第3話 政府の包囲網を神回避! 出雲のチャラ神(オオクニ)が「少子化」を恋愛波動で全解決!? 〜分断の呪いを解いたら、日本中がカップルだらけになりました〜
「警告する! 直ちに武装(神器)を解除し、投降せよ!」
伊勢神宮の上空で、警察庁のヘリがスピーカーから怒号を飛ばしていた。
地上ではSAT(特殊急襲部隊)が盾を構え、物々しい雰囲気が漂っている。ネットニュースには『謎のテロリスト集団、伊勢神宮を占拠』の文字。
明らかに情報操作されている。
「うわぁ、完全に悪者扱いじゃん俺たち」
ヤマトが頭を抱える横で、イザ(イザナギ)が鼻で笑った。
「人間風情が神を捕縛? 片腹痛いぜ。スサ、やっちまえ」
「おう! あのヘリ、叩き落としていいか!?」
「待て待て待て!!」
ヤマトが慌ててスサ(スサノオ)の腕にしがみつく。
「撃墜したらガチの戦争になる! ここは逃げるが勝ちだ!」
「えー、つまんないのー」
アマ(アマテラス)が頬を膨らませるが、ヤマトは冷静に空を指差した。
「アマちゃんの光で目くらましをして、その隙に『神速』で出雲へ飛ぶ。誰も傷つけずに移動するんだ。それが現代の戦い方だ!」
「……ふーん。ヤマトくんがそう言うなら」
アマちゃんがパチンと指を鳴らす。
カッッッ!!!
真昼の太陽が、一瞬だけ十倍の光量を放った。
「うわっ!? 目が、モニターが!」
包囲網が混乱に陥ったその刹那。
俺たちは光の粒子となって、伊勢から島根――出雲へと転移していた。
***
出雲大社。
そこは、縁結びの聖地であり、国譲り神話の舞台。
到着するなり、境内にはピンク色の甘い香りが漂っていた。
「やあやあ、いらっしゃい。待ちくたびれたよ」
神楽殿の前で優雅に手を振っていたのは、白のスーツを着崩し、肩に白いウサギを乗せた絶世のイケメンだった。
甘いマスクに、どこか軽薄そうな流し目。
「オオクニヌシ……ですか?」
「『オオクニ』でいいよ、ヤマトくん。話はネットワーク(神の念話)で聞いてる。少子化対策だろ?」
オオクニがウサギを撫でながら、憂いを含んだ溜息をつく。
「今の日本、酷いねえ。僕の専門分野である『男女の縁』が、ズタズタに切り裂かれている」
オオクニが指差した先には、巨大なホログラムウィンドウが出現した。
そこには、日本の街中を歩く男女の姿が映っているのだが――。
彼らの間に、黒い靄のような壁が立ち塞がっていた。
「なんだあれは?」
「『分断のスペクター』だ」
オオクニが低い声で告げる。
「メディアや教育を通じて、『男は敵だ』『女は敵だ』『結婚はコスパが悪い』『一人で生きるのが正義』……そんな思想ウイルスを植え付ける悪魔の眷属さ」
ヤマトは息を呑んだ。
確かに、ネットを見れば男女対立を煽るまとめサイトや、伝統的な家族像をあざ笑うような言説が溢れている。
あれは自然発生したものじゃない。誰かが意図的に、日本人を減らすために仕組んだ『分断工作』だったのか。
「恋愛への意欲そのものを奪う。それが奴らのやり方だ。このままだと百年後、日本人は絶滅種入りだね」
「そんなの……許せるかよ」
ヤマトの腹の底から、熱い怒りが湧き上がってきた。
好き同士が一緒になる。家族を作る。そんな当たり前の幸せさえ、イデオロギーで奪おうというのか。
「オオクニさん! なんとかならないんですか!?」
「なるよ。僕を誰だと思ってるの?」
オオクニがニヤリと笑い、スーツの襟を正す。
「僕は日本史上最大のモテ男にして、国作りのベテランだ。スペクターごときが作った『壁』なんて、僕の愛の前では薄紙一枚に過ぎない!」
オオクニが巨大な「打ち出の小槌」を取り出した。
ただし、それは虹色に発光するゲーミング仕様だ。
「さあ、ヤマトくん。君は僕のサポートを。現代のツールを使って、僕の『縁結び波動』を日本中に拡散してくれ!」
「了解! 通信衛星ハック、いけます!」
ヤマトがスマホを操作し、イザナギ由来の万能アクセス権限を行使。
オオクニが高らかに叫ぶ。
「喰らえ、超・縁結び(スーパー・マッチング)インパクトォォォッ!!」
ドォォォォンッ!!
打ち出の小槌が振り下ろされると、出雲大社からピンク色の衝撃波が日本全土へ広がっていった。
――東京、渋谷。
『男なんてどうせ……』とつぶやいていた女性の背中から、黒い幽霊が「ギャアアア!」と悲鳴を上げて蒸発した。
ふと顔を上げると、目の前にいた男性と目が合う。
「あ……」
「あの、コーヒーでも飲みませんか?」
――大阪、梅田。
『結婚なんて人生の墓場だ』と書き込みをしていた男の指が止まる。
モニターに映る黒いノイズが消え、本当の自分の気持ちが溢れ出す。
「……寂しい。俺だって、誰かと温かい家庭を築きてえよ!」
衝撃波は瞬く間に列島を包み込んだ。
お互いを監視し、批判し合っていたギスギスした空気が、春の陽気のように溶けていく。
黒い『分断のスペクター』たちは、愛の波動に耐えきれず次々と消滅していった。
「す、すげえ……」
ヤマトがモニタリングしていたデータを見て絶句する。
「マ、マッチングアプリのサーバーがダウン! 結婚相談所の電話回線がパンク! 婚姻届のダウンロード数が秒間五万件を突破しました!」
「やりすぎちゃったかな? てへ」
オオクニがウインクする。
その背後で、スサが不満そうに腕を組んでいた。
「けっ、軟弱な技だぜ。俺なら力づくで……」
「あら、素敵じゃない」
アマちゃんがうっとりと頬を染める。
「やっぱり愛よね、愛。これで子供が増えれば、日本の未来も明るいわ」
だが、オオクニの表情がふと真剣なものに変わった。
「いや、まだだ。これで第一段階。次は、生まれた子供たちが安心して暮らせる『土台』が必要だ」
「土台?」
「そう。外国資本に買い漁られている日本の土地……これを取り戻さないと、僕たちの国がなくなっちゃうからね」
ヤマトは頷いた。
人口が増えても、住む場所が奪われていては意味がない。
敵は、思想だけでなく、物理的にも日本を侵食しているのだ。
「次は誰の出番だ? イザさん」
「土地といえば、山の神の出番だな。……っと、その前に」
イザナギが空を見上げる。
そこには、先ほどまでの警察ヘリとは違う、真っ黒なステルス機が無音で浮かんでいた。機体には、どこの国とも知れない奇妙なマーク――『一つ目』の紋章が刻まれている。
「おやおや、ラスボス(DS)直轄のエリート部隊がお出ましか」
オオクニが小槌を構え、スサが剣を抜く。
「いいねえ、やっと骨のある奴が来たか!」
ヤマトも腹を括った。
恋愛ムードはここまでだ。ここからは、国を守るための防衛戦が始まる。
(第3話 完)
【次回予告】
日本の土地は誰にも渡さない!
北海道の水源地を買い占める謎の外資系企業。その裏に潜むのは、日本の国土を切り売りしようとする売国奴と巨大な「土地喰らいの魔獣」だった!
「私が守る。この国の山も、川も、一滴の水さえも」
次に目覚めるのは、山の神・オオヤマツミ! ……と思いきや、娘のコノハナサクヤヒメも乱入して、ヤマトを巡る神様同士の修羅場が勃発!?
さらに、ステルス機から降り立ったのは、ヤマトのかつての同僚(裏切り者)で――?
次回、第4話「北海道が危ない! 外資の魔手から水源を守れ! 〜桜の女神がブチ切れて、侵略者を肥料に変えちゃいました〜」
来週も、神話パワーで論破する!




