13話
「……私はな、生まれながらに、魔力が多いのだ。魔力過多症を知っているだろうか」
「魔力過多症? すみません。不勉強で、知らないです」
「あぁ。それはそうだろう。滅多にいないからな。魔力が常人よりも多く、戦闘に向いている。しかしなその弊害として、聖獣が起こしていたような魔力暴走を起こすことがあるのだ」
その言葉に、私はハッとする。
「もしかして、試験薬をご自分に使いたいということですか?」
「その通りだ」
私は慌てて薬を自分の後ろに隠すと言った。
「だ、だめです! 危険です! これは、人に試すように作っていませんから……どのような副作用が出るか分からないのです」
そんな私の様子を見て、レオン様はうなずきつつも、少し視線を下げて、呟くように言った。
「……シャーリーは魔力過多症の人間が、最後どうなるか、知っているか?」
「え?」
「……いや、いい。すまない。なんでもないんだ」
レオン様はそう言うと、顔をあげて笑顔で言った。
「忘れてくれ。さて、今日はこれが終わったらどうする? またジョン殿の所に行くのか?」
「えっと、はい。そのつもりです」
「ならば一緒について行ってもいいだろうか」
「もちろんです」
そう答えつつ、私はレオン様が少し落ち込んでいる様子なのが気がかりでならなかった。
何か言いたいことを言えないでいる。
そんな感じがした。
私は試験薬を洋服のポケットの中へと入れた。
これはジョンがまた魔力暴走を起こした時、止めるようにいつも持ち歩くようにしようと思った。
私とレオン様は魔道具の扉を通った。最近ではその扉の前で待っていたジョンと妖精達の姿が見えない。
「早朝に来た時にはいたのですが、今は居ないみたいですね」
「そうだな。じゃあ、せっかくだ、色々魔法植物を探し回ってみるか?」
「はい」
私とレオン様は並んで歩き始める。
近くに森があるので、そちらの方にも魔法植物を探しに行きたかったので、ついてきてくれるのはありがたい。
ただ、やはり先ほどのことが気になる。
ちらりと見ると、レオン様は周囲を気にしながら私のことを気づかい進んでくれているのが分かる。
森の入り口に来たところで、私はその森を見つめながら声をあげた。
「わぁぁぁ。すごいですね」
至る所に魔法植物が生えている。
しかも大きな蕾を付けて歌を歌っている花や、開いては閉じて、開いては閉じてを繰り返している葉っぱなどもあった。
初めて見る物も多い。
「すごいですねぇ」
「珍妙だな。私も、こんなにも多くの魔法植物が生えている場所は初めてだ。ここは……もしかしたら……」
「もしかしたら?」
「いや。また聖獣殿が来たら聞いてみよう」
「そうですね」
ここはどこなのだろうか。そう思いながら、私はカバンに入れて持ってきたスケッチブックを開いた。
「今日は採取じゃなくて記録を取って行こうと思っているんです」
「ほう。いいな」
「はい。知らない植物も多いので、帰ってから調べてみようと思いまして」
「それはいい考えだな。取ってきてほしい魔法植物はあるか?」
そう尋ねられて、私は近くの岩山の上にある魔法薬草を見てそれを指さした。
「あれが欲しいんですが……私が取りに」
「私が取ってくる。いつものように根から抜いてくればいいのだろう?」
「ありがとうございます!」
私が頭を下げてお礼を伝えると、レオン様は微笑む。
「わかった。ではすぐに採って戻ってくるからここでスケッチをしていてくれ」
「はい」
レオン様は岩山を登り始め、私は近くの岩に腰掛けるとスケッチを始めた。
知らない魔法薬草もたくさんあるのだけれど、不思議なことに、魔法薬草には独特な匂いがあることに最近気がついた。
一つ一つ異なりはするのだけれど、主となる匂いが同じというかなんというか。
私は持ってきたペンで記録を取っていっていると、不意に視線を感じた。
なんだろうかと思って周囲を見回すが、何がいるわけでもない。
気のせいかと思い、もう一度ペンを走らせた時だった。
「……子ども?」
「え?」
振り返るとと、そこに体に入れ墨を入れ、銀色の髪を一つに括った男の人が弓矢を構えて立っていた。
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