34話
「はは。俺を睨みつけてくる女というのは珍しい。女性にこれほど興味を抱くのは初めてだ」
「興味を持っていただかなくて、大丈夫よ」
顔をそむけると髪の毛を撫でられてぞわりとする。
「ふふふふ。いいなぁいいなぁ。そうだ。せっかくだから、我が国の衣装に着替えようか。その格好だと、目立つからな」
「私は貴方の着せ替え人形じゃないわ」
「リリーがどうなってもいいの?」
「……わか……ったわ……」
お姉様を盾に取られては、何もできない。もどかしくて私は拳をぎゅっと握る。
私はどうにかして逃げる手段を考えなければと思う。
ただ、魔法植物で匂いの狼煙をあげられた。それだけでもよかった。
その後、私は別の部屋へと連れていかれると、その場に何人もの侍女が現れ、身支度を整えられ化粧を施されていく。
こんなにもたくさんの人に身支度を手伝われたのは初めてであった。
「殿下、仕上がりましたので、私達は下がらせていただきます」
侍女はそう言うと、ルパート様の前に私を置いて行ってしまった。
煌びやかな衣装に身を包んだ私を、嘗め回すように見ると呟いた。
「綺麗だな」
「え?」
「うん。綺麗だ。ふーん……いいな」
自分に向けられる視線が、こんなにも怖いと思ったのは初めてであった。
ここから今すぐにでも逃げ出したい。
その時、先ほどの騎士の一人が部屋に入ってくると告げた。
「グレイ殿は無事です。リリー王女様は部屋を移動した後、動揺しているようだったので、薬を処方してもらい現在は眠っております」
「お姉様は無事なの?」
私がそう尋ねるけれど、騎士は何も答えてはくれない。
その代わりにルパート様が言った。
「リリーは今は大丈夫なのだろう?」
「はい。グレイ様も看病してらっしゃいます」
「ふーん。だがグレイには早急にこちらに来るように言ってくれ」
「はい。あと……」
ちらりと騎士が私を見る。私に聞かれたくないことなのだろう。
「いい。話せ」
「ローレン王国内で……植物が枯れた事例が現在多発しています。また、巨大な獣を見たとの情報も入っております」
「……ふーん。植物が枯れたか。どうせ、やつらの悪あがきだろう」
「ですが、植物が枯れた場所と巨大な獣が目撃された場所は別であります。……国王陛下が聖獣と妖精が
怒っているのではないかと危惧しております。その為、何か要請を怒らせることを誰かがしていないか、調査を始めたようです」
その言葉に、ルパート様の表情が曇る。
「くそ……父上に見つかれば、聖域の森を侵略することを反対される。気づかれる前に侵略し終えていたかったのにな。それで、聖域の森の方がどうだ」
「一時捕らえていた森の民ですが、奪還され、その後の行方は分かっていません。森自体は現在仲間が掌握中です」
「そうか。はぁぁぁ。こんなことなら森の民を皆殺しにしておけばよかったな。とにかく、父上に気付かれる前に、聖獣も処分しなければな」
「聖獣ですが、目撃情報によると、こちらの離宮へと近寄ってきているとのことです」
すると、ちらりとルパート様が私を見た。
「こちらに? 場所が何故分かった……そういえば、シャーロット。あの時、何かしていたな」
何も答えずに私が居るとルパート様が私の頬に手を当てて言った。
「いいか。俺の言葉一つで、お前の姉の命が消えるということを、もっと理解しろ」
ぞっとする声色に、私は震えそうになるのをぐっと堪えた。
「魔法植物を使い……私が、ここにいると知らせました」
「……はあぁぁぁ。だが、まあいい。それならば迎え撃てばいいだけだ。内密に騎士達の1隊を動かすぞ。いいか」
「はっ。すぐに準備してまいります」
「あぁ。極秘通路を使ってこちらの離宮へ招集しろ」
「かしこまりました」
騎士は走って出ていく。
ルパート様が口を開いた。
「これから、君が俺に逆らえば、姉の体に一つずつ傷をつけていく。いいな」
「……はい」
「色々と君に聞きたいこともあるが、それは聖獣たちを駆除してからにしよう」
嘘を言っている口調ではなく、本気だとそう伝わって来た。
恐ろしい。私の態度一つでお姉様が傷つく。
そんなことを絶対にさせてはいけない。
ただ、こんな男の言いなりにならなければならないのかと、私は憤りを感じて奥歯をぎりりと噛みしめた。
その時、他の騎士が走って部屋にやってくると言った。
「聖獣、また森の民と思わしき人物たちがこちらに向かってくる様子が目撃されました」
「はぁぁぁ。動きが速いな。分かった。迎え撃つぞ。急いでグレイも呼べ」
「はっ」
私は腕を引っ張られて、部屋の外へと連れ出される。
「さぁ、お楽しみの時間だ。飛んで火にいる夏の虫とはこのことだな」
楽しそうな様子のルパート様。
私は心の中で、助けが来てくれたとそう歓喜する。
怖いけれど大丈夫。そう思っていると、ルパート様が楽しそうな様子で口を開く。
「言っておくが、お前は俺の味方として俺の横に立つのだぞ」
「え?」
「当り前だろう? くふふふ。楽しみだなぁ。人をおちょくるのは」
性格が悪い。私は、心の底からそう思う。
「反抗したらわかっているな?」
「……はい」
向かった先は外の庭であった。
騎士達が集まり始めており、グレイもこちらへと急ぎ来る様子が見られた。
ブクマや評価いただけますと、飛んで喜びます!
どうぞよろしくお願いいたします。







