28話
どれくらいの時間がかったのだろうか。
「できた……」
私は大きく息をつくと、椅子にどさっと座る。
集中していたので疲労困憊であり、大きく息をつく。
窓の外を見ると、暗かった空が少しずつ明るくなり始める時であった。
丸一日、薬を作るために時間を費やしていたのだ。
私は大きなあくびを一つすると、出来上がった薬を眺める。
「これで……元に戻れる」
どのタイミングで薬を飲もうか。
私はそう思いながら、うとうととしていると、瞼を閉じた瞬間に、意識を手放していた。次に目を開けた時にはすでに太陽は高く昇っており、私は大きく背伸びをする。
そこでレオン様はまだ森の民の所だろうかと首をひねる。
それとも寝ていたから、起こさなかったのだろうか。
私は一度森の民の所へと向かってみるか決めると、その前にと湯あみを済ませたり食事を済ませたりしたのであった。
そこから森の民の所へと向かう準備をする。
私はリュックの中に、無効化薬と大人に戻った時用の為に服をいれた。
レオン様に大人に戻ってちゃんとシャーロットだと告げ騙していたことを謝ろう。
「よし、頑張るぞ」
気合を入れて私は扉をくぐったのであった。
太陽の日差しが痛い。さすがに日中の一番暑い時間だ。
ただ、吹き抜ける風は心地よく私はその風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「おかえり主」
「ジョン。もしかして、ずっとここで待っていてくれたのですか?」
扉の近くにはジョンの姿があり、私が現れたのを見てむくりと体を起き上がらせる。
「あぁ。待っていた」
「待たせてごめんなさい。いつくらいに返っておくか告げておけばよかったですね」
「いや、我にとっては長い時間ではない。のんびりしていたので問題はない」
その言葉に私はほっとすると、そういえばと尋ねた。
「あの、レオン様は扉を通って帰りましたか?」
「ん? いや、帰っていないぞ」
「そう……なんですね。メルバ様と話をしていましたが、何かあったのでしょうか」
「あー。ここ最近、森へ何者かが侵入した痕跡があってな。それをレオン殿に相談していたようだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。さて主、そろそろ向かうか」
「えぇ」
「せっかくだ。森を少し散歩しながら行こうか」
レオン様に正直に話をするとは決めたものの、私の心はまだ落ち着いておらず、ジョンからの提案を私はありがたく受けることにした。
「いいですね。そうしましょうか」
「よし、決まりだ」
そうしている間に、きっと心も落ち着くはずだ。
ジョンが身をかがめてくれて、その背中に私はよじ昇る。視点が高くなり、ジョンが駆けだした。
風がとても心地いい。
「ふふふ。早いはやーい!」
「よーし! もっとスピードをあげるぞ!」
「きゃぁー! ふふふ! はやーい!」
私達は風を感じながら森を抜け、そして丘の上にくると、ジョンが足を止めた。
「ここの魔法薬草も珍しいのが生えているが、採っていくか?」
「いいんですか? ふふふ! 採っていきます!」
ジョンは嬉しそうにしゃがむと私を草原で下ろす。
私は吹き抜けていく風の心地よさに瞼を閉じると、風に乗って、様々な魔法植物の香りがするのを感じた。
この聖域の森は、本当に魔法植物の宝庫である。
「ふわぁぁ。気持ちがいいです。ジョン、ありがとうございます」
「いいのだ」
優しい視線が向けられて、私はずっと気になっていたことを尋ねた。
「でも……ねぇジョン。どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」
魔力暴走を止めたから、というのも一つの理由だとは思うけれど、それだけではない気がするのだ。
私の問いかけに、ジョンは遠くを見つめると呟いた。
「ははは。……まぁ、お礼というのも本気だったが……そうだなぁ。実はな……かつて、友と約束したのだ」
「約束?」
「もし、扉を通って心根の優しい子が来たならば、どうか守ってあげてほしいと」
ジョンは私のことを見つめながら言った。
「そして、主が来た。しかも主は私を救ってくれた。だから、私は友との約束を守ろうと思った。守るには、主になってもらうのが一番いいのだ」
一体、ジョンの友達とは誰なのだろうか。気になり、私は尋ねた。
「……その友達の名前を……教えてもらえますか?」
「エレニカ・フォーサイスという」
エレニカ・フォーサイス。その名前を聞いて、私は驚いた。
「彼女も魔法植物が好きだったのだ。ふふふ。主によく似ている」
最初は驚きでいっっぱいだったけれど、その名前を聞いて、私の中で、点と点が繋がり線へと成っていく。
魔法植物がたくさん植えられている温室、その奥にある大量の魔法植物に関する記録。そして魔力抑制や増加による研究資料。
あの、魔力抑制剤の試験薬は誰のために作られたのか。
それが、私には今、分かったのだ。
「ジョンの為の、研究だったのですね」
「ん?」
私は次代を超えて、エレニカ様の願いを自分が届けられたのだと、そう気づいた。
「エレニカ様は、私と血縁のある方です。そして、あの魔力抑制剤を作れたのは、エレニカ様が残して下さった研究資料があったからなんです」
「エレニカの? ……それは……」
「エレニカ様は、ジョンの為にきっと研究をしていたのだとおもいます。ふふふ。貴方の為の薬だったのですね」
そう伝えると、ジョンが驚いたような顔を浮かべる。
「エレニカが……私の為に研究をしていたと言うのか?」
「えぇ。そうだと思います。ふふふ。納得がいきました」
だから、拒否反応もなくあの試験薬がジョンに適応したのだなと思った。あれから何度も薬をつくり直して、そしてこの前レオン様に使った試験薬にたどり着いたのだ。
「そうか……そう、か」
ジョンはそういうと、また遠くを見つめた。
エレニカ様を懐かしんでいるのであろうか。
「ありがとう……主。そなたに出会えてよかった」
「ふふふ。私もです」
私達は共に、微笑み合ったのであった。
息抜き短編上げました(*´▽`*) ちょっとしたお時間に読んでいただけると嬉しいです。
内容はないよう。
↓↓↓
『悪霊退散のお札いかがですかぁ』







