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未来家族  作者: keikato
1/5

あたし

 居間のソファーで目がさめた。

 七時を過ぎているので、ずいぶん長いこと眠っていたことになる。学校から帰ってから三時間以上だ。

 ニャーン。

 足元で、猫のタマが甘えた声で鳴いた。

 タマはロボットだけど、見かけは猫そのもの。高性能の学習機能を備えているので、遊んでやるほど限りなく本物の猫に近づく。

 目の前のテーブルに初めて見るペットのカタログ雑誌があった。お母さんがロボットペットショップでもらってきたものなのかも……。

 あたしは大好きな猫のページを開いた。

――エサを食べて、ウンチをするのもあるんだ。それに一年も充電が不要だなんて。

 それは電気を作るエサを食べ、あとでウンチとして出すそうだ。うちのタマは、週に一度は充電しないと動かなくなる。

「お母さん、ちょっと来て。これってすごいよ」

「あら、目がさめてたの」

 台所からお母さんがやってくる。

「ねえー、これほしい。すごくおもしろそう。それに一年も充電がもつってよ」

 あたしはカタログにある猫を指さした。

「タマはどうするの。捨てちゃう気?」

「それはダメ。でもね、もしかしたらタマにも、そんなのが取りつけられるかもよ」

「どうかしらね? まあ、お店に聞いてみてもいいけどね」

 ロボットペットショップに、お母さんが電話で確かめてくれることになった。

 お風呂あがりに台所で牛乳を飲んでいると、居間からお母さんの話し声が聞こえてくる。

「ええ、猫なら別に気を……。そうそう、うちのタマなんだけど……」

 声が小さくてよく聞き取れなかったが、さっそくペットショップに確認してくれているようだ。

 電話の結果を聞こうと、急いで歯磨きをすませ居間にもどった。

「宿題、まだやってないんでしょ。早いとこ、すませなさいよ」

 お湯が冷めないうちにと言い残し、お母さんはそそくさとお風呂に行ってしまった。

 電話のそばに、ZY―2100とメモされた紙が残されていた。

 記号は商品番号のはず。あたしはさっそくカタログ雑誌を開いた。

 猫の記号は、みんなCXから始まりCYと続いている。Xはオス、Yはメスだ。

 次のDは犬だった。

 ページをめくっていくとZが最後で、それはペットそれぞれの共通部品だった。

――タマの新しい部品かも。

 ZY―2100の商品番号を見つけた。

――これって人のものなんだ。

 それは人間の子供のものだった。でも、写真からでは何なのかわからない。

 あたしは部品の説明書きを読んでみた。

『体内の部品交換だけで、一年間、年齢にあわせて心も体も成長。これによりこれまでのような毎月の体形調整が不要となり、経費と時間の節約が……』

――もしかしたら、これって……。

 あたしには思いあたることがあった。

 毎月一度だけ。

 今日のようにわけもなく、昼間から長い時間、眠ってしまう習慣のあることを……。


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