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仮
ベルが鳴る。
私は男の胸に乗せていた顔を少し上げ、時間が来た事を告げた。
「もうそんな時間かあ。楽しい時間はあっというまだな」
私はその言葉に微笑む。そして男の手を引いて風呂場へ向かうと丁寧に身体を洗い流した。
服を着ると男は不意に私を後ろから抱き締めた。
「僕はね、ハルちゃんがいるから、頑張れるんだよ」
息が止まる。
「ハルちゃん、いつもありがとうね」
男は優しい口調で続ける。
「ハルちゃん?
…どうかした?」
私は無言のまま手を伸ばすと、黙って男の頭を撫でた。
男は何か幸福な勘違いをしたのか、口元を緩ませ、目尻を垂らした。