第三章・三「意地」
そしてついにあの人も参戦。
「ユニ伏せろ!」
地面に落ちていた拳銃を拾い上げ発砲、銃弾がカラス男の肩に当たる。
カラス男が怯んだすきにユニはこちらへ走り出す、飛び込んで来た彼女を強く抱きしめる。
「剣次……剣次………」
彼女は俺の胸に顔をうずめる、そんな束の間カラス男が迫ってきた。
パッン!、トリガーを引くと破裂音と共に弾丸が放たれる。
打ち放った弾丸はカラスマスクを掠めるも直撃はしなかった、反撃の剣がこちらに迫りくる。
剣の軌道にどうにか銃を構え受け止め反撃の発砲。
今度も弾丸はカラス男を射抜かず、その剣で弾かれる。
まだ諦めるか、更にトリガーを引き発砲、しかしカラス男には当たらない。
「弾丸こそ当たるがその技量じゃ私を倒せない」
「うっせぇ!」
銃を横薙ぎにし、カラス男を牽制する。
更に発砲、カチッ、カチッ、トリガーを引いても弾丸が出ないまさか弾切れ
「悪運尽きたね、もう満足だろ?、 彼女をこちらに渡したまえ」
「ふざけんな!」
弾丸の切れた拳銃をカラス男目掛けて投げつける、拳銃は空中をまい、当たるはずもなく地面を転がる。
「これで終わりにしよう」
気がついた時にはカラス男は目の前まで迫っており、魔の手がユニに触れようとする。
ビッユッ、風を切り何かが俺の横を凄い速度で通っていく、それを確認するために目をむける、そこには銀色の刃が伸びていた。
「よく頑張った、君の雄姿を讃え助太刀しよう」
横に一人の女性がいた。
短く切り揃えた黒髪、両手には二振りの刀、その表情には不敵な笑みをたたえていた。
「桜坂千花……これは少し不味いですね」
「覚悟しろ悪党、このあたしの剣の錆にしてやるぜ」
ーーーーー
ビッユッ、風を切った剣がカラス男に迫る、カラス男は刀を剣で受けお互いの武器がせめぎ合う。
「青年名前は?」
剣次はあまりの事態の急変で困惑していたが、呼ばれているのが自分だと気がつく。
「………城島剣次です、それよりあんたは何者なんだ?」
「おおっ、この状況であたしの正体がわからないなんて鈍いね、あたしは対反逆軍組織、銃士隊の一人桜坂千花さぁ!」
二本の刀に一気に力を入れてレイブンを押し切る。
「剣次くんまだ頑張れる? 悪いけどその子連れて『秘密基地』まで行ってくれる」
千花の言う『秘密基地』とは噂のカフェのことだ、それを剣次も理解していた。
「やっぱりあのカフェには銃士隊のアジトだったのか」
「そう、都市伝説はあながち間違ってなかったの」
「でも……あんた一人で大丈夫なのか?、 そいつ霧みたいになるぞ」
剣次はレイブンを指でさす、剣次はさっきの戦闘でレイブンの幻想銃『首無しの騎士』の力を目の当たりにしている。
自らの体を影のように変え、一切の攻撃を受け付けない、そんな敵を残し一人で逃げていいのだろうか、剣次は気がきでなかった。
「それってレイブンに攻撃が効かないってこと?」
「そうだよ、そんな相手一人でどうやって倒すんだ」
「それなら心配ないさ、君がさっき使った拳銃を思い出してごらん、あれはあたしの持ってきた物だ」
剣士は数分前の記憶を遡る、カラス男の前で自分の拳は体をすり抜け意味をなさなかった、しかしあの拳銃は………カラス男のマスクを掠めた。
何故弾丸はカラス男に命中したのか、なぜ影に干渉できたのか。
「どうやら答えがわかったようだね、正解は『武器を清めていた』だ」
「武器を清める? どう言うことなんだ」
「レイブンのもつ武器、幻想銃『首無しの騎士』は亡霊なんだ、そこで亡霊を払うには十字架とか聖書とかとにかく清らかな物が必要、少しわけが違うけどアタシの幻想銃もあいつに干渉できるの」
「だからアンタの攻撃はカラス男に当たるってことか」
「正解、百点満点の答えだね、それじゃその子のことよろしく頼むぜ?」
「わかったこの子はしっかり送り届ける」
「頼むぜ剣次くん、そこの子を救えるのは君しかいない」
剣次は走り出した、落ちかけの日に向かって、少女を救うために
ーーーーー
「それじゃ続き始めるか、行くぜカラス野郎!」
二振りの刀が空を裂きレイブン目掛けて放たれる、それも一太刀、二太刀、そんな程度ではなく十、二十、次々と斬撃の嵐を生み出す。
「二刀桜坂流・八の型『嵐桜』」
桜坂千花。
彼女はとある剣術名家の娘だった、しかし家の方針に納得できず家出、そしてこの町で銃士になった。
「本当に厄介な奴だ」
『申し訳ありませんレイブン様、私が不甲斐ないばかりに』
「別に君を責めているわけじゃないさ」
少女のような子供の声が戦場に響く、これはレイブンの幻想獣デュラハンのものだ。
「空きあり、二刀桜坂流・一の型『流れ桜』」
千花は流れるような動きでレイブンに迫り二振りの刀を振るうも刀の軌道を自らの剣でずらし、レイブンは反撃に出る。
「『影の悪夢』」
レイブンの体から黒い影が溢れ出し肥大する、大きさは既にレイブンの身の丈を超える、そして影は千花に迫る。
「二刀桜坂流・三の型『下り桜』」
体を大きくのけぞり、影を刀を叩きつける、刀が影に触れた途端ちりじりになった。
「凄い力技だ、デュラハンもう一度影を頼む」
レイブンは自分を影でドーム状に包む
「もう一度! 二刀桜坂流・三の型『下り桜』」
千花の刀はまたも影を打ち破る、影ちりじりになり中を舞う、しかしレイブンの新の目的は防御ではなかった。
「『影の檻』」
レイブンが言葉を放つないなや、中を舞っていた影が千花に纏わりついていき、影の球体を形成する。
「さぁ、彼女が球体から脱出する前に剣次君を追おうか」
『よいのですかレイブン様、奴に止めをささなくて、奴を必ず追ってきますが』
レイブンは頭をかきながら、相棒の質問に答える。
「彼女は強い、ここで完全決着するならどちらかは死ぬ、私も必ず勝てるわけじゃないしね、それにお互い『共鳴』を使うことになるだろうし」
『それに今回の最優先事項はユニコーン・セカンドの回収、桜坂千花の撃退ではない』
「さすがだねデュラハン、それじゃ行こう‥‥‥あぁ、不味いな」
影の球体が爆散、そこに立っていたのは桜坂千花、しかし彼女が両手に持っていたのは日本刀でななく中国刀だった。
「九尾の狐、本当に厄介な幻想銃だ、一つ九役とかズルじゃないか」
桜坂千花の持つ幻想銃は『九尾の狐』、モデルは大昔の大妖怪、絶世の美女で彼女はその美貌を使い数多の異性同性をたぶらかし、自らの支柱に収めた、その特性は写し身である幻想銃に様々な能力として受け継がれていた。
『千花よ、全くお主は妾をなんだど思ってる、妾は大妖怪『九尾』であるぞ』
「あーはいはい、後で油揚げ買ってあげるから黙ってようね」
『もっと敬意を払って欲しいの、妾ご立腹』
「それとユニコーンを必用に襲うのか聞か………あれいない、ちょっと逃げられちゃったじゃん」
千花と九尾が漫才のような会話をしているすきにレイブンは姿を消したのだ。
『妾のせいではないぞ、後を追うのであろう』
「もちろん、それじゃ行きますか」
『であるぞ』
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