1話
新章開幕です!(*´▽`*)
「小さな妖精さん、君は一体何者なのだろうね」
雪解けの水のように澄んだ瞳でこちらを見つめる男性は、氷雪の精霊のように美しい。
光沢のある白色の髪、繊細で整った顔立ち。
そんな男性にじっと見つめられ、私は何と答えるべきなのか戸惑う。
ただ、その瞳は真意を見定めようとするような鋭さがあり、質問の返答次第で、この後、家に無事に帰れるかどうかが決まる気がした。
あぁ、どうしてこうなったのか。
まさか、聖域の森に繋がっていた扉が別の場所に繋がるだなんてそんなこと、過去の私は思ってもみなかったのであった。
◇◇◇
フォーサイス王国の王族に生まれた王子・王女共に、銀色の髪もしくは薄紅色の瞳を持って生まれる。
けれど私シャーロット・フォーサイスは金色の髪に青い瞳と、他国から嫁いできた側妃の母の色を濃く受け継いでいた。
そのため紛い物の姫君として冷遇されて生きてきた。
家族に自分も愛してほしかった。
けれど、それが絶対に願わないという決定的な事件が起こる。
私の腹違いの姉であるリリーお姉様の婚約発表の場にて、侵入した男に私は姉の身代わりに呪いをかけられてしまったのだ。
呪いをかけられた私は北の離宮に幽閉されることとなった。
最初は絶望感が胸いっぱいに広がった。
結局私は家族に愛されることなくここで一人で過ごしていくのだと、悲しみに暮れたのだ。
けれど、気持ちを切り替え、これからは自分の為に自分の好きな魔法植物を研究をして生きていこうと考え方を変えた。
ただ、そこから予想外のことが次々に起っていった。
公爵家のレオン・カーライル様が私の婚約者になったり。
魔道具の扉が開き、聖域の森に繋がり聖獣と契約をしたり。
本当に色々と起こった。
呪われて自分の運命がこんなに変わるだなんて思ってもみなかった。
ただ、起ったのは幸福なことだけではない。
家庭教師であったマイヤー先生の息子であるグレイと、お姉様の婚約者のルパート様が共謀して聖域の森を侵略しようとしていたのだ。
レオン様や聖獣のジョン、そして妖精達のおかげで無事危機は脱したけれど、あの時は本当に大変だった。
そして今、また別の大変な事件がやってきたのだ。
「お兄様?」
まさか、今までほとんど関わりのなかった兄二人が、わざわざ北の離宮までやってくるなど思ってもみなかった。
王家の色を濃く受け継ぐ、第一王子であるルードヴィヒお兄様は、長い髪を後ろで一つに括っており、その身だしなみはきちりと整っている。雰囲気が固くこちらへと向ける視線も鋭い。
それに比べて第二王子であるロベルトお兄様は優しい笑顔を携えており、サラサラの髪を肩ほどまで伸ばしている。目元は少し垂れ目で、言葉遣いも丁寧だ。
ただ二人と関りはほとんどない。故に突然の訪問が理解できなかった。
その上、レオン様の次の言葉に驚いて、今、一体何が起こっているのだろうかと私は混乱してしまう。
「シャーロットと私の結婚式を早める算段を付けたいと思っていたのだ」
お兄様達も驚きの声を上げた。
「い、一体何の話だ」
「兄上、とにかく一度場所を移しませんか? 座ってする話しではない気が」
「あ、あぁ。それは、そうか」
お兄様達はお父様と同様に私のことを嫌っていると思っていたのだけれど、雰囲気からして私に対する嫌悪感は感じられない。
「あの、では応接室の方へどうぞ。ご案内します」
「あぁ」
「ありがとうシャーロット」
気さくな返事に、私は目を泳がせながらもうなずき先頭を歩いていく。
建物の中につくと魔道具によって灯がついていく。
「すごいな……これは、王城よりも……」
「えぇ。兄上、このような魔道具、王城でも見たことがありません」
私も同じように思っていたなと思いながら、応接室へと入ると私は紅茶の出る魔道具でお茶の準備を始める。
「シャーロット。私も手伝おう」
「レオン様、ありがとうございます。でも注ぐだけですから」
「では私が運ぼう」
「ありがとうございます」
私達のやり取りに、お兄様達は目を見開いた。
「……少し、いやすごく距離が近くないか?」
「レオン殿、少し離れてください」
「え? あ、はい」
そう言われたレオン様は苦笑を浮かべる。
紅茶をレオン様と机へと並べると、私はお兄様達と向かい合うようにソファへ腰を下ろした。
私の隣にレオン様が腰掛ける。
「あの、ルードヴィヒお兄様、ロベルトお兄様、今日は突然どうなさったのですか?」
質問に対して、ルードヴィヒお兄様がすぐに言葉を返してくれる。
「シャーロットの運ばれている食事が手を付けられていないという報告を聞いてね、心配になり駆け付けたのだ」
「元気そうでほっとしました」
二人の様子に私は戸惑いが隠せない。
「あの……どうして、心配するのでしょうか?」
今までこんなことは一切なかった。かかわりもなかった。
なのにどうしてかという疑問が胸中を渦巻く。
するとその言葉に衝撃を受けたかのように、お兄様達は悲しそうな表情を浮かべる。
それから、小さく息をつき、ルードヴィヒお兄様が答えた。
「王族の環境上、話をしたりすることは出来なかったが、お前も私達の大切な妹だ」
ロベルトお兄様も同意するようにうなずく。
「そうですよ。それに……大切な妹をもう失いたくないのです」
言葉にひっかかりを感じ私は顔を上げて尋ねる。
「もう? ……それはどういう意味です?」
問いかける私に、お兄様達はちらりと視線を交し合う。
「実は……ローレン王国へと嫁いだリリーが、亡くなったとの知らせが来たのだ」
「だけど、信じてはいません。リリーは何か事件に巻き込まれたのではないかって、考えています」
「あ……」
そうか。リリーお姉様のことをお兄様達は知らないのだ。
そしてローレン王国は、お姉様のことを亡くなったという嘘の報告をフォーサイス王国へと行ったのだろう。
どうしよう。私がそう思い悩んだ時、私の手をレオン様がそっと握る。
視線をあげると、レオン様がこちらにうなずいてみせてから、口を開いた。
「ルードヴィヒ殿下も、ロベルト殿下も信頼のおける方だ。これまで私自身、お二人とは関わる機会があった。だからこそ信頼できる方だと断言できる」
その言葉に背中を押されるように、私はお兄様達の方へと向き直ると、覚悟を決めて、これまでのいきさつを話すことにした。
「あの、お兄様達に聞いてほしいことがあるのです」
「? 一体、どうしたのだ?」
「何か、知っているのですか?」
私はうなずく。
「実はお姉様のことについて、私は真実を知っております。ことの経緯をお伝えしますね」
最初は驚いた様子であった二人だったが、私が話を進めて行くとじっと熟考するようにうなずきながら聞いてくれた。
そして話が終わると、それを飲み込むようにしばらく黙り、ロベルトお兄様が先に口を開いた。
「このことを知っている者は、我が国では他にいるのか?」
「いいえ。おりません」
今度はルードヴィヒお兄様が顔を上げた。
「なるほど、先ほどの早く結婚をしたいというのは、この一件があったからか」
ルードヴィヒお兄様の言葉にレオン様がうなずき返事を返す。
「はい」
「そうか……シャーロット、少しレオン殿と話をしてもいいだろうか」
「え? あ、あの、私も話を聞きたいです」
真っすぐに私が言葉を返すと、ルードヴィヒお兄様もロベルトお兄様もまた驚いたような顔を浮かべる。
「シャーロットはこんなにちゃんと意思を伝えられるのだな」
「ふふふ。意外ですね。だけど、シャーロット、ちゃんと後で話しますから、今は少しこちらで話をさせてくれませんか?」
その言葉に、私は諦めるように小さく息をつくと立ち上がった。
「わかりました。では、私は温室におりますね」
「あぁ、ありがとう」
「また後で」
私はうなずき、部屋を後にすると一人で温室へと向かって歩き出した。
足取りは重い。
「……私だけ蚊帳の外なんて……」
自分の口からこぼれ落ちた言葉に驚き足を止める。
「……嫌なのね、私」
これまではどれだけ理不尽な目にあっても仕方がないと諦めてきた。
けれど今は違う。
私は、私の中での想いというものがあり、それを主張したいという気持ちがあった。
自分の中に芽生えた感情に戸惑いながらも、私は顔をあげた。
「あとで、ちゃんと言葉にして伝えよう」
そう決めると、私は温室に向かって歩き出す。
レオン様ならばきっとちゃんと話を聞いてくれる。だから、これからはちゃんと自分の気持ちを伝えよう。
私はそう、思ったのであった。
11月1日に、書籍2巻と、コミカライズ1巻が同時発売となっております(●´ω`●)
ぜひ読者の皆様にもお手元にお迎えしていただけると幸いです!
WEB版と書籍版と異なるところはございますが、WEB版も最後まで楽しく読んでいただけるように描き終えております。ご安心して最後までお読みください。
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