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【11/1書籍2巻&漫画1巻発売】呪われ王女は魔法植物を研究したい~公爵様が婚約者!?私、呪いで幼女になっているのですが~  作者: かのん
第一章

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1話

文字数多めです。すみませんー!


 時計の音が鳴り響く、城の一室。


 置いてあるものに華美さはなく、たくさんの本が並ぶその部屋は王室の女児が学ぶ場所であり、現在、王女であるリリーお姉様と私が席に並んで座っている。


 一つ年上のリリーお姉様は、背筋をすっと伸ばし教科書をぱらぱらと眺めている。


 私は休憩時間ということもあり、気になる本を手に取って席に着き開こうとしていた。


 けれど、それを黒髪に黒ぶち眼鏡をかけた老年の家庭教師、マイヤー先生に止められる。


「コホン。一体、何を読もうとしているのですか」


「……あの……魔法植物の本……です」


 私が読もうとしているのは魔法植物について詳しく乗っている図鑑である。


 休憩時間ならば何を読んでも良いはずだけれど、こちらをバカにするように笑った後マイヤー先生に本を取り上げる。


「まぁ、休憩中ではございますが、こちらの本は王女様には不必要でございます。王女様がこのようなものに興味を持つなど無意味です」


 きっぱりと告げられ、私は反論する勇気もなくうつむく。


 こうしたことはこれが初めてではない。


 王女とはいえ側妃の子どもであった私は、特に母が亡くなってからはぞんざいに扱われることが増えた。


 理由の一つとして、私が王族の色を有していなかったことが上げられる。


 王族に生まれた王子・王女共に、銀色の髪もしくは薄紅色の瞳を持って生まれる。


 だけれど私は金色の髪に青い瞳と、他国から嫁いできた側妃の母の色を濃く受け継いでいた。


 そんな私は王族としてちゃんと扱われることが少なく、使用人達にすら相手にされていなかった。


 やりたいと思ったことは、大抵王女様には不必要でございますと止められる。


 決められたことをただ決められたようにする日常。それが私の世界だった。


 すると一緒に授業を受けていたリリーお姉様が口を開いた。


「マイヤー先生、どうか本を渡してちょうだい。この子もいずれ分かる時がくるでしょうから、今は許してあげて」


 いつもはこちらに関心を示さないリリーお姉様の言葉に、私は内心驚く。


「ま、まぁ! リリー王女様がそのように言うならば、もちろんでございます! ゴホゴホ。申し訳ありません。少し空気が悪いようですので、入れ替えてもよろしいですか?」


 マイヤー先生はリリーお姉様のいうことは何でも聞く。だからこそ、お姉様からの言葉に驚いたのだろう。


 むせるように、咳き込んでしまう。それから窓を開けた。


 それから咳が落ち着くと、私に本を返し、その後はリリーお姉様の顔色を窺っていた。


 ちらりともこちらをリリーお姉様は見ないけれど、私の為に口を出してくれたそのことが、嬉しかった。


 家族だとはいえ母の違うリリーお姉様が私の為にそんなことを言ってくれたのは初めてだったから。


「ありがとうございます。リリーお姉様」


「……いいのよ。でもね、王女として恥ずかしくないようにしなくてはだめよ」


「はい」


 そう返事をした私は顔がにやけそうになるのをぐっと堪える。


 今まで私に見向きもしなかったお姉様が、私のことを助けてくれた。


 多分、お姉様にとっては、気まぐれ程度だったのだと思う。けれど私にとっては心が浮き足立つほどに嬉しい経験となった。


 だから、少しだけ欲張りになってしまったのだ。


 もしかしたらリリーお姉様とは仲良くなれるのかもしれない。


 そんな淡い期待を抱いてしまった。


 少しでもお姉様に近づきたくて、それから勉強や礼儀作法を頑張るようになった。


 するとあれだけ私のことを毛嫌いしていたマイヤー先生が、全問正解した私を見て少しばかり感心したように呟いた。


「さすがはリリー王女様の妹君でございます。ふむ。よく頑張っていらっしゃいますわね」


「あ、ありがとうございます!」


「さすがでございます。ごほごほ……失礼」


「大丈夫ですか?」


「問題ございませんわ」


 私は、初めて褒められたと言うことに驚きながらも喜びを胸に抱いた。


 寝る間を惜しんで頑張ってきてよかったと、私は隣に座るリリーお姉様にほめて貰えるのではないかと期待した。


「お姉様! 私」


 そう、声をかけようとした瞬間、机の上を、リリーお姉様が手に持っていた扇でパンッと乾いた音をさせて打った。


 空気がピンと張りつめるのが分かった。


 冷ややかな視線が私の方へと向けられる。


 あぁ。勘違いしてはいけなかったのに。お姉様を怒らせてしまった。


 それが私には一瞬で分かり、全身の血の気が引いていく。


「……マイヤー先生、言葉を気をつけてくださいませ」


 慌てた様子でマイヤー先生は頭を下げる。


「も、申し訳ございません。なんと失礼なことを」


「いいのですよ。誰にでも間違いはございます。ですが、王族の教育係には貴女様は不向きだったようですわね」


「リリー王女様! そんな……」


「さがりなさい」


 ぴしゃりと王族らしく言い放つその言葉には、迫力があり、マイヤー先生は唇を噛み、それから急ぎ机の上の荷物をまとめると部屋から出ていった。


 お姉様は立ちあがると、侍女達がお姉様の勉強道具を片付けていく。


「お姉さ……」


「気安く呼ばないで頂戴。はぁ……勘違いさせてしまったようだけれど、貴女と私とでは立場が違うの」


「あ……」


 はっきりとした拒絶の言葉に、私は手をぎゅっと握りしめる。


 怒らせてしまった。


 そう思いうつむくと、リリーお姉様が大きくため息をつく。


「……私は正当な王家の血統の王女。でも貴女は……違うでしょう? 貴方、自分が皆からなんて呼ばれているか知っているの?」


「え……」


「王族の紛い物。紛い物の姫君って呼ばれているのよ」


「紛い物……」


 顔をあげ、リリーお姉様をゆっくりと見上げる。


 美しい銀色の髪に薄紅色の、王家の色を濃く継ぐリリーお姉様からは気品が溢れ、その視線には嘲りの色が浮かぶ。


 お前は自分とは違うのだとはっきりと告げるその視線に、なんとおこがましい感情を自分は抱いてしまったのだろうかと恥ずかしくなる。


「申し訳……ありません」


「いいのよ。もう二度と、話しかけないでくれればそれでいいの」


 はっきりとそう言うと、お姉様は侍女を幾人も伴ってその場から立ち去っていく。


 私は、誰もいなくなった部屋で一人、静かに息をつく。


 時計の針の音が大きく響いて聞こえた。


「……リリーお姉様も……やっぱり私のこと……嫌い……よね……マイヤー先生には悪いことをしてしまった

わ……」


 私なんかが勝手に期待してしまったがために、マイヤー先生の立場を悪くしてしまった。


 何度も自分を落ち着けるように深呼吸を繰り返す。


 自分が家族から良く思われていないことも、愛されていないことも、今更の事実だ。


 それは覆しようのないことであり、自分に出来ることと言えば、これ以上王族の恥と思われないように勉学に励むことだけ。


「……せめて、これ以上、嫌われないように頑張ろう」


 私は、ハンカチで目頭を押さえ、しばらくの間、静かにそこでじっと動けなかった。


 ただ、その時の経験によって自分の立場というものが明確になった。


 早いうちにその事実に気付けて良かったのだと、今ではそう思う。


 目立たず、荒波を立てないように、ただ王女として恥ずかしくないように生きること。


 それが、私の運命なのだ。


 そう気づいてから、その後の三年間は弁えて生きてきた。


「よし、うん……この本も、全部覚えたわ……」


 十六歳になった私は、王女として恥ずかしくないように勉学に励み続けていた。


 大好きだった魔法植物については、今でも人目につかないように空き時間に調べたりしている。


 魔法植物は聖域の森で多くが育つらしく、他の土地に生えることは稀だ。それでもゼロではない。


 それらを集めるのは至難の業だったけれど、私の限りなく少ない趣味として頑張って集めた。


 ただ、それらを注文するたびに侍女達には嫌な顔をされた。


 一番上のアナスタシアお姉様はすでに他国へと嫁ぎ、十七歳になったリリーお姉様も婚約者との結婚の日時が正式に決まった。


 兄は二人いるけれど、ほとんど会うことはない。


「お兄様と会うのは、舞踏会の時くらいよね……まぁ、私は座っているだけだから、喋ったこともほとん

どないのだけれど……」


 王子は王女よりも大切な存在であり、妹であろうとも容易く会える存在ではないと教わった。


 それにしても、私は誰にも話しかけられない生活が長く続くがあまりに、一人でしゃべってしまうのが癖になっている。


 これは治した方がいいのだろうけれど、今の所不便はない。


「まぁ……誰にも迷惑をかけていないしいいかしら」


 今年の十六歳の成人の儀に合わせて私も婚約者が決められ、いずれ政略結婚するのだろう。


 それが王女としての最初で最後の役目。


 そして私が出来る唯一の家族に出来ること。


 結婚するにあたり、王女として恥ずかしくない知識や教養は網羅したつもりだ。


 あれ以来、リリーお姉様に言われたように紛い物の姫であることを自覚し、自分の立場をしっかりと弁えて行動するようになった。


 私は、王女と呼ばれてはいるものの、正式な血統の王女ではないのだから。


 そして、今日はリリーお姉様の結婚発表の舞踏会の日である。約半年後にはロマーノ王国で結婚式が行

われる予定となっている。


 私は支度を終えて一人部屋で待っていたのだけれど、ようやく案内の侍女が訪れてそれについていく。


 案内される間もずっと無言。


 私は独り言を呟きそうになってしまうのをぐっと堪えながら会場へと向かった。


 煌びやかな舞踏会では、王族は舞台上の席に座ることが決められている。


 私は侍女に案内されて席へとひっそりと腰を下ろす。


 その後にお父様やお母様やお兄様やお姉様がたくさんの拍手に迎えられて入室され、席へと着席される。


 私の扱いは、他の王族の方々とは全く違う。


 その後の時間は、私は王女として微笑みを携えて座っているのが仕事だ。


 基本的に王子は自由にダンスへと行ったり食事をしたりすることができるが、婚約者のいない王女は大

人しく席に座っているようにと決められている。


 リリーお姉様は主役であるから、婚約者様とダンスを踊ったり談笑したりという姿が見られる。


 幸せそうだった。


 美しい純白ドレスには、宝石がいくつもつけられている。


「リリー王女様のなんとお美しいこと」


「さすが正当なる王族の姫君ですわ」


「それに比べて……なんと卑しいのかしら。紛い物の姫君とはよく言ったものね」


「おほほ。本当に」


「けれど王族の席に座るというだけでも……ねぇ」


 ひそひそとした噂話にも、もう慣れた。


 私はそうした悪い声は聞かないように蓋をして、普通の会話にのみ耳を傾ける。


「リリー王女様のドレスはご婚約者様から送られたのですって」


「素敵ですわねぇ」


 今日はいつも以上にリリーお姉様が今日は嬉しそうに微笑んでいる。


 婚約者様は隣国の第一王子であり、ルパート・ローレン様という、優しそうな方だった。


 お父様とお義母様も今日はリリーお姉様の傍におり、誇らしげな表情でリリーお姉様を優しく見守る姿が見られた。


 羨ましいなという気持ちがちらりと過る。


 私も、あんな風にお父様とお義母様に微笑んでもらいたいな。


 今までにない幸せそうな笑顔を浮かべるリリーお姉様のその姿に、政略結婚もよいものかもしれないとそう思えた。


 舞踏会は恙なく進んでいき、平穏なまま終わるかと思われた時であった。


 会場内の灯が一斉に消えたのである。


 周囲は暗闇で包まれ、騎士達がすぐに動き始める。


「何事かしら」


「すぐに灯が付くでしょう」


 そんな声がざわざわと聞こえている。


 すぐに灯が付けられるだろう、危険などあるわけがないと、皆がそう信じていた。


「……え?」


 だけれど私はふと気づく。


 鼻先をかすめる香り。それは、私の好きな魔法植物の香りに似ている。ただ、魔法植物とはどこにでもあるものではない。だからこそ、こんなところにあるわけがない。


「何かしら……どこから……?」


 灯がつき、皆がほっとした時、私は立ちあがった。


 隣に控えていた侍女が驚いたように私に声をかける。


「王女様、お座りください」


 けれど、私はその声を無視して動き出した。


 直感的に、悪いことが起こるような気がした。


 王女の私が突然動き出したことに近くに控えていた侍女は目を歩くし止めようと声をかけてきたが、私は止まらず一直線にお姉様の元へと向かう。


 急がなければと焦るがあまり、名前をもう呼ぶなと言われたことも忘れて叫んでいた。


「リリーお姉様!」


 初めてこんなに大きな声を出した。


「お姉様! 危ない!」


 皆が私の方を振り返るけれどなりふり構っていられず、私はリリーお姉様を庇うように両手を広げてそ

の前に立った。


――――ピシャッ……。


 肌をひりつかせる液体を私は浴び、全身に駆け抜ける突然の痛みに耐えかねて私はその場にしゃがみこんだ。


「いっ……ぃ……たい」


 喉の奥から痛みに耐えかねて声が零れ落ちる。

 

 そして黒い煙が私を包み込み、立ち上った。


「きゃぁぁぁぁ!」


「な、何者だ!?」


「どこから現れた!?」


 黒いローブを身に纏った、仮面をつけた男がそこには立っており小瓶に入った液体をリリーお姉様にかけようとしたのである。


 だけれど、それを全身に浴びたのはリリーお姉様を庇った私だ。


「り、リリーお姉様、逃げて、ください」


 そう言って私はリリーお姉様に手を伸ばし早く逃げるようにと伝えた。


「い、いやあぁぁ。何!?」


 何か液体のかかった私を、化け物を見るかのような瞳でリリーお姉様が見つめる。


 そしてそんなリリーお姉様をルパート様が立ちあがらせると言った。


「リリー! 逃げるぞ!」


 ちらりとルパート様が私のことを見るが一瞬で興味なさそうに視線を外す。


「え? え? は、はいっ!」


 お姉様は婚約者様に手を引かれて、微かに頬を赤らめながら一緒に逃げていく。


 まるで、物語のワンシーンかのようだった。


 素敵な王子様に助けられるお姫様。そのような感じだ。


 まるで他人事のようにな感覚で、その後ろ姿を見送る。


 少しばかり寂しさのような悲しみが胸を過るのは、きっと烏滸がましいことなのだろう。


 伸ばしていた手が力を保っていられなくなり、空を切り、手は降ろされる。


 体中が痛くてたまらない。それは、絶望するには十分の孤独だった。


 仮面をつけた男は、それを見つめた後、ゆっくりと声をあげた。


「紛い物の姫が……邪魔をしてくれたな……」


 騎士達が駆けつけ、仮面の男を取り囲む。


 国王陛下がそれを見て声をあげた。


「何者だ! 一体何をかけた!?」


 仮面の男は腕をだらりと下げると、手に持っていた小瓶を地面へと落とす。


 それはコロコロと転がり、私の足に当たり動きを止めた。


「呪いだ。あぁ……残念……リリー王女を呪えないとはな……はぁ。失敗か……」


 焼けるような痛みを全身に感じながら、私は浅く呼吸を繰り返す。


 そんな私の方を憐れそうに見つめる。


「呪われて、可哀そうになぁ」


 ぎょろりとした男と視線が重なる。


 そして、一瞬の間の後、男は隠していたナイフを取り出すと両手に構えて、駆けだした。


 騎士達は突然のことに後れを取り、男は近くにいた貴族男性を騎士達の方へと投げ飛ばす。


「うわぁぁ」


「くそ! 取り囲め!」


 男は身軽にひらりと飛ぶと、舞踏会場の窓ガラスを割って外へと逃げる。それを追って騎士達が走っていく。


 私は肩で息をしながらそれを見つめていたのだけれど、視界が薄れ始めた時、国王陛下が声をあげた。


「あの黒い煙、呪いなのは確実だろう。王女を北の離宮へと隔離するのだ!」


「え? ……り、離宮?」


 北の離宮は王城からは少し離れた場所にあり、病を患った王族などが使用していた場所である。


「離宮って、まさか……」


「あぁ。幽閉っていうことだろう」


「たしかに、呪いが移ったら嫌だもの」


「それに、紛い物の姫君でしょう? リリー王女様がご無事で本当に良かったわ」


「紛い物が役に立ちましたな」


 こそこそとしたそんな会話がざわめきと共に聞こえてくる。


 一度そこへ入った者は死ぬまで出られないという曰く付きの場所だということは、貴族であれば皆知っている。


 そんな場所に私が送られる?


 思考が追い付かずにいる中、冷ややかな国王陛下の視線がこちらへと向けられる。


 そこには温かな感情などない。


「……お……国王陛下?」


 お父様とは呼べず、そう呟いた私の視線から、国王陛下は視線を逸らす。


「……はぁ。駒を失ったか。……まぁよい。紛い物の姫などと言われおって……王族の恥が」


 駒……恥……。


 その一言が、胸の奥へと突き刺さる。


「リリーが無事でよかったな」


「国王陛下……」


 もう一度そう呼ぶけれど、国王陛下がこちらを向くことはない。


 助けを求めた自分がバカだったのだと思いながら、先ほど逃げて行ったお姉様の背中を思い出す。


 婚約者様がお姉様を守るようにして逃げていた。


 あの方であれば、リリーお姉様を幸せにしてくれる。


 お父様の言うと通り、お姉様が無事でよかったのだ。


「良かった……お姉様、お幸せに」


 私の視界は暗闇に吞み込まれ、何も見えなくなる。


 体には痛みが走り、意識も朦朧とする中だったが、声だけはよく聞こえた。


 私はそんな中、足元に転がる先ほどの小瓶を掴み、握りしめた。


 切り捨てられるであろう私を、救うために手はずが整えられるかは分からない。なら、せめてこの手掛かりとなる小瓶だけは持っていきたい。


 ぎゅと握りしめた私だったけれど、そこからは視界も朦朧とし始める。


「……これは呪いだ」


「魔法使い様が来たぞ! え……対処できない?」


「……国王陛下から離宮へと指示があったが……」


「触りたくない」


「布に包もう。おい、逃げるな!」


 声だけがよく通って聞こえた。


 物のように、布でくるまれる。


 荷物のようにして運ばれる感覚は、惨めだった。


 けれどその時の私は、それに反論することもできない。


 体の中で唯一働いているのが聴覚だけだったのだ。


「……離宮か……ここだったら、被害も出ないだろうし……」


「……元々王族に本当に籍を置いていていいのかと言われる方だったしな」


「仕方ない」


「そうだな。リリー王女様が無事でよかった」


「本当にそうだな。紛い物の姫君にしては、役に立ったってことだろう」


「違いないな」


 笑い声が聞こえ、そして私は柔らかな何かの上へと下ろされる。


 布を外されていくのが分かるが、離宮であろうことの予想はついても、ここがどのような場所なのかが分からない。


 それなのに、何の説明もなく人の気配が遠ざかっていく。


 怖い。


 私は一人になったのだと言うことを悟った。


 先ほどまで聞こえてきた声は一切聞こえず、何の音もしない。


 ただただ、無音が恐怖だった。


 私の意識は、そこでやっと途切れた。


 もう少し早く、途切れていたら良かったのに……。


 そうすれば、人の悪意の声も聞かずにいられたのにと、私はそう思った。



 それから、どれくらいの時間がったのだろう。


 体が重たい。


 どれほど眠ったのだろうか。


 少しずつ自分の意識が浮上し始めるのを感じ、そして私はゆっくりと瞼を開けた。


 見慣れぬ天井。そして、見知らぬ部屋。


 視力があるということに、まずほっとする。


 とにかく状況を確認しなければと思い、起き上がろうとした私はそのままベッドの下へと転げ落ちた。


「痛い……何? ベッドが、高い?」


 どういうことだろうかと体を起き上がらせて立った時、異変に気がついた。


「え?」


 周囲の物という物が全て大きいのだ。


 一体何が起こったのか分からずにいた私は、近くにあった姿見に映る自分を見て、息をのんだ。


「え……」


 姿見に移っていたのは、十五歳の私ではなく、幼い五歳ほどの少女だった。


連載スタートしました(*´▽`*)

※WEBで更新し、ここから毎日更新、最終話まで投降します、途中で終わりませんので、ご心配されませんようにお願いいたします。

本日のみ12時に2話更新。明日からは朝6時と昼12時と更新です。


こちらの小説は6月2日より発売となります。同時にコミカライズもスタートです!

それに合わせまして、WEBでも連載していきたいと思います。WEB用はWEB用で書いておりまして、書籍版とは異なる箇所がございます。


WEBの読者様にもお届けできること嬉しく思います(●´ω`●

楽しく読んでいただけたら嬉しいです!

よければ作者の励みになりますので、ブクマ&お星さま★★★★★をぽちっとしていただけるとやる気スイッチに繋がりますのでよろしくお願いします。


新連載↓

転生天才祓い師は、今世は普通になりたい~3才幼女がんばります!~

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