37話
私の体をレオン様は片腕で抱き留めた後に抱き上げルパート様達から距離を取る。
「大丈夫か」
「……はい」
レオン様はほっとしたように微笑むのを見た時であった。ルパート様とグレイの悲鳴がその場に響き渡った。
「うわぁぁぁぁあっ」
「なんだ! やめろ! なんだ! うわぁぁ」
地面から巨大なツルが現れ、それらがグレイやルパート様、それに他の騎士達をもからめとり逆さ刷りにしていく。
レオン様は私を抱き上げて剣を構えた。
するとジョンが呟くように言った。
「来たか」
誰が? 私が首を傾げると次の瞬間、たくさんの妖精達が一気に空中に現れた。
一体全体どこから現れたのだろうかと私が目を瞬かせると、アカ、キイ、アオの三人が私の周りをくるくると回った。
「遅くなってごめんなさいね」
「女王様に確認を取っていたの」
「貴方のことを守ってもいいって。あと不可侵を破った国には制裁をって!」
「怒っちゃったよねぇ」
「妖精怒らせたら怖いのにねぇ」
「「「ねー」」」
妖精達の羽音がブンブンとうるさくなる。
「シャーリーは、森が燃えるところだったのを助けてくれたから」
「女王様がその心の優しさをお認めになったわ」
「だから妖精はシャーリーの味方」
三人の目が赤く点滅する。
「「「シャーリーをいじめる人は許さない」」」
グレイとルパート様が声をあげる。
「くそ! 離せ!」
「妖精は人間に関わらないのではないのか! それに、制裁とはどういうことだ!」
その言葉にジョンがうなり声をあげながら答える。
「人間とは本当にすぐに忘れてしまう生き物だな。フォーサイス王国とローレン王国にある聖域の森は不可侵。それは、妖精と聖獣である私が許さないからだ。妖精は怖いぞ。大地と直結しているからな。約束を破れば、ローレン王国の草木全てが枯れ果てることになる」
その言葉に、グレイもルパート様も驚いたように目を丸くする。
ルパート様は声を荒げた。
「嘘だ! そんなこと、どこにも書いていなかったぞ!」
その言葉にジョンはため息を浮く。
「王を引き継いだもののみに伝えられるのであろう」
二人は青ざめていく。自国の植物全てが枯れれば、甚大な被害が出ることは間違いがないだろう。
私はその様子を見て、それからアカ、キイ、アオに言った。
「あの……助けてくれてありがとう。でも、木が枯れるのは、木も可哀そうよ」
「「「え?」」」
三人は私を真っすぐに見ると、少しばかり動きを止める。
「それに、ロマーノ王国の人達は知らなかったのだから、罪のない人を巻き込んでは、いけないと思うの……」
せっかく妖精達が手を貸してくれたというのに、こんなことを言ってしまっても大丈夫だろうかと思いながらも、私はお願いをする。
「どうか、お願い。植物を枯らすなんて恐ろしいことは、しないでください」
頭を下げると、三人は集まってこそこそと喋る。
丁度その時、騒がしい足音が響き渡ったかと思えば、たくさんの騎士とその騎士から一歩前に王冠を付けた男性が現れた。
「妖精に……聖獣殿……森の民……ルパート……聖域の森へ侵入したのは、お前なのか……」
がっくりするように、男性はそう呟いた後、頭を深々と下げた。
「ローレン王国国王、ローレン・マシムと申します。我が愚息が、とんでもないことをしてしまいました。どうか、何でも致します。怒りをお鎮めください」
その体は僅かに震えており、事の重大さを理解しているのだろう。
私はどうなるのだろうかと見つめていると、妖精達が言った。
「枯らすのはだめで」
「たぶん国を亡ぼすのもだめ」
「なやましいものね」
ぞっとするような言葉が可愛らしい口から零れ落ちる。
生き物は自然がなければ生きてはいけない。
人間にとって妖精は最も敵に回してはいけない存在なのである。
するとジョンが妖精達の所へと歩いていき、小声で何かを話し始める。妖精たちは大きくうなずくと言った。
「この男の花嫁をちょうだい」
「聖域の森に連れて帰るわ」
「取引よ! その花嫁をくれたら、植物を枯らすのをやめるわ」
ロマーノの国王は、驚いたように目を丸くした後、深々と頭を下げて答えた。
「仰せの通りにいたします」
私は妖精達の方を見ると、ウィンクされる。
お姉様を連れて行く? そんなことをしても大丈夫なのだろうかと思っていると、私をレオン様が横抱きにし直すと言った。
「けがはないか?」
「は、はい」
「無事で、本当に良かった」
「レオン様。助けに来て下さって、ありがとうございます」
「いや」
私達がそんな話をしている横で、ジョンが口を開いた。
「今回の一件……本来であればロマーノ王国はありとあらゆる植物が枯れるところだったというのを念頭に置き、この者達の処分は行うように」
ロマーノの国王は青ざめた顔でうなずいた。
「もちろんです。……寛大な対応、痛み入ります」
グレイとルパートはすでに項垂れている。
私は、グレイに声をかけた。
「……あの、騎士さん達の体内の魔力を無効化する薬は作れますか?」
「あ……あぁ……」
「なら、ちゃんと作って、経過も見てあげてくださいね」
「……わかった」
まるで毒気を抜かれたように、項垂れながらそうグレイさんはいう。
するとルパート様が顔をあげて恐ろしい形相で言った。
「くそくそくそ! こんなはずではなかった! こんなはずではなかったのだ。聖域の森を得、フォーサイス王国までも手中に収めるはずだったのに! くそくそくそ!」
逆さづりにされながらそう叫ぶルパート様。その様子にロマーノ国王が声を荒げた。
「強欲者め! そのような野望抱かねばお前が次期国王であったものを! 聖域の森の不可侵を犯したお
前を許すことは出来ぬぞ!」
「そ、そんな父上!」
妖精達がパチンと指を鳴らすと、地中の中へと木の根が戻っていく。吊るされていた人々は地面に落ち、ロマーノ国王の騎士達に連れられて行く。
私達についてロマーノ国王は何かを聞きたそうなそぶりはしたものの、状況から言って聞ける雰囲気ではないと判断したのだろう。こちらに深く頭を下げた。
私の代わりにジョンが、ロマーノ国王にグレイに騎士達を治療させるように話を付けてくれて、私はほっとしたのであった。
「ロマーノの王よ、また来る。その時は、しっかりと事の経緯とまたそやつらの処分についても教えよ」
「はっ。もちろんでございます」
「あぁ。妖精達の言う花嫁をもらいうけよう」
「す、すぐに連れてまいります」
そう言うとロマーノ国王は騎士に命じた。
お姉様は未だに意識がないようで、騎士に抱きかかえられて連れてこられた。
「俺が運ぶよ」
ルッソさんがそう言って前に出ると、騎士からお姉様を受け取り、抱き上げるのではなく担ぎ上げた。
「よし、行けるぞ」
ジョンがその場にいる皆に向けて言った。
「聖域の森に、次……侵入した場合は容赦せぬぞ」
ロマーノ国王はその場に跪いて何度もうなずく。
「さぁ、帰ろう」
レオン様にそう言われ私はうなずく。
ジョンの背中に乗った私達は、聖域の森へと向かって走ったのであった。
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