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未来家族  作者: keikato
4/5

おじいちゃん

 日曜日の夕方。

 両親は買物、ボクは家で留守番をしていた。

「だれか、おらんのかあー」

 台所から、おじいちゃんの声がした。

 おじいちゃんに取り合うとロクなことがない。ボクは返事をしなかった。

「昼めし、まだかあー」

 おじいちゃんが叫ぶ。

――昼ごはんだなんて、もうとっくに夕方なのに。

 まいどのことながらイヤになってしまう。ボクだけじゃない、お父さんだって……。

「おやじのヤツ。いいかげん、おとなしくなってくれりゃいいのに」

 そう言って、いつもグチをこぼしているのだ。

 おじいちゃんが奥の部屋から出てくるのは、たいてい今日のように両親が留守のとき。かってに出てくると、お父さんにうるさがられるからだ。

 かわいそうだとは思ったが、ボクはおじいちゃんを無視し続けた。

「食うもんがねえぞー」

 おじいちゃんがいっそう大きな声で叫ぶ。

 よほどおなかがすいているようだ。

 ボクはしかたなく台所に行った。

「ねえ、おじいちゃん。ラーメン作るからさあ。だから食べたら、おとなしくもどってよ」

「ああ、わかってるさ」

 おじいちゃんが子供のような笑顔を見せる。

「これ食べたら、すぐにもどってね」

 インスタントラーメンをこしらえながら、おばあちゃんのところに早く帰るよう念押しをした。

「ばあさんは口うるさいからな」

「あたりまえだよ。おじいちゃんときたら、昼も夜もないんだから」

 文句を言っていると、玄関のドアの開く音がして両親が帰ってきた。

 とたんに――。

 おじいちゃんはラーメンに手もつけず、そそくさと奥の部屋に逃げこんでしまった。

「もうじき夕ごはんだっていうのに」

 できあがったラーメンを見て、お母さんがあきれた顔をボクに向ける。

「ちがうよ。おじいちゃんがね、なんか食べさせろってうるさいんだ。だから……」

「そうだったの。あなた、またおじいちゃんが出てきたみたい」

「なんだ。おやじのヤツ、今日も出てきたのか」

 お父さんは顔をしかめた。

「いくらすぐに出てこれるからって、こうちょくちょくじゃねえ」

 お母さんはいいかげんあきれている。

「ちょっとかわいそうだが、しばらくメールだけにしておくか」

 お父さんは奥の部屋に行き、それから仏壇型パソコンの前に座った。

「なあ、おやじ。盆前にはまたつなぐからさ。それまでしんぼうしてくれよな」

 マウスをクリックする。

 霊界ネットワークシステムのフリーワープソフトが閉じられた。


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