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親の顔とよく見た始まりと見たこともないニート

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 ──気が付けば、自分は四年ぶりに自室以外の空間を眺めていた


最も、その自室も先程、四年間見たことの無い荒れようになっていたのだが



「はいはーいここがかの有名なTHE・お約束スポットこと、転生の間ですよー蒼くて綺麗でしょーそーでしょー」


「あ……ありのまま起こった事を、今、話すぜ……『自分は部屋に居ると思っていたら、いつの間にか転生の間に居た』……な、何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も 「そのネタ長くなりそうなので続き説明しますねー」



 あァんまりだァァァー



「それではあーくん。貴方はこの世界で死亡されましたので……まぁ、今回は死んで無いですけど、便宜上とゆーか説明責任の何やかやなので悪しからず


えーこのまま冥界へ落ちるか、全く別の人間として、異世界へ転生するかを選t……


はい、転生を選ばれましたので、次は『如何なる存在になるかの査てぃー……


は、おかーさんが決めときましたので、後は『チート能力を選ぶ権利』が与えられますー」



 全く当人に似合わない玉座へ坐した母が、これまた似合わない様で書類片手に、まるでここには居ない誰かを相手にするように話をし出した



「……今、何かしらの不正行為を勢いで押し通しませんでした?」


「それでは此方の紙に欲しい能力を記入して下さい」



 有無を言わせる積もりは無い。笑顔にはそう書いてあった


こうなった母は当方の言い分を聞いた試しが無いので、観念して紙を受け取る



(……今、紙が飛んで来たよな?)



 いや、と思い返す


この空間の中に居る時点で、もう母の戯言こそが、紛れも無く世界の真実であると認めざるを得なかった筈だ


自分という奴は、この期に及んでも未だその事を、何処か呑み込めないでいたようだ



「基本的にはどんな能力でも実現出来ますよー


但し!!『神の特権を著しく脅かす能力』や『神の意向に反する能力』は残念ですが当然、与える事は出来ませーん


よって『万物を創造出来る能力』『元の世界へ帰れる能力』『神様を所有物に出来る能力』なんかは書いても無効になっちゃいますので、気を付けてねー」



 それはそうだろう。よもや自分がチートを渡したが為に、自分が転生者の良いように使われる神なんて、居る筈が無い


しかし、如何するか?何でも良いと言われては、逆に決め難くな……?



「……あのー、これ紙が何枚か重なってるんですが?」


「あらあらあら?でも渡した以上、ソレはあーくんのモノですねー」


「二枚もう『不死』と『“たまに”帰れる能力』って書いてあるんですが?しかも裏面に『一人一枚迄』って記述されてるし……


帰れる方は良いとして……不死とかいうえげつないデメリットが憑き纏いそうな役立つ世界って 「余計な詮索はしちゃダメですよ?」



 本日何度目かの件の笑顔である


ああ、それにしても、ここはとても綺麗な所だ。夜明け前の星空か、宝石を鏤めた海底を想わせる、神秘的な空間だ


正しくこの世ものとは思えない絶景をしばし、一望した後──


自分の成すべき事は、厳しいかもしれない新生活に必要なチート能力を決める、ただそれだけだ。チートがあれば、何でもできる。


と己に言い聞かせて、目の前の紙束に集中する事にした


きっとこれは母の優しさだ。なにも不正は無かったのだ












 ─────────────────────────────






 ……そう、チートがあれば、何でも出来る


新たな門出を前にして、数々のなろう小説主人公(英傑)達の様に異世界での覇業を夢みることも、逆に平穏な生活を望むのも、チートさえ有れば全てが自由だ


ただ、自分(愚者)に限って、そうでは無かった


自分(愚者)は“今”が幸せの絶頂期だと確信していた。社会義務人間関係から分け隔てられ、かといって大きな苦しみもない“今”



つまり“ニート”(NEET)こそが、自分に取って最上の地位であり、目指すべき到達点なのだ


それは実感として、揺るぎない真理として自分の心に深く刻まれている。『働いたら負け』、実に良い言葉だ



自分を生み出し、育て、今日まで支えてくれた大切な肉親が望むであれば仕方ない。今はその座を降りよう


だが……真に幸せを望んで生きるのならば、ましてや異世界転生・チートという世の理から外れて尚、勝ち抜ける力があるのならば……


自分は再び、その先へ行こう。その為なら多重のチートでも魔法でも何を使おうと厭わない


何が何でも、這い上がってやる




 ─────────────────────────────










──数分経って、書き上がった紙を提出する



「いやー悩みましたねー二時間は悩み抜きましたねー」



 母はそう言うが、経ったのは数分である。そこまで時間は経っていない。きっと、断じて



「ふんふんそれじゃあ確認しますねーコレが終わったらすぐ転生に入りますよー


あーくんが選んだ能力はー……?」



 不s……職務を全うしようとしたパート女神の瞳が一瞬、曇る



「『銃を作れる能力』

『能力を奪われたり無効にされない能力』

『保留』

『保留』




『保留』……」


「いや、向こうの世界がどんな感じか分からないからね?銃作るのは如何してもやりたかったし外せなかったし、不死があったらスキル奪う系の能力だけ怖いから保険というか、後々にも使えるし……ね?」



……まあ、ニートに戻る為の能力としては微妙なものだが、仕方ない。異世界へ行った後でゆっくり考えるとしよう。まだ三つも空きはあるのだから



「……なんだかあーくんが、ニートになった理由が分かった気がしました」



 何を仰るか母上。自分がニートなのは、それが真理だからですよ

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