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キュベリズム  作者: ゼロ
新生活
8/8

朝ワーク

昨日はみんなで和気あいあいとしながら鍋を楽しんだ。プライベートな時間を共有するというのはなんだか楽しい気持ちになる。凜とは雑談できるまで行けなかった。ほとんどかおりと洋樹が話を引っ張っていたからだ。でも話の途中で笑っている凜を見れるのは幸せだった。


鍋を食べ終わるとばあちゃんが片付けを先行してやってくれた。みんなが色々と疲れていると思ったからだ。僕らは親切心が出るほどの体力は残っていなかったので、ばあちゃんに後片付けを全て託し部屋に戻った。部屋では洋樹がやっぱりかおり推しということをずっと言ってきた。僕は内心ラッキーと思いながら話を聞いていた。


僕は凜のことが好きになってしまった。僕は今まで部活や塾で忙しく、恋愛なんか少しもしたことが無かった。そして、誰かを好きになることも無かった。しかし、凜のあの笑顔は僕の心のガードの穴を上手く狙ってきた。


洋樹の力説は5分程で終息した。さすがに体力の限界なのだろう。僕はなにやら賢次が研いでいたナイフを置き、新しく大きな錆び付いた包丁を取りだしたのを見ようとしていたが、洋樹に釣られ寝てしまった。


次の日、僕が起きたのは6時だった。昨日は12時ぐらいに寝たので6時間ぐらい寝た。しかし昨日の疲労から考えると足りない気がした。とはいえ、二度寝して起きられる自信が無かったので、布団を蹴り飛ばし勢い良く体を起こした。洋樹は熟睡していたので起こしてはかわいそうと思い襖の音を立てないよう静かに部屋を出た。賢次が部屋にいなかったので、探しに下に降りた。一階に降りると土間の方から音がしたのでフラフラしながら向かったが、そこの映像を見てパッチリと目が開いた。賢次がノコギリで熊をおおざっぱに切り分け、それをばあちゃんが受け取り毛皮を剥がすという作業をしていた。二人とも向こうを向いていたので、こっちから声を掛けた。


[おはよう。]

[おはよう。]

賢次は振り返らずに言ったが、ばあちゃんは作業止めこちらを向いて言ってくれた。

[昨日は良く眠れたかい?]

[おかげさまで。]

[それはよかった。]

[賢次とばあちゃん昨日遅くまで作業してたのに、こんな朝早くから動いて大丈夫?]

[大丈夫ですってさっき私に言ってきてたから大丈夫さ。]

[それならいいんですけど]

この二人は体力に底がない人種だ。そう思い込み無理やり脳を納得させた。

[手伝いましょうか?]

昨日のこともあるので何かお礼がしたいと思いそう言った。

[じゃあこれ代わっておくれ。わたしゃ朝ご飯の用意をするから。]

そう言ってばあちゃんは作業に使っていた包丁を僕に渡してきた。この包丁はよく見ると、賢次が昨日研いでいた、あの錆びまくっていた包丁だった。銀の部分が一切見えないぐらい錆びていたのによくやるよと思った。


熊の毛皮を剥がす作業は想像の何倍も難しかった。深く包丁を入れすぎると、皮に肉がくっついたままになり、後で取るのが面倒だし、逆に浅すぎると、毛だけが抜ける。ほどよい入れかたは4個ほどで分かった。賢次は作業中一切こっちを向かず、黙々と作業をしていた。集中モードに入ると賢次は昔から外界と自分を遮断する。


やっと全て終わった頃には8時を回っていた。僕たちは腐敗した肉を捨て、毛皮は後で売るらしいので、紐で括っておいた。骨はだしに使うらしい。肝心の肉だが、全て保存庫に移すらしい。保存庫とは、戦時中掘った防空壕を広げ、冷却機やエアロックを付け、大きい冷凍庫にしたものだ。土間から外に出て右に行ったところにあった。最近使ってないらしく、エアロックの上は落ち葉で覆われていた。僕の方が小柄なので、僕が保存庫入って肉をしまった。


そのあと朝ごはんの用意で食器を並べたり、料理の手伝いをしていたら、9時位に女子が起きてきた。

[おっは~。]

[おはよう。]

[賢次君、将弘君、早いね。]

凜に話しかけられるだけでちょっとドキッとする。

[洋樹おらんやん。]

[あいつはまだ寝てるよ。]

[あいつ。朝弱いんか。]

と、かおりはちょっと呆れた顔で言った。

[将弘、洋樹を起こしてきてちょうだい。]


ばあちゃんにそう言われ洋樹を起こしに行った。階段の音で起きるかも。そう思い階段をギシギシ鳴らせ登った。洋樹は気持ちよさそうな顔で寝ていた。若干パーマのかかった金髪がはねている。

[起きろ。朝だぞ。]

[ん、おはよう。]

そういい洋樹は起きたが、ふらふらしていたので、肩を担いで階段を降りてやった。朝食は僕の毛皮の話で盛り上がった。凜も楽しそうに聞いてくれていたので良かった。


[今日どうする?]

僕がそう言うと洋樹は

[遊び行こうぜ。どっか遠くに。]

[いいなあ。それ。うちも遊びに行きたい。]

[明日学校だけど。]

賢次に冷たくいい返された。

[ところでみんなってもう教材とか買ったんですか?]

美恵江にそう言われ、みんなハッとした顔になった。美恵江はやっぱりしっかりしている。

[じゃあ今日は教材を買いにいこう。]


僕たちは10時に家を出て駅に向かった。春でも今日は暑い方だった。しかも駅が高校の前だから余計しんどい。でも、凜のファッションセンスは最高に良かった。こんなんでショッピングモールにいったらキャッチをかけられると思うほどだった。6駅でそのショッピングモールに着いた。世間は平日なので、多少人は少なかったが、それでも人は多かった。とりあえずもう昼だったので昼食にファストフード店にいった。人が多く頼むのに時間がかかったが、友達が居ればすごく短く、楽に感じる。


そしてみんなでご飯を食べ終わり、本屋にいこうと立ち上がったとき、僕たちはある3人組に話しかけられた。


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