22話
「それにしても、魔法植物が呪いを無効化する薬になるとはな。いや、そもそもこの呪いとはなんなのだろうか」
レオン様にとって先ほどの言葉は至極当たり前のことだったのだろう。
けれど私にとっては、自分を受け入れてくれてもらえたような、救われたような気持だった。
「シャーリーはどう思う?」
そう尋ねられ、私は顔をあげるとまた歩き出しながら答えた。
「そうですね。というか恐らくですが」
「あぁ」
「この呪いはそもそも、魔法植物を悪用して生み出されたのだと思います」
「ん? どういう意味だ?」
「呪いって何だと思います?」
「えっと、呪術的な、ものでは?」
「呪術的なものとは、それ自体が明確に認識されたことはないんです。未確認のもの。災いを起こしたりするもの。不吉なもの……そう言われているだけ。でも今回のものは違います。しっかりと魔法植物を利用し作られたもの。つまりこれは、人工的に生み出された呪いなのです」
「人工的に……生み出された」
「メルバ様のネックレスの中にはルピタ魔法植物に毒素を生み出させてしまうトーダ魔法植物と数種類の魔法植物が混ぜられていました。人工的に生み出された呪いというのは、つまり成分を合わせると毒素を生み出したり、異常な反応を生み出してしまうものなのだと思います」
「なるほど、そういうことか」
「そして、王女殿下にかけられた呪いも、おそらく様々な魔法植物を混ぜ合わせて作られた物です」
そう告げると、レオン様がゆっくりと深く息をつく。
「魔法植物は聖域の森に自生しているが、聖域故両国ともに不可侵の条約を結んでいる。また、他の国に属さない戦闘民族の森の民がいるめ密漁なども行えない状況。それ故に研究も進んでいなかった。それなのにもかかわらず、今、それを悪用した者が現れた。恐らくだが、呪いを生み出したのは同一人物と考えるのが妥当だろうな」
お姉様を狙った犯人と、メルバ様にあのネックレスを作った人が同一人物。
「王女を狙った理由はわからないが、メルバ殿のあのネックレスは、もしかしたら聖域の森を手に入れるために、森の民を滅ぼそうと画策した可能性はあるな」
ぞっとする。
しかもネックレスを渡した相手がルパート様だというのが恐ろしい。
リリーお姉様は、恐ろしい人と婚約してしまったのかもしれない。
そう、考え込んでいたのがいけなかった。
「まぁとにかく……シャーリー!」
「え?」
次の瞬間、私は足を踏み外していた。
考え込みながら歩いていたために、足元を確認するのがおろそかになっていたのだ。
私のすぐ横に、草木に隠れて分からなかったけれど崖があった。
しまったと思った、その時、私の腕をレオン様が引き、抱きこむ。
だめだ。レオン様を巻き込むわけにはと思ったのだけれど、レオン様が私のことをぎゅっと抱きしめた。
そして次の瞬間、私は意識を失っていた。
何が起こったのか分からなかったのだけれど、レオン様が自身の魔力を使ったのが感覚的に分かった。
そして、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
私は体に多少の痛みを感じながら、瞼を開けた。
体を起き上がらせてみても、怪我はない。ただ、周囲にレオン様の姿が見えない。
どこへ行ってしまったのだろうかと思い、私は立ちあがる。
どうやらどこも大きな怪我はしていないようだ。結構な高さから落ちたのにと思い、もしかしたら自分を庇ってレオン様が大けがを下のではないかと心配になる。
「レオン様! レオン様!」
大きな声を出して、名前を呼んだけれど返事はない。
どこにいるのだろうか。私は周囲を見回し、歩いていると、強い魔力を感じ、それと同時に風が吹き抜けていく。
「うわぁぁっぁぁぁぁっぁぁあ」
叫び声が響き渡り、私は急いで駆けだした。
風が強く、途中から一歩進むのにも力がいる。
「レオン様!」
なぜか、その中心にレオン様がいるような気がしたのだ。
眩しい程の魔力の渦がそこにはあった。
木々を薙ぎ倒し、魔力が渦を成して暴走をしている。
そしてその渦中にレオン様がしゃがみこんで悲鳴を上げている。
「うわぁぁっぁぁあ」
苦しそうに自分の体を抱きしめており、私はレオン様が魔力暴走を起こしているのが判った。
ただ、ジョンが起こしたものとは違う。
ジョンは魔力に呑み込まれて暴走していたが、レオン様は魔力を抑えようと必死に抗っているように私は感じたのだった。







