時のない腕 4
「おかしいと思わない?」
フィルドさんがぽそっと小声で呟きました。
フィルドさん今日はいつもと違ってキリリとした表情で首を傾げてます。かっこいいような、かわいいような。
「え?」
いつものぽわんとしたフィルドさんが好きなんですけどね~。こんな感じもいいですね~。て、あれ?わたし何考えてるんでしょう?
グリフィス様はわたしたちをエスター公爵邸の客間に案内して学校に戻りました。事件が解決するまではここに宿泊することになりそうです。
今はフィルドさんの部屋で一緒に復習しています。
「なにがおかしいんですか?」
「さっきのグリフィス様との話。言ってることがどんどんずれてた」
「……」
「どうしたの?」
「……ごめんなさい、実はちょっと話についていけてなくて」
ちーん……。
「でもついていけないのが自然だったと思うよ?だって話が次々変わってたから。あれ多分だけと説明のようで尋問だったんじゃないかな?」
「うーん???」
ぽわーんとして見えるけど(失礼!)フィルドさんてとても目端が利くようですぅ。話がそんなに変わってたのかどうかもわたしにはわかってませーん(汗)
思いっきりしょげちゃいますねこれは。
そんなわたしを見てフィルドさん吹き出しそうになってます。
「オリハルコンの剣の話をしてたのにナイフになったし、学校の話が魔術院になったし。ナイフを見たのか確認してるのにイエイツ先生の授業のことはご存知だったでしょう?」
「あー……」
ほんとだ。
「ファリスさんが拐われる可能性って言ってたのにすでに寮に不審者が現れてるし、侵入した形跡って言ってるのに侍女がその場にいたのも、ねぇ?おかしいなぁって」
「……グリフィス様はどうしてそんなことおっしゃったのかしら……」
「ファリスさんの様子をじっとご覧になってたからどう反応するのかを確認されてたんだと思うけど」
「わたし、グリフィス様はどうしたっていいひとだと思うんですけど」
ぶはっ、とフィルドさんが吹き出しました。
顔を手で覆ってますが耳まで真っ赤にして笑いをこらえているよう、です…。
なにかそんなにおかしなこと言いましたかわたし…。
深呼吸を何度かしてようやく落ち着いたようです。
「うん、僕もグリフィス様はとてもいいひとだと思ってるよ」
と言いつつ口元がふるふると弛んでますぅ。
ぷぅ。
「反応なんて確認しなくてもちゃんと正直に申し上げますのにぃ」
「グリフィス様とは初めて話したんでしょう?それに事件が事件だし王命とおっしゃってたからそこはきちんとされただけだと思うな」
あー、そういうこともあるんですねぇ。フィルドさんに説明されるとなんだか納得してしまいます。てゆーか頼りになりますねフィルドさん。とても同い年には思えません。
「多分全部話してしまうわけにはいかない理由がおありなんじゃないかな。質問から察するにエンカミングは多分その時学校にあったんだと思う」
「えっ!?」
「そして今も校内にある」




