扇上の魔術師「鉄壁」
数多くのメダルや賞状の中に囲まれた部屋。
「あーあ、負けちゃった」
石川光太郎、セカンド。大村シニア出身。
長崎では勝ち目がないと言われた「黄金時代」の一人。
その、輝かしい成績を引っ提げているわけだが、本人にはそんな自覚はない。ただ、やれること、任されることをただ淡々とこなしていた気がする。
石川は低身長で162㎝ほどだが、このコンプレックスをひっくり返ってしまう程のセンスがあった。
チームプレーにも長けて、守備範囲も広い。明らかに非力であることを逆手にとって、ミート力を磨いた。走力も折り紙付きだ。
彼は、やっていた野球ゲームの大事な試合で負けてしまったらしい。そのままうなだれて、ゲーム機の電源を切った。
本当であれば、熊本城南高校に野球推薦で入学するはずだった。
全国大会準決勝、これで勝てば初の全国タイトルの獲得であった。
1点リードの9回2アウトランナー2・3塁。間違いなくここで勝つ手筈だった。
セカンド正面。
「石川!」
しかし、「………え」
ボールは、構えたグラブの横を掠める。
トンネル。公式戦初のエラーだった。ライトも後退していた。
2人のランナーは、共に足が速い。すぐさま石川がボールに追いついたも、既に三塁ランナーは還り、
2塁ランナーももう少しだった。
「間に合え!」渾身の送球がキャッチャーに届く。
タッチは、
「セーフセーフ!ゲームセット!」
間に合わなかった。
すっかり自信を失った石川は、推薦を辞退し、地元の農業高に通うことにした。
軟式野球部が、ある事を知らずに。
遅れてすいませんw
高校入る前にだそうと思っていたのですが、
時間がなかったです。