姉弟喧嘩
クライブ視点です
ラケシス様から、違う道を行くように言われ憂鬱になりながら歩いていると、俺の方に割り当てられた隊員達が文句を口にした
「俺、隊長の方に行きたかった」
「そりゃそうだろ、隊長可愛いからな」
俺だって同じ気持ちだ
仕方なく俺は叫ぶように言った
「野郎共、チャッチャカ終わらせてラケシス様に追い付くぞ!」
俺の声に隊員達はヤル気を皆切らせて雄叫びをあげたのだった
こっちの道は被害が少なめで、比較的早く対応ができて皆早足で道を進んでいた
「騎士様、うちの畑もお願いしたいんですけど!」
少しはなれた所から声をかけられ、声がした方を見ると、俺はフリーズした
いや、声の主もフリーズした
「綺麗な人だー」
「美人!」
連れていた隊員達が口々に言った
「く、クライブ」
「久しぶりだな、ミスティ」
声の主は俺の、じつの姉ミスティだった
10年ぶりのミスティは何も変わっていないように見えた
「やだー本気で騎士になってる!って言うか、あんなにヒョロヒョロだったのに胸板厚くなってる!見せて」
テンション高くミスティは俺に近づき、胸板に触る
「こら、触るな」
「他の女には触らせといて私は駄目なわけ?」
「触らせてない、だからミスティも触るな」
ミスティは本気で驚いた顔をした
「クライブ、あの頃ヤりすぎて枯れちゃった?」
ラケシス様が似たような事を言っていたが、確実にミスティの影響だろう
「ミスティに殺意をいだく日が来るとは…」
俺は思わず遠くの空を見上げた
「副隊長、その美人さんは?」
「クライブ、きいた?美人さんだって!」
ミスティは俺の腕に自分の腕を絡めた
「私はミスティよ、ちなみに、3ヶ月前から人妻よ!」
俺はミスティを見た
「ミスティ、嘘だろ?」
「なんで?」
「俺、きいてないぞ?」
「言ってないよ、なんで言わなきゃいけないの?」
俺は深くため息を付いた
「そんなに俺の事嫌いか?」
「まさか、愛してるわ!」
ミスティは回りから見ても可愛らしく笑った
「とにかく、うちの畑お願い、水浸しって言うか池って感じなの」
俺はもう一度ため息をつくと、ミスティと腕をくんだまま、ミスティの畑とやらに向かった
ミスティの案内に何だか嫌な予感を感じた
「僕の奥さんが帰ってきた」
その声に俺は頭を抱えたくなった
俺達の方に走ってきたのは俺の友人で植物学者のギースだった
「私の旦那様のギースよ!」
「…ミスティ?なんでクライブ君と腕くんでるのかな?」
ギースの顔がひきつっている
「ミスティ、本気でギースと結婚したのか?」
「あら、知り合い?」
「友達と兄弟とか勘弁してほしい…」
「クライブ、友達いたんだ?」
ギースの顔が青くなっていくのがわかった
「ミスティ、ミスティ」
そんなギースの後ろから顔を出したのは、ラケシス様だった
「ら、ラケシス様…」
呟くようにラケシス様の名を呼ぶと、ミスティは俺の顔を見た
明らかな怒気をまとっている
明らかな殺意を感じて、必死に防御の体制を作るとちょうど、男の急所を確実に狙った膝げりが繰り出されたところだった
「あっぶね、なにしようとしてんだミスティ」
「チッ、クライブ、ラケシス様に変なこと言ってないでしょうね、虫けらは潰すわよ」
「俺の知ってる、ミスティは舌打ちなんてしないし、そんな綺麗な膝げりしない!俺の綺麗で自慢のミスティは何処に?」
泣きたくなる俺にミスティは殺意を隠すことなく言った
「私の安心のために膝げりさせて」
「嫌だ!使い物にならなくなる」
「使えなくなれば安心できるって言ってんの」
「クライブ、ミスティに膝げり教えたのは私だ、ごめん」
ラケシス様の言葉に目眩がする
「ミスティ、冷静になれ何も言ってないから」
ミスティを怖いと思うのは10年ぶりだった
「ミスティ、クライブが可哀想だ、クライブが最低でも愛してるって言ってただろう?」
ラケシス様がミスティにそう言うと、ミスティはラケシス様に抱き付いた
「ラケシス様、お久し振りです、私が愛してるのはラケシス様だけですわ!」
ラケシス様はミスティを抱き締め返す
「私もミスティを愛してるよ」
ラケシス様に愛してるなんて言われて羨ましい
そして、ラケシス様は申し訳なさそうに言った
「ミスティ、君の旦那様が死んでしまいそうな顔をしているよ」
そこで、ようやくギースの事を見た俺とミスティはハモって言った
「「ギース、忘れてた」」