3話
レオン様が婚約者……。
何故なのかが理解が追い付かなかった私は、大きく深呼吸をするとソファに座りなおして考える。
たしかに、本来であれば一月前、私の成人の儀が行われる予定であった。そしてそこで国王陛下より婚約者が発表されると言う流れだったのだ。
だけれど、私が呪われたと言うことで婚約者を選ぶということすらなくなったと思っていた。
それなのに、今更どうして。
カーライル家の家系図や情報が出てこない私は、図書室へと足を向けることにした。
離宮の中の施設は全て素晴らしいものばかりだ。
図書館もしっかりと管理されており、たくさんの本が棚に並べられている。ただ問題なのは私が幼女姿で、高い位置の本を取るのが大変だということ。
本だなを行ったり来たりしながら王国貴族の家系図が載ったものと、カーライル家に関する本を選び、机の上へと積み上げていく。
そしておおよそ揃えたところで、読み始める。
こうした家系図や他家に関する本を読むことはこれまでなかったので、新鮮な気持ちで読み進めていたのだけれど、気になる箇所が見つかり始める。
どういうことだろうかと思いながら、本をぺらぺらとめくり、他の柱である公爵家についても調べ始めた。
「四つの公爵家……魔力の強さから、国を守る盾となり戦ってきた歴史がある……だけれど、戦のない時期でも……短命な者が……多い?」
どういうことなのだろう。
そう思いながらも、結局調べてもそれ以上の情報が出てくることはなかった。
ただ、私の婚約者に選ばれる何か理由があるはずなのだ。
「でもまぁ……決まったところで会えるわけでもないし……まぁ、いいか」
そう、結局のところ会えるわけではない。
私は呪われているのだから、わざわざ呪われている相手に会いにくることはない。
もしかしたら建前だけの婚約で、私が死ぬのを待っているのかな、なんてことも考える。
「はぁ……厄介ね……」
一応魔法植物の研究をしながら、自分の呪いについても調べていかなければとも思っている。
分かっていることは、体の年齢が五歳程度の幼児に変化していることと、その他体に異常はないということ。
だからこそ犯人の意図が分からない。
一体どうしてこの呪いをかけたのか。
リリーお姉様を五歳の姿にしてどうしたかったのだろうか。その謎は深まるばかりであり、あの男の正体もわからないままだ。
「はぁ……なんだかどっと疲れたわ。温室に行こう」
私は本を閉じると、机の上に本を積み重ねたまま図書館を出る。
机の上に乗っている本は、翌朝には魔道具によって元の位置に戻される。
北の離宮は本当に魔道具で溢れている。
本来はこのように魔道具は乱用されることはない。何故ならば魔道具は高級品であり、それを作るには大量の魔石が必要だからである。
だけど、きっと昔ここにはこれだけ大量の魔道具を導入しても惜しくないほどに、愛された人がいたのだろう。
だからだろうか、この離宮はとても美しい。
「いいなぁ。きっと、とても大切に、思われていたのね」
私みたいに、誰からも必要とされず、呪われたために厄介者として扱われたりはしなかったのだろうな。
過去のその人の恩恵をありがたく甘んじているのに、どこか嫉妬に似た感情が胸を渦巻く。
「愛されるって、どんな感じなのかしら」
自分には縁のないことだ。
ふと、足を止めると、鳥たちが中庭で楽しそうに鳴いている。
ひらひらと美しい蝶々が庭の花から花へと渡っていくのが見えて、私は小さく息をつく。
平和だ。
「私は、呪われて閉じ込められているのにね」
もし、呪われずにいたならば今頃は、私にも婚約者が隣になっていたのだろうか。
リリーお姉様のように、笑顔を携えることが出来たのだろうか。
私は歩き出し、それから温室へと向かう。
温室の扉を体を使ってぐいっと押してどうにか開けて、中へと入る。
この三か月、魔法植物に関する研究三昧を楽しんでいた。
ここには魔法植物についての文献もそろっており、勉強もし放題。
「……早く婚約解消となって、自由になるといいな……レオン様」
一度も会うことなく、この婚約は終わりを迎えるのだろう。
その時の私はそう思っていた。
だけれど、後日届いた手紙を見て、私は息をのむことになる。
「は? 会いに……来る?」
意味の分からないその手紙を、何十回とその後読み返すことになったが、その事実は変わらず私はしばらくパニックになって悲鳴を上げ続けたのであった。
読んでくださる皆様に感謝です(●´ω`●)
作者はポンコツなので、世間のゴールデンウィークを忘れていて、最初は9日くらいから連載しようかなぁなんて考えていたんです。
でも、( ゜д゜)ハッ!と気づきまして、急げ急げ!と連載の準備をしていました。
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