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筆が・・・
進まない・・・だと!?
危険爆発女の大爆発を食い止めることには成功したが・・・
当の本人がぐーすか寝てしまっているのは・・・困ったな・・・どうしたもんか・・・
こいつも悪気があるわけじゃないし、内申のこともあるから騒ぎを大きくしたくないしな・・・
「とりあえず一度・・・先生に電話しましょ・・・もう一歩も動けないわ・・・」
流が言うことはわかる。俺もかなり疲れた。密度の濃い一日だよ・・・
「というか・・・まだそんな学校から離れてないんだから気付けよな・・・」
気付かれても困るが・・・
俺は学校の警備を強化すると言った田中の言葉が嘘っぽいものを感じながら携帯を取り出す。だが・・・
「・・・・学校の番号がわかんねぇ・・・」
つか知るかそんなもん
「・・・ハァ・・・生徒手帳に書いてあるわよ。」
呆れ顔で俺に言う流
「・・・おう・・・」
俺は生徒手帳に書かれた番号に連絡する。
「んー・・・はぁ・・むにゃむにゃ・・・」
横でだらしなく倒れてる桜花・・・いや寝ているんだこいつは・・・
さっきまでの怖ろしい雰囲気は無くなり、どこから見ても普通の少女がそこにいた。
「はい・・・もしもし 辰宮寺高校の渡来ですが・・・どのようなご用件でしょうか?」
「あー・・・渡来先生か?」
「はい。 私は渡来と申しますが?・・・恐れいりますが、どちら様でしょうか?」
「俺だ。神庭勇だ。それとも入学式前にお世話になった生徒とでもいいか?」
「神庭君でしたか。どうかされましたか?」
なんといったもんか・・・通学路の惨状はいつか誰かが気付くはずだが・・・幸い誰も見ていた様子は無かった。
黙っていればバレることはなさそうだが・・・
「実は・・・帰ろうとしたら学校近くの坂道が爆破してケガをしてしまったんだ。それと他校の知り合いもいる。大した怪我じゃないんだが・・・とりあえず休みたい・・・誰か迎えにこれないか?」
「その様子ですとケガの心配はしなくても大丈夫そうですね。ケンカでもしたんですか?」
「ケンカじゃない。いきなり爆破したから回避できなかったんだ。」
「わかりました。 すぐに向かいますよ。そこで待っていてください。」
世間の危険認知度は数十年前と比べ、大分ゆるくなった。能力の使用で被害を受けても国が完全補償してくれるからだ。 建物が壊されようが、社会が混乱しても損害は被らないようになっている。
そんな世界だからか能力の使用が多くある学校近くの事件は教師の判断で警察や救急車を呼ぶ決まりになっている。
養護教諭らしい渡来もそのことをわかっているので、話が早くて楽だった。俺は電話を切り、流に教師が迎えに来ると伝えた。
「誰が出たの?」
「あぁ保健の先生だ。」
「渡来先生?」
「それ以外いるのか?」
「渡来先生かぁー」
流の表情がすごく微妙な表情になる。
「なにか不満なのか?」
流の嫌そうな表情はあまり見たことが無い。
「あの先生、あまり良い噂を聞かないんだよね。特に女子を見る目が怖い人って聞いたことがあるし」
イケメンならそれぐらいいいとは思うのだが・・・
「まぁ顔は悪くないだろう・・・」
「え~!?私、一度、渡来先生に会ったことがあるけど、あの顔は好きになれそうにないわ・・・」
まぁ人それぞれ好みがあるからな・・・流の趣味に口出しするつもりはないさ
夜か・・・
ほんの少し前は夕焼けだった空も暗くなり、月が輝く時間となった。
渡来に電話してから数分後、渡来は瓦礫の山を歩いてきた。
「大丈夫かい?車はあちらに止めている。少しは歩けるかい?」
俺や流は大丈夫だが、そこで寝ている奴はどうする?
「この子が他校の子かな?この子は、僕が後でこの子の学校に連絡を入れよう。けれど一旦は学校の保健室に向かおう。あそこならゆっくり休めるだろうしね。」
とりあえず早く休みたい・・・平和が一番なんだからな・・・