を漁っても、広い世界を知るには到底足りそうもない所蔵、勇者の頭に浮かぶ疑問符はますます大きくなった。そんな中、勇者は気になる本を見つけた。


「なんだこれ……他の本と比べて、厚さが半分くらいしかないぞ。しかも、この大きさは?」


 表紙も頁も、他の本と明らかに感触の異なるそれは、異質という他なかった。

 あまりにも鮮明な世界地図、各国主要都市の詳細過ぎる情報、何故か洞窟や塔、神殿に魔王の根城まで、緻密に整えられたモザイクアートと共に記載されている。書かれている言語は分からなかったが、複数の異なる文字種を使い分ける事により、文章量を圧縮しているらしい事は分かった。


「これは一体……!?」


 勇者を背後から刺す冷たい感触、熱を帯びた痛みは痺れに変わる。視界は暗転し、薄れゆく意識の中で不気味なほどはっきりと、国王の言葉が耳を打ち、それが勇者の聞いた最後の音となった。


「メタな事を知るものではない」



「よくぞ戻った、勇者よ」

「魔王討伐のその時まで、私の旅は終わりません」

「うむ、では行くがよい」

「はっ」


 よくあるロールプレイングゲームのように王様の前から始まり、魔王討伐に赴く勇者の冒険の続き。

突っ込み出したらキリがないかもしれない、でも突っ込んでみたくなる。

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