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今回、初めて主人公以外の視点で物語を進行させたいと思います。
主人公の視点のみで構成する予定でしたが、作者の力量不足によって視点変更もやむなしとなりました。
俺は両者の戦いの激しさに流れ弾が当たらないように必死に逃げ続けていた。
手に持つ石を弾丸のごとく投げ続ける桜花、しかし流はそれを水弾で撃ち落とす。
こいつら戦い慣れしすぎだろ・・・・
{ SIDE流 }
何なのこの子!? 私は次々と投げられる石の弾丸水弾で撃ち落としたり軌道を変えてやり過ごしていた。戦いに慣れていると言うより、天性のバトルマニアのようなものなのかもしれない。
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最初に坂を下りる時に見かけたときは、他校の生徒がうちの学校になんの用だろうって思ったけど、神庭君に話しかけてきて、それで私は神庭君がなにかこの女の子に何か悪いことをしたんだと思って・・・つい神庭君を睨んじゃった。
いきなり女の子の体触ったりする変態さんだし。変な噂も流れるし、神庭君は前科持ちだ。信用出来ないや・・・
大体、神庭君には女性に対する礼儀がなってないんだよね。私としか女の子でお話してないし。私がいなきゃ教科書忘れても貸してくれる女友達もいないしだろうし、私が一緒に帰ろうって言わなきゃ1人で帰るのを先生に怒られたりしてたんだよ。そこんとこわかってるのかな?
クレープの奢りはもちろんだけど、ついでにどっか遊びに連れて行ってもらうぐらいは当然よね。
だから今日の放課後はすごく楽しみだった。彼はきっと1人で帰ろうとするだろうから。彼は誘えばきっと一緒に帰ってくれるとも思っていたし、だから私は予想どうりにことが進んで・・・いや進みすぎてドキドキしていた。
彼が私を小学生と呼んだりしてからかうのも、仲が良いからだと思うとそ気にもしなくなっていた。
だから、私以外の女の子の知り合いがいる神庭君はムカムカする。
私はこちらに向かう女の子を見る。
同年代だと思う・・・幼い感じではあるが、背はスラリとしており、なにより目立つのが赤い髪のポニーテールはすごく奇麗だった。
顔は総じて整った顔立ちをしておりボーイッシュな仕草が彼女の魅力を引き出していた。
そんな美人さんが神庭君のまともな知り合いなわけがない。私はそう思って神庭君に彼女のことを聞いた。
だが神庭君は焦った表情で私の手を掴み走ろうとする。直後、さっきまで歩いていた坂道が瓦礫の山と化していた。
「逃がさないよ。今日はバイトも休みもらったし、決着つけましょ。」
と彼女は言う。私にはなんのことかわからないけど、神庭君にはわかったみたい。
「待て!!こいつは関係ない。戦うならまずこいつだけは安全な場所まで送らせろ。」
話が少しわかってきた。この娘は昨日、神庭君を襲ったって言う他校の生徒らしかった。
神庭君の言葉を受けた彼女は好きなお菓子を我慢する子供のような素振りでこう言った。
「私の今のターゲットはこの男だけ、あんたも強そうだけどこの場は逃がしてあげる。」
私はその言葉を受けてこう考えた。つまり彼女は神庭君とかんかするつもりなのだと、そんなことは私がさせない!!
私は名残り惜しいかったけど、神庭君の手を離してこう言う。
「どこの誰かもしれない相手の言うことを聞く義理はないわ。私たち今から駅前のクレープ屋に行かなきゃいけないの、そこどいてくれない?」
彼女はわかりやすいぐらいに怒った表情になった。赤い髪が少し怖い。
「あんたケンカ売ってんの?私はあんたが邪魔って言ったんだけど・・・爆発的に爆ぜる?」
「出来るものならどうぞ、泣いてもしりませんけど・・・」
少し怖かったけど、挑発には挑発で返した。
挑発を受けた苛立った様子で、彼女はポケットから何かを掴む。
私は手を銃に見立、構えをとる。
そして彼女と能力の撃ちあいになってしまった。
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よけいなことを考えながらも彼女の猛攻は続いていた。
私の能力は基本、自分の水分摂取量ほどしかつかえない。
このまま、撃ちあいを続ければ弾(水分)が無くなるのは私の方だろう。彼女の弾(爆弾)はおそらく石であったりコンクリートなのだ。これはかなりの不利だ。石やコンクリートはそこら中にあるのだから。
「神庭君!!伏せて!!」私は神庭君に叫ぶ。彼女にも聞こえたが仕方ない。
「お?応!!」
私は一気に勝負を決めるべく、自分が出せる水を一気に放出する。
その全水量は津波のごときスピードで彼女に襲いかかる。
私の警告に反応した彼女は襲いかかる津波の手前に石を投げ入れ爆破させる。
「これで止まれば・・・・と・止まらない!?」
「その程度の爆発じゃ・・・これは止められないわ!!」
よし、爆発によって少しだけ水の量が減ったけど、まだ彼女を水流の波に巻き込ませることができる。
そうすれば一気に体力を奪え、おとなしくさせることが出来るかもしれない。
「私は負けない。負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」
彼女は制服の首元を広げ、さらに首にかけたネックレスを外した。
だが彼女が何かをする前に、私の津波が彼女を襲う。
津波にのまれた彼女はなすすべもなく体力を奪われるはずだった。
しかし、津波が彼女をのみこんだ瞬間、津波の全てが爆発した。
その水蒸気の爆発の衝撃が私に襲いかかる。
「こ・これは水蒸気爆発!!??まさか!?」
「危ねぇ!!!流!!。」
神庭君が私の前に出てきた。
衝撃は神庭君の突きだした手のひらの前で拡散した。
「助かったわ・・神庭君、ありがとう。」
「あぁ大丈夫か?」
「えぇ!でも・・・もう水が・・・」
信じられない思いでいっぱいだったが、それよりも私は手持ちの水を使いきってしまい反撃できないことに気付いた。このままじゃやられる。そう思った時、彼女の様子がおかしいことに気付いた。
彼女は虚ろな表情をしており、その目は生気を感じなかった。
「・・・・!!!」 直後に彼女の体に赤い光が包みこんだ。
「な!?・なんだあれ・・・」
「あれが彼女の真の能力なの?」
驚く神庭君にすがって聞いてみるが、答えは期待しないほうがよさそうね。神庭君も驚愕の表情をしている。
彼女は纏っている赤い光を周囲の石に照らした。その石の全てが大爆発を起こす。
「な・んて能力なの・・・!!??」
{ SIDE 勇 }
「な・んて能力なの・・・!!??」
同感だ・・・さっきまでのあいつは少なくてもこんな高威力の爆発は起こせなかったはずだ。
爆発から逃れつつ、俺は流とあいつを止める為の作戦を練っていた。
「なんでいきなり暴走してるんだ?暴走さえ止めたらおとなしくなるんだろうけど。」
「わからないけど、戦闘の途中でネックレスを外してから様子が・・・!!!あれは!」
流はなにか気付いたのか?
「!! ねぇ神庭君あれを見て。」
流はすぐ近くにある。あまり見慣れないデザインのネックレスを指す。
「なんだ?あれ?」
「あの娘、そこに落ちてるネックレスを外した後、様子がおかしくなったわ。もしかしたらあれはリミッタ―装置なのかもしれないわ。」
「なるほど、だったらあれを首にかければ暴走も止まるはず・・・」俺はすぐそこに落ちたネックレスを拾い上げた。
それだけならなんとかなるかもしれない。
「無茶よ、確証もないし、それに今、こうやって爆発から逃れているだけで精いっぱいよ。」
「確かに・・・ん?」
すると爆撃がやむ・・・
「どうした?」
「クールダウンかしら?」
桜花は赤い光に包まれながら動こうとしていない。今がチャンスだ。
「神庭君、きっと罠よ!!危ない」
だがこれを逃したら次はないんだ。俺は桜花に向かって走りだした。
「・・・・」
桜花のすぐ近くまで来れた俺は桜花の首にネックレスをかけようとする。
だがしかし、赤い光が爆発する石のように桜花の体に凝縮した。
直感だが周囲一帯が爆発に巻き込まれるんじゃないかと思える力を感じた。
「神庭君・・・お願い!!・・・」
爆発は止まらない、俺は自分の因子が覚醒したのを感じ能力を発動する。
「護ってやるさ!!!全部!!!」
赤い光が解き放たれた。
・・・・・・
・・・・・・
「・・・よかった・・・私・・・生きてる・・・」ヘタヘタと座り込む流
「助かった・・な・・・」倒れこむ桜花を支えながら、力尽き立ちつくす俺
「ん~むにゃむにゃ・・・でへへへ」幸せそうに寝る桜花
俺と流、それと桜花、みんな無事だった。
桜花もろとも巨大な爆発をする予定だった赤い光は俺の能力が爆発の瞬間、爆発を抑え込んだ。全てを護る俺の能力が・・・
俺の能力は{ 護りたいものを護る能力 }俺が心の底から護りたいと思わなきゃ発動しない能力だ。
前略、天国の父と母よ・・・俺は今、爆発によって瓦礫と化した通学路ににいます。
おそらく、今回が現時点の最大の長いお話になったと思います。