兄妹
「だからさぁ…俺は前線とかじゃなくてバックアップを…」
溜め息を吐きながら、俺は不満を口にする。
「何言ってんのよバカ兄貴、その炎は飾りなの?」
即座、妹から反論。なんとまぁ生意気な妹だこと。
「そういうことにしたいね」
「はぁ…情けない男」
何と言われようが、俺は平和主義なのである。そんな俺がどうして、北高の年下なんかと戦っているのか。
「あぁあぁ、悪かったな。そおら燃えろ燃えろ〜」
相手は未だに『能力』を使ってこない。俺は先ほどから渋々使っているというのに、まったく。
「炎使うのは勝手ですけど、火事とかやめてくださいね」
対戦相手に指摘されるとは。まったく、俺も随分嘗められたもんだな。
「お嬢ちゃん、そいつは余計な心配だな。妹はともかく、俺はちゃんと力に制限かけてんのよ」
「何を暢気に喋ってんのよ!そいつは敵なのよ!?」
はぁ、うるさい妹だ。
「敵って言ったってなぁ、別にコイツら、俺達に何も…」
「いいから!コイツがムカつくから悪いのよ!」
宙を飛び回る男を指差し、妹が叫んだ。男の周囲には雷が次々と落ちる。危ねぇなぁ…さすがに当たったらヤバいんじゃね?
「なぁお嬢ちゃん、相談なんだけどさ」
妹に聞こえないように、戦っているように見えるように、辺りに火種をばら蒔きながら、俺は対戦相手に持ち掛ける。
「何ですか?」
彼女もまた状況を察したのか、軽い動きで炎を避けていく。
「俺達が戦う理由はない。そうだろ?」
「まぁ確かに、妹さんが私の友達を攻撃してきたので、やむなく私も応戦してるだけですからね」
「すまねぇな、喧嘩っ早い妹でさ。まぁとにかくだ」
「相討ちに見せる、のが最善ですね」
俺の考えを汲み取ってくれた。よく出来た娘だ。
「さすがだお嬢ちゃん、わかってらっしゃる。いいか?これから最大級に派手な炎を起こすから、盛大に倒れるんだ。そんで、俺があんたに近づくから、そん時に何か攻撃してくれ。いいか?」
「わかりました」
ある程度の距離を開け、右手を構える。
「そんじゃ、いくぞ。避けろよ!」
「どうぞ」
「ちょっとバカ兄貴!今避けろとか言わなかった!?」
どうしてこの距離で聞こえるんだ。お前の耳どうなってんだよ。
「いや!言ってねぇよ!」
「早く仕留めなさいよね!」
何だよ偉そうに。自分だってまだ一度も雷当ててねぇくせに。
「よし。そんじゃ…派手に燃えろ!」