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保健室に着くと直ぐに渡来は治療を始めようとした。
「じゃあ早速、ケガの治療をしようか。」
渡来は座ったままの俺ノ頭に手をかざし能力を発動した。
その渡来の手が光り、俺の体を包み込む。体の痛みが徐々に引いてきた。
「僕の能力は{ 痛みを癒す }能力のDランクです。これぐらいのキズならすぐに治るでしょう。」
元々、俺は致命傷らしきキズも痛みもなかったので、渡来のおかげで十分に痛みが和らいだ。
流と桜花も同様に能力を使用してもらった。
「へぇ 先生の能力って便利ですね。」
流は感嘆の声をもらしながらも渡来に手を近付けられるのが嫌みたいだった。
俺は渡来が桜花を治療している隙に、流に小声で話しかけた。
「お前、ちょっと渡来に対して露骨すぎないか?」
「いや・・だって・・ちょっと気持ち悪くて・・・いい人だとは思うんだけど・・・」
何が気持ち悪いのだろう?女子にしか好かれないようなイケメン顔だというのに・・・もしかして俺と世間の美的センスが違うのだろうか?
「これで鉄さんも大丈夫ですね。」
治療が終わったらしい。見ると保健室のベッドで寝ている桜花は先ほどよりは顔色がよくなっていた。
「さて、そろそろ事情を説明してもらいましょうか。」
「私も説明して欲しいな、まずあの娘だれ?名前は?」
渡来はさまになる仕草で椅子に座り、流も近くの椅子に座る。
「俺もよくしらないけどな、名前は鉄 桜花って言ってたな。・・・つい最近知り合いになった奴だ。」
「もしかしてこの桜花さんって、最近、噂になってる危険人物のこと?」と流
「さあな」
俺は手で降参のポーズをする。
「どうもこいつは強くなりたいらしくてな。俺が狙われたのは偶然だったしな」
「起きて事情を聞きたいところですね。」
確かに・・・また狙われたらたまらんし・・・
「けれども、もう夜だ。君たちは早くお家に帰りなさい。」
教師らしく帰るのを勧められる。だがあの瓦礫の山をまた歩けと・・・
「学校の裏門を通ればすぐふもとにつくよ。本来は教職員用なんだけど、今回は特別に通っていいよ。それに通学路は妖精達が急いで直してくれるそうだから明日には元にもどっているだろうしね。」
妖精ってのはRPGでよく聞く名前だが、ここで言う妖精ってのはちょっと違う。
能力が自由に使えば被害も多くなる。その被害対策として作られた、能力使用可の国家組織がある。通称、妖精、だれに気付かれることもなく仕事をすることからそう呼ばれるようになったらしい。
その行動は多岐にわたり。今回の通学路半壊の後始末も彼らの仕事になるらしい。お仕事ご苦労様です。
「そうだな・・流、桜花は渡来に任せて俺らは帰ろうぜ。」
「・・・う・・うん・」
「気をつけて帰ってくださいね。」
笑顔で送り出す渡来はどことなく俺らを早く帰らしたいようだった。
だが俺はあまり気にすることなく保健室を後にする。
裏門からでて少し歩くとふもとに着いた。
「はぁー今日は散々な一日だったわ。」
「悪いな。巻き込んじまって、今度、お詫びにどっか連れていってやるよ。」
二度と会わないと思って油断していた。
「ホント!?」
「・・お・・おう」
予想外の反応に驚きながら俺は答える。
「ふふ、じゃあ選抜試験が終わったらどっか連れていってもらおうかなー♪」
滅多なこというもんじゃねぇな。
ふもとからそこそこ歩いて、交差点に入る。
「あっ 私こっちだから。じゃあね~!!また明日!!」
俺とは逆に歩く流を見送り、俺は学校の方に目をやる。すでに夜空が広がっている空に、学校のシルエットが見える。ところどころに明かりがついているのは、まだ渡来を始め他の教師が残っているからだろう。
「渡来はなんで桜花の名前を知っていたんだ・・・・?」
渡来は俺が桜花の名前を教える前に≪鉄さん≫と言っていた。
俺がどっかで名前を言っていたのを聞いていたのか?それとも・・・
まぁ大したことじゃないだろ。一応、教師だしどっかで知ったのかもしれん。
そう思い俺は家に帰ろうと歩き出す。俺の中に不安を残しながら・・・