表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

お気に入り小説5

病弱を理由に甘やかされた姉のせいで婚約解消の危機に陥りましたが、努力してきた妹は王太子に選ばれました

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/05/05

「ああ、具合が悪いわ。気分が悪くて勉強なんて出来ないわ」


「お姉様、またですか?この間も勉強をサボっていたじゃありませんか」


姉ベレンシアは、幼い頃から病弱をアピールしてきた。

いつも勉強をサボっている。

具合が悪いからと。


2歳年下のリーディシアはそれが頭に来ていた。

二人の両親、アラウド公爵夫妻は、ベレンシアに甘いのだ。

ベレンシアは6歳頃までよく熱を出して寝込んでいた。

だから、両親はベレンシアばかり構って、リーディシアはあまり構って貰えなかった。


ベレンシアは身体が弱いから。

リーディシアは健康だから。


ベレンシアが勉強をサボっても、両親は煩く言わなかった。

リーディシアが勉強をサボろうとしたら、怒るのだ。


「お前はしっかり学ばないと。健康なのだから、勉強を休む理由なんてない」

「そうよ。ああ、ベレンシアは無理しないでね」


酷い酷い酷い。わたしだって、疲れている日だってあるのに。

お姉様はサボっても許されてわたしは許されない。

もっと勉強しないと。お父様お母様に怒られる。


いくら勉強したって、お父様お母様は勉強するのが当たり前だとリーディシアにはその態度なのだ。


もっとわたしに構ってよ。

なんでお姉様ばかり構うの???


お姉様が美しいから???


ベレンシアはとても美しい。金髪碧眼で色白の凄い美人だ。

それに比べてくすんだ金髪碧眼のリーディシア。

ベレンシア15歳。リーディシア13歳になった春。


リデル王国のジェラール王太子が婚約者をそろそろ決定するという。


ジェラール王太子は金髪碧眼でそれはもう美しい。

歳はベレンシアより一つ年上の現在16歳。

リーディシアより三つ年上である。


アラウド公爵家は名門だ。王家からアラウド公爵家にジェラール王太子の婚約者にならないかと話があった。優秀なリーディシアにである。


ベレンシアは平然と両親に、


「わたくしがジェラール王太子殿下の婚約者になりますわ」


と両親に訴えてきた。しかし両親のアラウド公爵夫妻は、


「リーディシアに話があったのだ。お前にではない。それに、お前は病弱だろう?」

「だから無理よ。とてもじゃないけれども、王家に嫁ぐことは出来ないわ」


ベレンシアは胸を張って、


「わたくし健康になりましたの。最近、食欲も出て来て、元気になりましたのよ。なんでもジェラール様はお美しいのでしょう。それに、将来王妃様になれば、国で最高の女性になれるって事でしょう。だから、わたくしが婚約者になります」


アラウド公爵は、


「お前は我がアラウド公爵家を継いで、婿を取らせる予定だったのに」


アラウド公爵夫人も、


「でも、貴方、勉強してこなかったわよね。大丈夫かしら」


ベレンシアは、


「これから勉学に励みますわ。王妃様になれるのですもの。それに王妃様は美しい方がよいでしょう。わたくし、ぴったりですわ」


その様子を見て妹のリーディシアは子供心に心配になった。

当時のリーディシアは13歳。まだまだ子供だ。


わたくしを望んで王家が???

アラウド公爵家は名門だ。事業も鉱山を沢山持っており、美しい首飾りや腕輪を作る事業が主体である。

王家との縁は、利あるのみだ。


王家から婚約の話があってもいいように、その覚悟を持って勉学に励んで来た。

姉が頼りなかったから。

その話があったら、自分が婚約者になるだろうという覚悟。


具合が悪いとあまり勉強をしてこなかったベレンシア。

王家が婚約者の変更を認めるかしら?


本当に両親は姉ベレンシアに甘くてイライラする。


家族揃って、王宮へ出向き、王宮の広間で婚約相手のジェラール王太子と、国王夫妻に面会した。


ジェラール王太子は当時、16歳。

そろそろ婚約者を決めようとしていて、まずは名門アラウド公爵家に国王陛下から声がかかったという訳だ。


ベレンシアは思いっきりオシャレをして、頬を染めてジェラール王太子を見つめている。

ジェラール王太子は柔らかく微笑みながら、


「君が私の婚約者になるリーディシア???」


「わたくしは姉のベレンシアですわ。ジェラール王太子殿下。見て頂戴。わたくしのドレス。わたくしの金髪に映えるでしょう?美しい水色にフリルをふんだんに使いましたの。それからわたくしの首飾り、大きな宝石はルビーですのよ。わたくし、ルビーが好きですから。王妃様に将来なったらわたくし、贅沢を沢山したいですわ。ですから、妹ではなくわたくしを婚約者に変更して下さいませ」


国王夫妻を始め、その場にいた全員が黙り込んだ。


アラウド公爵夫妻が国王陛下達に機嫌を取るように、


「ベレンシアは確かに美しいので。」

「王妃になるには美しさも必要でしょう」


ジェラール王太子は柔らかく微笑んで、


「私達は民からの税で生きている。ある程度の美しい装いは必要だろう。周りの貴族達に示しがつかないからね。だからって、余計なドレスや首飾りを無駄に作っていいとは思えない」


ジェラール王太子は物腰は柔らかいが、目は笑っていなかった。

明らかに怒っている。


リーディシアは両親の傍で見ていて思った。

まずい、ジェラール王太子殿下は怒っている。

我がアラウド公爵家としては、王家と縁を結びたいのだ。


何故なら、事業でアクセサリーを扱う商売をしている。

鉱山を多数、持っており、そこから採れる宝石を加工して貴族に販売しているのだ。


我がアラウド公爵家から王妃が出るのなら、よい広告塔になるだろう。


だがジェラール王太子はあまり、華美な贅沢は好まないようなのだ。


リーディシアがジェラール王太子の前に進み出て、


「贅沢が悪いのでしょうか?確かにドレスや首飾りを無駄に作ることは良くないと思います。わたくし達は民達からの税で食べているのですから。でも、ドレスを作ることで生地を必要とし、職人たちが縫い、仕上げて、生きていっている人たちだっているのです。我がアラウド公爵領は宝石の産地です。首飾りや腕輪、髪飾りの加工だってしております。その産業で我が公爵家は潤っているのです。一概に贅沢はよくないと言ってはいけない。かといって浪費して、お金を湯水のように使ってもいけない。わたくしは、予算内で程よくドレスや首飾りを作り、華やかな王宮を演出し、王国の経済を上へ上へと回していく政治をすることが大切だと思います」


ジェラール王太子はリーディシアの手を取って、


「調べた通り、しっかりした女性のようだ。リーディシア」


皆を見渡して、


「私はリーディシアと婚約を結ぶ。このリデル王国を上へ上へ導く手伝いをして欲しい」


ベレンシアが叫んだ。


「ジェラール様、わたくしの方がふさわしいわ。わたくしの方が美しいのよっ」


アラウド公爵は、慌ててベレンシアを抑えて、


「解りました。リーディシアと婚約をよろしくお願い致します」


国王陛下も頷いて、


「しっかりしたお嬢さんだ。我が息子の婚約者として、将来の王妃としてふさわしいだろう」


ジェラール王太子はリーディシアの前に跪いて、


「私が決めたのだ。リーディシア。よろしくお願いするよ」


そう言って手の甲にキスを落としてくれた。


リーディシアは嬉しいというより、責任の重さで眩暈がしそうだった。


覚悟はしていた。でも、いざ婚約が結ばれると重責を感じた。


姉ベレンシアが凄い形相でこちらを睨んでいる。


そしていきなりベレンシアは倒れた。


慌ててアラウド公爵夫妻が抱き起す。


ベレンシアは、


「ああ、わたくしは傷つきましたわ。ジェラール王太子殿下と婚約するためにこちらに来ましたのに。わたくし、本来は身体が弱くて弱くて最近、やっと健康になりましたの。ああ、ジェラール様。わたくしの手を握って下さらない。ずっと憧れておりましたの。ジェラール様の婚約者になる日を楽しみに生きてまいりましたわ」


ジェラール王太子は、リーディシアの手を取りながら、ちらっとベレンシアを見やり、


「それはそれは、大変だったな。ベレンシア。どうかゆっくり静養した方がいい。こんな事で倒れてしまっては将来、王妃は務まらないからな。やはり君を選ばないで良かった」


「なんて冷たい。わたくしが倒れているのに、どうか手を取って下さいませ」


アラウド公爵が慌てて、


「娘を連れて帰ります」


「いえいえ、お父様。わたくしはジェラール様に手を取って頂きたいのですわ」


ジェラール王太子はリーディシアの手を取って、


「テラスで二人きりで話をしようか。リーディシア」


リーディシアは父アラウド公爵の顔を見た。


「行っておいで」


ベレンシアが凄い形相でリーディシアを再び睨みつけた。


リーディシアはジェラール王太子に連れられて王宮のテラスへ。


テラスでジェラール王太子と改めて話をした。


「君の一生懸命さに私は惹かれたよ。改めて婚約者になって欲しい。私はドレスも首飾りも必要なら作ることも禁じはしないし、あまりみじめな恰好をしては王家として、他の貴族達に示しがつかないからね」


「有難うございます。それにしてもお姉様が本当に申し訳なくて」


「君の姉は酷いね。どういう教育をしてきたのか。まぁいい。私は君と婚約を結んだんだ。これからよろしく頼むよ。リーディシア」


リーディシアは緊張した面持ちで、


「わたくしに出来る限り、頑張らせて頂きます」




内心、リーディシアは焦っていた。

我がアラウド公爵家は、どうしても王家と縁を結びたい。

姉は王妃様になるのよって、言い出して、両親は困っていた。


姉に王妃様が務まるとは思えない。

だから一生懸命、勉強をしてきたのだ。


いざ、自分が婚約者に決まってみると、先々の重責で胃が痛くなる。

それでも頑張らねばと思うリーディシアであった。


屋敷に戻ると、ベレンシアが、


「酷いじゃない。わたくしがあの美しいジェラール王太子殿下と婚約を結んで、王妃様に将来なってうんと贅沢をする予定だったのに。酷い妹。いえ、貴方なんて妹でもなんでもないわ」


そう言いながら、


「ああ、気分が悪いわ。マリー。わたくしをベッドに連れて行って頂戴」


マリーというメイドに頼んで、ベレンシアはメイドに縋りながら、部屋に行ってしまった。



一年過ぎて、ベレンシア16歳、リーディシア14歳になり、ベレンシアは貴族なら誰しもいく王立学園に入学することになった。


ベレンシアは、


「わたくし、学園に行きたいわ。貴族なら誰しも行く学園なのですもの。ジェラール王太子殿下も通っていらっしゃるのでしょう。楽しみだわ」


リーディシアはまだ王立学園に通う歳ではない。

ただ、王宮に通い、頻繁に王太子妃教育を受けていた。


姉の態度に一抹の不安を覚えるリーディシア。

何かやらかさなければいいけれども。



ジェラール王太子と数日後、テラスでお茶をしていた時、

ジェラール王太子は不機嫌に、


「君の姉、あれどうにか出来ないか?私の傍に突進してきて、

会いたかったですわーーって腕を絡めてくるのだ。全く、鬱陶しいったらありゃしない。だから私は、

私は会いたくなかった。離れてくれないか。

て言ったんだけれども、

ああ、具合が悪くなりましたわーー。って縋りついて来てね。

本当に困った」


頭が痛くなった。

姉は学園でジェラール王太子に迷惑をかけているのだ。

このままでは我がアラウド公爵家の品位が更に問われかねない。

下手をしたらせっかくのリーディシアとジェラール王太子との婚約が駄目になるかもしれない。


リーディシアは、


「解りましたわ。わたくしが、対処致します。わたくしの姉が申し訳ありません」


ジェラール王太子は、


「リーディシアの手腕を見せて貰わないと、期待している」



アラウド公爵家の事業の為にも、この婚約を継続させて、王妃にならねばならないのだ。


リーディシアは思った。


姉に対して、毒を盛る?本当に病にする?

それとも、監禁して田舎に移して、人目につかないような生活にして。


どちらにしろ父アラウド公爵と相談しなくてはならない。


両親はどちらかというと姉を甘やかして来た。

もっと厳しく姉に接していれば、このような事にはならなかったのだ。

リーディシアに対しては厳しかった。


わたくしと姉との間の仲は元々よくない。

いつも嫌な事から逃げていた姉。


「わたくしは身体が弱いの。教会の慈善活動に顔を出してですって?嫌よ。リーディシアがお母様と一緒に行ってくればいいわ」


慈善活動はアラウド公爵家にとって大事な活動だ。

特に母アラウド公爵夫人は他の夫人達と共に力を入れていた。


ハンカチに刺繍を施して、それをバザーに出品し、売ったお金を教会へ寄付したり。

教会は孤児達を養っている。

時には教会に母は慰問に訪れていた。

姉はそんな慰問活動を嫌がって、全てリーディシアに押し付けてきた。

リーディシアに取って孤児達に慰問に訪れてお菓子を配ったりすることは嫌な事ではなかったけれども。


それでも、色々と押し付けて来る姉にはウンザリしていたのだ。


いつも具合が悪くなるから、と、いつもわたくしは身体が弱いのよと‥‥‥


ジェラール王太子がリーディシアの傍に来て、


「ベレンシアを二度と、私の目にふれさせないで欲しい。もちろん、出来るな?王太子妃としての教育を受けているはずだ。時には冷酷でないと王太子妃は務まらぬ」


リーディシアは心の中で思った。

それなら貴方様がどうにかすれば‥‥‥いえ。ジェラール様はわたくしの対応を見たいのだわ。

それとも…‥


ジェラール王太子は、


「私が手を下すと、殺しかねないからな。仮にも君の身内だ。君に任せたい」


「わたくしが手を下せないと言ったら、婚約は解消になりますか?」


ジェラール王太子は傍に来て、手の甲に口づけを落として、


「私はリーディシアを気に入っている。一生懸命、王太子妃の教育を受けているね。なかなかしっかりとした女性だと思っているよ。私は君と王国で並び立ちたいと思っている」


「御心に添えるよう、姉の事は対処致します」


王宮から屋敷に戻り、父と母に相談した。


「お父様、お母様。王太子殿下は相当お怒りです。お姉様を領地の片隅に監禁し、二度と王都に、王太子殿下の目に触れさせないで下さいませ」


母アラウド公爵夫人は涙して、


「あの子を監禁?そんな事は出来ないわ」


アラウド公爵は、


「私達が甘やかしたからああなったのだ。王家との婚約は我が公爵家にとって重要だ。リーディシアが王妃になれば、我が公爵家の事業は大いに飛躍する」


その時、ガタっと廊下で音がして、パタパタと走り去る足音が。


姉ベレンシアがこの話を聞いていたのだ。


リーディシアは心配になって、姉を追いかけた。

ベレンシアは馬車に乗って出て行ったのだ。


「あの馬車の後を追ってっ」


急いで馬車の後を追いかける。

どこへ行くの?お姉様っ。


「急いでっ」



追いついてみたら、王宮の正門の前でベレンシアが喚きたてていた。


「妹と両親がわたくしを監禁しようと。わたくしは悪くないわ。わたくしは本来なら王妃になる女よ。ここを通しなさい。ジェラール様っーーー助けてっーーー。わたくし、監禁されたくないっーーー。助けて」


半狂乱になって喚きたてる姉。


あまりの出来事に世界が止まったように感じた。

頭がくらくらする。姉の声が遠くに聞こえる。


通りかかった人たちが見ている。

この醜聞はあっという間に広がるだろう。


あああ、こんな醜聞を姉がっーー。わたくしは王太子妃になる資格はないんだわ。

全て終わってしまった‥‥‥

後悔がよぎる。

元々、姉の評判は良くなかった。

ただただ、両親が姉に甘くて、リーディシアも決意出来なくて、姉を放置しておいた。

それがいけなかったのだ。


馬車から降りて、リーディシアが近づくと、ベレンシアは泣きながら、


「近づかないで。わたくし監禁されたくないっーーーいやぁーーーーーー」


王宮の兵達がベレンシアを捕まえて、連れて行こうとした。

リーディシアは兵達に。


「わたくしは、リーディシア・アラウド。アラウド公爵家の娘でジェラール王太子殿下の婚約者です。この者はわたくしの姉ベレンシア。錯乱状態にあります。後で我が公爵家で責任を持って迎えに来ますので、迎えに来るまで預かっておいて下さいませ」


ベレンシアは泣きながら、


「嫌よ。帰らないわ。わたくしは監禁されたくないっ」


「お姉様。これだけ醜聞を広めたのです。お姉様はわたくしの婚約を壊したいのですか?」


「貴方なんてっ。貴方さえいなかったら、わたくしが選ばれていたわ」



近衛兵に連れて行って貰った。

馬車の御者に、屋敷の執事に姉ベレンシアを迎えに来るように命じて、リーディシアはジェラール王太子に面会を求めた。


ジェラール王太子はリーディシアと客間で会ってくれた。


リーディシアは、


「婚約を解消して下さいませ。王宮の前で醜聞を。わたくしは貴方様の婚約者でいる資格はありません」


声が震える。

今まで何のために努力してきたの?


ああっ。悲しい‥‥努力が全て崩れていく。

アラウド公爵家の為に‥‥‥わたくしの人生が全て崩れていく。


涙が零れる。


ジェラール王太子の冷静な声が聞こえてきた。

胸が痛む。


「確かにまずかったな。王宮の前でベレンシアが取り乱して叫んでいたのは。だが、私は婚約を解消する気はない」


「わたくしは王太子妃の器ではありませんわ。わたくしはアラウド公爵家を継いで、領民の為に生きたい。そう最近、思えてきましたの。王家との縁はとても大切でアラウド公爵家は望んで来ました。でも、この度の醜聞。わたくしは貴方様に迷惑をおかけしました。その責任をとって婚約を解消したいと思っております」


「君が輝くのを見たいんだ。綺麗なドレスを着て首飾りをして、華やかな社交界を作る。経済をもっともっと上に上げて、二人で高みに引っ張り上げようって、私は君の上昇志向が気に入って婚約者に決めた。ベレンシアがなんだ。これから挽回すればいい。私は君と結婚したい。君と王国を築きたいんだ」


嬉しかった。自分の上昇志向が好きと言ってくれて。

でも‥‥‥


「申し訳ございません。どうか…‥婚約解消を」


そう言うのが精いっぱいだった。

悲しくて涙が零れる。


リーディシアは立ち上がり、カーテシーをし、王宮を後にした。





ベレンシアは、領地の片隅にある修道院へ入れる事になった。

馬車に乗せられて、ベレンシアはそれでも喚きたてた。


「わたくしは嫌よ。修道院なんて。わたくしは身体が弱いのっ。お父様ぁ。お母様ぁ。わたくしを助けてーーーーー」



アラウド公爵夫人は涙して、


「ベレンシア。出来るだけ良い待遇が受けられるように、お金を修道院に寄付するわ」


アラウド公爵も頷いて、


「命があっただけでも良かったと思え。元気でな」


いつまでも姉は喚き続けていた。

馬車は遠ざかって行く。



午後に来客が来た。

いきなりやって来たのは、ジェラール王太子殿下だ。


「私はどうしても君と結婚したい。諦めきれない」


驚いた。

リーディシアは慌てて、


「わたくしのどこがそんなにいいのですか?」


「君以外と未来を想像出来ないからだ。私は誰と高みを目指したらいいんだ。改めて考えてみたら、空っぽだった。私の隣は空っぽだった。だから、私は君を諦めきれない。

アラウド公爵ご夫妻。我が妻にリーディシアを改めて貰いたい」


ジェラール王太子の熱意に、リーディシアは嬉しさを感じた。


この人に恋しているのか解らない。ただただ、婚約解消を申し出た時に辛かった。

努力が人生が崩れていく。そんな気がしたのだ。


この人は隣に自分が必要だと言ってくれている。


その手を取っていいの?

わたくしは貴方を信じていいの?

甘い気持ちで婚約を継続していいとは思えない。


迷うリーディシアの手を取り、ジェラール王太子は、


「馬に乗ろう。王都の街並みを見に行こう」



ジェラール王太子はリーディシアを馬に乗せて、王都の街並みを走った。


丘の上に登ると、王都の街を見渡す。


夕陽が王都の街を照らしていて、とても綺麗だ。


「私は君に恋したようだ。頑張り屋の君に‥‥‥改めて、私と結婚してくれ。このリデル王国を二人でよくしていこう」


背後から抱きしめてくれた。


あまりの熱さに、リーディシアは、


「解りましたわ。わたくし、これからも努力し続けます。二人で良い王国を築いていきましょう」


回された腕に温かさを感じる。

なんだか、とても安心した。

愛されていると感じた。


両親から欲しかった愛されているという温もりを‥‥‥

やっと感じる事が出来た。そう感じた。





三か月後、修道院にいる姉に会いに行った。

気になっていた。心に引っかかっていた姉ベレンシア。


「あら、貴方、わたくしに会いに来たのね」


姉はひたすら神に祈っていた。


「わたくし、お姉様の事が気になって‥‥‥会いに来ましたわ」


「貴方に謝らなくてはならないわ。ごめんなさい。わたくし‥‥愛されたかったの。両親に。誰よりも。だって熱が出て苦しかった時、お父様、お母様が心配して来てくれるのが嬉しくて。弱さを見せるのが愛されているって勘違いしていたのね。ずっと‥‥‥シスターに諭されたの。わたくし、貴方が努力によってジェラール様に選ばれた時に、悲しくて悲しくて。わたくし、ジェラール様に恋していたから貴方の事を憎んだわ。でも、貴方は王国に必要とされて当然ね。ごめんなさい。どうか王国の為によい国を作って頂戴」


そう言って、手を握り締めてくれた。


憎かった姉‥‥‥ずっとずっと両親に愛されて羨ましかった姉‥‥‥

姉の心を聞いて、心の憎しみが溶けていく。そんな気がした。


嬉しかった。やっと姉と和解が出来て、前に進める。そう思えた。



三年過ぎて、とある晴れ渡った日。


ジェラール王太子と結婚式を挙げた。


大勢の人たちに祝福されながら、愛しいジェラール王太子と共に良い国を作っていこうと思えるリーディシアであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最後には姉君もシスターに諭され自らの過ちを自覚し自らを省みることが出来て何よりですね。 そして、リーディシア。よくぞ腐らず真っ直ぐに枝葉を伸ばし育ってくれて、それをしっかりと見てくれる相手と結ばれて何…
屑の美女案件か! ・・・と思ったのですが、この手の病弱姉妹ものってたいてい親がろくでもないんですよね。今回もその例に漏れず割と毒親。 リーディシアがかなり優しい性格だから、親がどうこうされることはなさ…
嘗て『七つ前は神の内』という言葉があったように、医療の発展していない時代であればちょっとした発熱が落命に至ることはよくありました。その点を鑑みれば、幼い頃のベレンシア嬢を公爵夫妻が甘やかしたことについ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ