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今回はちょっと世界設定を出してみました。
「さて・・・皆さん、改めましてご入学おめでとうございます。」
教壇に立ち、笑顔を絶やさない女教師は黒板に向かい、なにやら書き始めた。
「私の名前は 田中 玲子と申します。 レイちゃんって呼んでくださいねぇ~」
黒板には大きく 田中 玲子と書かれ、その隣に大きくレイちゃんと書いてあった。
田中は教師とは思えないぐらいのフランクさで自己紹介した。その舌たらずな独特の喋り方はやはり教師ぽっく無かった。
「ちょっと遅刻してごめんね~、入学初日から問題行動を起こした素行の悪い生徒にお説教していたの~。」
そう言う田中は顔は笑っているが目は笑っていなかった。そしてその目は主に滝沢、俺に向けられていいるようで、割合は6:4で滝沢の分が多めと見た。
なるほど、俺の顔面水鉄砲事件は滝沢が怒られた訳か・・・俺は意識を失っていたし加害者は明らかに滝沢だと思われるだろうしな。事情の知らない周囲の証言では滝沢が怒られるのも仕方が無いな。
滝沢の方を見ると、自分の事を言われていると気付いているのだろう。顔を俯かせ恥ずかしそうに真っ赤になった顔を隠していた。赤くなった顔は正直かなり可愛かった。
「さて最初に、皆さんも気になっていると思いますが~、入学式で校長先生のお話を再度説明させていただきますぅ~。」
なんの話だ?星川によると面白い話など皆無だったはずだが?俺がそう思って後ろを見ると、顔と腕が机にボンドで固定されたように動かくなった星川の姿があった。
教師が話を初めて10分もたたないうちに寝てしまったらしい。こいつはこの状態で入学式も出ていたのだろうと思い俺は童顔な担任教師の話を聞くことにした。
「まず、皆さんにはもう改造因子による状態変化が起こっていると思いますが、能力とは個々の才能であり、目に見やすい個性であることは、中学生のころに習っていますねぇ~」
そう、この世界では全ての人間が改造因子と呼ばれる因子によって超能力ごときの力を得ることができるようになっている。しかしその力は全ての人間に平等では無く、個々の性質によって別物の性質を得る。
例えば人体の一部が鉄化するようになったり、空を飛べるようになったり、人類単体には到底不可能である超自然現象を引き起こしたりと様々だ。
改造因子の発見によって人類は何千万年以来の進化を果たしたとかで、因子の胎児注入は数十年前より法律によって定められた。因子は注入後、個人差にもよるが約10年から15年の歳月を経て覚醒する。
能力の差異でコンプレックスが生まれるという危惧もあったが、目に見える個性は自己の存在を確固させるものとなり、皆、自身の能力を生かした生活を送れるようになった。
あるものは仕事に、またあるものは人類の進歩のためにと研究を重ねたり、動物に変化したものなどは自然界の橋渡しになるなどの活躍を見せている。だが・・・
「皆さんがこの先、能力を生かし、社会に適応できるかどうかは皆さんの高校生活の内申点にかかっています。」
高校生活の能力の使役の用途、内申点よって、どんな職業、夢の実現などがある程度決定してしまう。この少子化時代において大学の数は激変、選りすぐりの能力を持った精鋭のみが入れるようになった。企業も目に見える個性を重視しており、正しく能力を使用できる人間が優先されている。
つまり高校生活において自分の個性を理解し正しく使用することが自身の夢への第1歩になるわけだ。
「皆さんの素行が悪かったり~、社会に有害をもたらすような方はせっかくもらった才能を剥奪され、ただの人間になりますぅ~。そんなことにはならないようにしましょうねぇ~」
ただの人間。これは人生における死刑宣告のようなもので、犯罪者や素行に問題がある高校卒業者に送られる称号であり、無事に高校を卒業したとしてもまともな衣住食は無いと思ってもらったほうがいい。
基本的には能力無しの人間は犯罪者と同義語であり、良いイメージはない。世間の風あたりはかなり悪くなる。政府が能力無しの人間専用の隔離施設まで用意するぐらいだ。
「ここで校長先生の話に戻りますねぇ~」
ようやくか・・・大体、田中の話は小学校、中学校と散々聞かされた話だ。珍しくもなんともない話だ。大体に普通に高校生活を送れば、能力剥奪なんてものは無いからな、遅刻しても反省文でOKらしいし。
実際、今まさに教師の話を完全無視して寝ている星川がいるわけだしな。
「少子化のせいでこの地区の学校をまとめて巨大な学園にする話が持ち上がっていますぅ~。けれどもどの学校が優秀なのかわからないので、じゃあ競いあってもらおうと、なりましたぁ~。」
は?
「選抜試験を受けてもらい、各学校で優秀な生徒同士における戦い又は競技をしてもらい。負けた学校は吸収合併され最終的に一番、優秀な生徒がいる学校が学園の運営を行いますぅ~。」
は?はい?
教室にいるクラスメートは拍手し歓喜の声をあげている。隣にいる滝沢は茫然としている。どうやら滝沢もこの話は初めて聞いたらしい。
「優秀な戦績を上げた生徒には内申点も高くなるでしょうねぇ~、能力使役ランクSのチャンスですよぉ~」
さすが高校教師だ、能力は腹黒に決定だな。
卒業後の能力使役には制限がかかりリミッタ―がつけられる。ランクはS,A、B、C、D、Eまで分けられランクがSからが自由に能力を使用できる。学生の身分では能力使用は完全自由だがSランクどころかAランクですら難しいのでランクは生徒の優秀さが際立つ、魅力的な能力者がいてもEなら自由に能力が使えない分、宝の持ち腐れってことだ。つまりランクUPが餌で、教師共の餌の用意は準備万端ってわけだ。
選抜メンバーになること自体が点数UPにつながるわけか、俺には関係ないないな、俺は平和な世界で生きるだけで十分満足だ。ランクもCかDぐらいで十分だ。
俺がそう考えていると、隣の滝沢が手を挙げて教師に質問の意図を示した。
「先生」
「はい~?レイちゃんと呼んでくださいね~」
「え・・・レ・レイちゃ・レイちゃん先・・生・・」
「はい~まぁ~いいでしょう。なんでしょうかぁ~滝沢さん?」
「ほ、本当に選抜メンバーになればSランクに慣れるんですか?」
「はい~、選抜メンバーになるだけでB以上は確定していますからぁ~」
うおっしゃー キャーBだって すごーいext
はしゃぐクラスメート達・・・それもそのはずだBランクでも一流企業に就職可能な上、国際資格必須のAランクが目の前にあるんだからな、
だが俺ははしゃぐクラスメートみながら隣にいる滝沢を見ていた。肩にかかるぐらいに伸びた髪は少し茶色く、明るい印象を与えていた。髪が少し長いのは年相応に見られたいだからだろうか、滝沢はその小学生のごとき背格好に似合わない確固たる決意を秘めているようだった。
「選抜試験は今月末になります。もちろん1年生にもチャンスがあると思います。みんな頑張ってね~、私のクラスで選抜メンバー出れば私のお給料もUPだからよろしくね~。」
それが本音か・・・