時のない腕 2
「ファリスさん」
「はい?」
穏やかな声に呼ばれて振り返ると美しい男性がいました。
プラチナブロンドに深いブルーの瞳のすらっと背の高い……歓迎会でクララ様と一緒にいらしたかたですね。
穏やかな声とは対照的につかつかと急ぎ足でこちらにくると突然わたしの肩に腕を回しました。
え??????
「やっと、見つけました。無事でよかった……」
肩で息をしてらっしゃいます。ほっとされたようで眉間に皺を寄せながらも眉尻はさがってます。
「えと、どうかされましたか……?」
「申し訳ないのですが説明は後でしますので、私と一緒に……走ったりせずにこのまま私と肩を組んで歩いてください。絶対に喋らないで。そこの男子生徒、フィルドくんでしたね?君も一緒に」
あれ?フィルドさんもいらしたんですね。フィルドさんも困惑した表情ですが無言で頷くと男性と私の後ろをついてきます。
何度か階段を昇り西側、東側へとあちこち歩き5階まできました。
両開きの扉を開けると校内とは思えないような華やかな調度品の美しい部屋があります。教室ではなくソファとテーブルがあり応接室のような雰囲気です。
部屋に入って扉の施錠を確認すると男性は深く呼吸してわたしの肩から手を離しました。
「突然驚かせてしまって申し訳ない。とりあえず二人ともソファに掛けてください。説明しましょう」
豪華な装飾のソファに掛けると男性はお茶の準備をしてくださってます。慌てて代わろうとするわたしを微笑みで制すと見事な手際でお茶を淹れ繊細な小鳥の柄のティーカップをテーブルに置きました。
「あちこちたくさん歩かせてすまなかったね。まずはお茶をどうぞ」
「わ、美味しい……!」
「ほんとだ…」
とても高級なお茶のようです。淡い水色で新鮮な香りがします。フィルドさんもぱぁっと顔色が明るくなりました。二人で顔を見合わせて思わず笑顔になってしまいます。
「それは良かった」
男性は改めてわたしとフィルドさんにきちんと向き合いました。そうそう、お茶に喜んでる場合じゃなさそうですね。
「私はエスター公爵家の長男、グリフィス・ヒュトランです。四年生です。あなたたちと同じ一年生、私の妹のクララはご存知ですね?」
「はい。クララ様のお兄様でいらっしゃるのですね。そっくりなのできっとそうだと思っておりました」
そう申し上げるとグリフィス様は嬉しそうに口元を綻ばせました。
やっぱりやっぱりー!麗しい兄妹ですね!ついにこにこしていまいます。あれ?でもクララ様のお兄様がどうしてわたしや、あ、わたしは有名人らしいですね。どうしてフィルドさんのこともご存知なのかしら??
「ここにいる間はとりあえず安心なのですが。少し大変なことになっているんですよ。ファリスさんにフィルドくん」
「はい?」
「オリハルコンの剣が当校にあることはご存知ですか?」