時のない腕 番外編
「ファリスさんとフィルドさんは風邪ですね。でも流行性のものなので医師から治癒証明が出るまでは隔離されてます」
「見舞いに行きたいのだが」
「行けません。接見禁止ですよアデル王子」
イエイツ先生のけちんぼ。僕は丈夫だってのに。
イエイツ先生のところにディアドラの休みの理由を尋ねにきたのだが、そういえばノイシュも休みだったな。同じ風邪と聞くとなんだか変な気分になる。なんだこれ。
「休んでいる間の課題やノートの写しなんかあるときっと喜ばれますわ」
副担任のエラン先生がにこりと微笑んで言う。いつも思うがエラン先生は胸を強調しすぎだ。大きな胸の上半分近く出てる。顔もそれなりに美人なのだが胸の印象しかない。
「そういう気の利く男性って素敵ですからね」
ぱちん、とウインクされたが胸の飛び出たとこをチラ見して部屋を出た。
「あれですよね、きっとエラン先生ってイエイツ先生のことがお好きなんですわ」
「ですわよね。でもイエイツ先生きっとにぶちんですわ。術式のことしか頭にありませんもの」
「ちがいないですわ。エヴァンジェリスタさん」
グループで教務室に来ていたのでイライジャだけでなくカースティーやヘザー、アゼリンも一緒だ。女子トークに花を咲かせてる。
「前から思っていたけど名前で呼ばないか?僕たちは対等な同級生であるわけだし。様とか殿下とかグループ内ではなしにしよう」
「賛成です。アデル王子」
カースティーが即答する。
「とくにヘザーは名字が長すぎる」
「まぁ自分でもそう思ってますけども」
ふふっとヘザーが笑いながら応えた。僕は最初から諦めてヘザーと呼んでいるがエヴァンじっ……って皆よく噛まないものだなと感心する。
「ですよね。あとファリスさんとフィルドさんてたまに呼び間違えそうになるんですわ。よく一緒にいらっしゃるし」
「ディアドラとノイシュなら間違えないわね」
カースティーとアゼリンがウンウンと頷いている。
えっ、ちょっと待って。
「ディアドラとノイシュってよく一緒にいるかな?あんまりしゃべってるイメージないけど」
「しゃべってはないけどよく隣同士にいらっしゃるわよね」
「そうよね。あのふたり雰囲気とかテンポとか似てるからかしらね」
「ぽんわりしてますわよね。すでにニコイチ感がありますわ」
イライジャとふたりで固まる。女子3人は全くこちらの様子に気配りすることなく女子トークを繰り広げる。
「ノイシュくんは騎士の息子さんだけど、魔力持ちということはきっとお母様あたりが貴族の出ではないかしら?とゆーことは男爵家の三女のディアドラちゃんとは結婚もありえますね」
「ほんとですわ!きっとちょっぴり親の反対とかあって逆に盛り上がるパターンですわ!きゃー」
「ロマンスですわーきゃー」
きゃーっ、て盛り上がりすぎだろ。おいおい……
「いや、それは飛躍しすぎでしょう。ディアドラとノイシュは恋人っぽさはないじゃないですか?」
そうだそうだー。女子トークに割り込めるなんて勇気あるなイライジャ。
「ですけど、一緒に風邪曳いてるなんて、ねぇ?」
「ふふふ、ねぇ?」
「ふふふふふ」
えっ。女子ってなんか色々考えてるんだな。てゆーか僕ちょっとへこんできた。だめだ。お腹らへんがぐるぐるする。何も考えられない。
「あれ、アデル様大丈夫ですか?」
「もしかしてアデル王子も風邪?」




