24話
「シャーリー……すまない。ここは?」
「近くの洞窟です。外は雨が降っていて動けませんし、今はまだゆっくりしていてください」
「そう……か……ありがとう……すまない」
そう言うと、またレオン様は瞼を閉じつつも、息をついてから話し始めた。
「……驚かせて、しまったな……」
「いえ……」
咄嗟にそう答えたけれど、本当に驚いた。先ほど対処が遅れていたらレオン様はここにもういなかっただろう。
そう思うとぞっとする。
「君に……話したいと言ったのは……このことだったんだ」
レオン様は、薄く目をあけるとことらを見つめながら言った。
「……私は生まれた時から魔力過多症であり、人よりも魔力が多く強い。戦場には有利だ。しかし、魔力に体が合わなくなり短命な者が多いのだ。シャーロット王女と婚約出来たのは、私がそのうち死ぬからだろうと思う」
あぁ、なるほどと、心の中で納得がいった。
ずっと疑問だったのだ。
カーライル公爵家という名家に呪われた紛い物の私が婚約出来るわけがない。
以前弟のアレックス様が公爵家を切り盛りされていると言うのは、そういう理由もあったからかとうなずける。
「私も死はだいぶ前に受け入れいていた。けれど、私のようないずれ死ぬ婚約者などシャーロット王女殿下には申し訳なく思い……せめて婚約者である時だけは誠実であろうと思ったのだ」
だから、呪われた私にも毎日のように会いに来てくれていたのか。
「そう、だったのですね。教えて下さりありがとうございます。でも大丈夫です。私きっと魔力を抑制する薬を完璧に完成させて見せますから! ただ、今は一時的な魔力の抑制しか出来ないと思うんです……どのくらいの期間抑制できるかは分からなくて……」
すると、下を向く私の頭にレオン様が手を伸ばし、優しく撫でる。
「諦めていた生への希望をくれて、ありがとう」
「あ……」
そうだ。レオン様だって怖くなかったはずがない。
私はレオン様の手をぎゅっと両手で握り返すと、告げた。
「絶対に、絶対に! レオン様の魔力、抑制してみせます。大丈夫です!」
そんな私にレオン様が優しく微笑む。
「ありがとう……シャーロット王女殿下……」
「え?」
次の瞬間、レオン様は瞼を閉じて眠ってしまった。
私の心臓はバクバクと音を立てる。
今、たしかに私のことをシャーロット王女殿下と呼んだ。
まさか。気づかれていた? けれど、いつから? いや、もしかしたら意識がもうろうとして言い間違えただけかもしれない。
ぐるぐると回る思考の中で、すやすやと心地よさそうに眠るレオン様を眺めながら私はもんもんとするしかなかった。
そしてしばらくするとジョンが来てくれたので、天候の回復を待ってからゆっくりと寝かせられる場所へと思い、森の民のところへと運んでもらったのであった。
本当は扉を通って一度帰ろうかとも思ったのだけれど、あちらへと帰っても、レオン様の体を私がベッドまで運べる気がしなくて諦めた。
空き家となっている一軒を借りて、そこにレオン様を寝かせていると、ルッソさんが果物をもってやって来た。
「聖獣様の主様、大丈夫ですか? 果物持ってきたんで食べてください」
「ありがとうございます!」
そういうと、ルッソさんは私の隣に腰を下ろし、果物を手渡してくれる。そして自分も果物にかぶりついた。
私は現物のままの果物を見て、ルッソさんのようにかぶりついて食べる物なのかと少し驚いた。
このような食べ方はしたことがない。
けれど、郷に入っては郷に従えというどこかの国の言葉がある。
私は同じようにかぶりついたのだけれど、果物の甘さに目を丸くした。
「甘い……ふわあぁ。美味しいです」
「そうだろう? 聖獣様の主様、なんか元気ないみたいだったからよかった」
歯を見せて笑うルッソさん。優しい人なのだなと思っていると、私のことをしげしげと見つめながら尋ねた。
「それにしても、めんこいなぁ」
「え?」
めんこいとはどういう意味だろうか。首を傾げると、ルッソさんの片方の手が私の方へと伸びてくると、髪を撫でようとしてきた。
けれど、私に届く前に、レオン様が勢いよく起き上がりその腕を掴む。
「いててててて」
「……触れるな」
鋭いレオン様の瞳がルッソさんを捕らえると低い声で言った。
「……二度目はないぞ」
ルッソさんは驚いたような顔をしてから、両手をあげた。
「わかった。だから、その殺気をしまってくれ」
レオン様は手を放すと、体を起き上がらせてから姿勢を整えると、私のことを抱き上げて膝の上へと乗せた。
「れれれれれれれ、レオン様?」
「ダメだ。ここにいてくれ」
寝ぼけているのだろうか。レオン様は私の頭にあごをのせると小さく息をつく。
「可愛らしいというのも大変だな。ルッソ殿。だめだぞ。この方は渡さない」
「……めんこいなぁって言っただけだろうが。嫉妬しすぎだろう」
「勝手に触ろうとするからだ」
「子どもの頭撫でようとするくらいいいだろうが」
「子ども? 子ども……子ども?」
やはり寝ぼけている。
私は、抱きしめられていると言うことにドキドキとしているというのにレオン様はよくわからないとでもいうように首を傾げる。
それから私のことを抱きしめたまま呟いた。
「次触れたらその腕吹き飛ばすからな」
「こええええ」
ルッソさんはそういうと、身震いしたのであった。
お寝ぼけレオンは、この時は意識が曖昧です(●´ω`●)







