04.夢のような
あぁ、なんだろうこれは。どういうことだろかこれは。
……そうだよ……
そうだね!!早く来すぎた。
何かって言うと、まぁ、早く来すぎたんだ。
学校は開いてはいたものの、人影は見られない。
それもそのはず、現在の時刻7時40分。
入学式は10時から。
……フライングにも程があるだろッ!!!
待ち切れなくて早く来すぎちゃったみたいじゃん!!
……楽しみにしていたのは否定しないが、これはちょっと恥ずかしい…。
正門が開いていたのでそこから入り、とりあえず俺は記憶を探りながら体育館に向かった。自転車は「1年生」の表示の駐輪場に停めておいた。
やったね、1番乗りだよ。
……虚しさしかない。
そういえばそうなのだ。母さんは準備してなかったし、一緒にいた美咲は今日から授業だからこの時間なのだ。
しかし……
「なんで誰も言ってくれなかったんだ……!」
余裕を持って来るにしても1時間で十分だろ……。2時間って……
「あの」
丁度体育館の横にたどり着いた時だった。
中からは人の声、気配と楽器の音。たぶん、入学式の準備をしてくれてるんだと思う。吹奏楽部が演奏してくれんのかな。
俺は後から声を掛けられた。
少女の声。
そういえばいつかも呼び止められたな……。可愛いらしい女の子に。正夢だったらどうしよう。
なんだかわからないが、胸を高鳴らせながら俺は振り向いた。
―――そこに立っていたのは正に"美少女"
高めの身長、すらりとした均整の取れたスタイル。睫毛は長く、瞳は芯の強さを感じさせる。
そして目を引く、長い黒髪。日の光に輝き風になびいている。
凜とした空気を纏った美少女がそこに居た。
「あ、はい、えと」
たぶん思わず見惚れていた。
顔が、熱い。
「あなた、新入生?」
美少女が微笑んだ。
黒髪がふわりと風に舞う。
「っはい、そう、です」
――ぎこちない!
最早平常心じゃない俺はとりあえず自分にツッコミを入れる。
そんな俺に気付いてか気付かずか、美少女がくすりと笑う。
自分の鼓動がうるさい。
「早いのね」
「そ、そうなんです、間違えて早く来すぎちゃって、あはは、笑えますよねー、フライングにも程があるっていうか――」
その一言に、俺はごまかすように言葉を継いだ。若干早口になっている。
「ふふ」
そんな俺に、美少女は再び笑みをこぼした。
「いいと思うわよ、希望でいっぱいだものね」
「……!」
だめだ。完全に顔が火照ってる。心臓がうるさい、―――
正夢じゃないけど、夢みたいじゃないか。
夢でもいい、その方が納得いくような、出会い。