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戦略

ごんっと鈍い音がしたと同時に、閃光が走った。突然の眩しさに思わず目を閉じる。

「な、何?」

何回か瞬きをし、後ろを振り返った。グレイヴが頭を振りながら、目をぱちぱちと瞬きをしてよろめいていた。一応、上手くはいったのか?グランツは鬼灯のような形をした丸いものに、針のような1本の棘が尻尾先に着いている。これをハンマーのようにぶつけられないかと思ったのだ。でも、こんな閃光が起こるのは想定外。ステラ姉が何かし……居ない。まずい。グレイヴの上にステラ姉が居ない。

「ふーん?面白いことをする奴だな。」

「す、ステラ姉!?いつの間に!?」

ステラ姉はグランツの上に乗っていた。ナイフを逆手持ちにし、うちに攻撃してくる。

「ほ、本物じゃないの!?」

「口よりも手を動かせ。」

振り落とさないと……いや、これはむしろチャンスかも。グランツ!尻尾で援助して!

わかった!

「知ってる?弓矢って遠距離だけの武器じゃないのよ。」

「ほう?」

うちは矢を持ってステラ姉に攻撃した。回避されてもグランツがすかさず尻尾で攻撃してくれる。でも、ステラ姉はドラゴンの上でバランスが悪いはずなのに、巧みな身のこなしで反撃してくる。すると、上からグレイヴがブレスを放った。

「グランツ!」

うちは鞍を掴むと、グランツが回転しながらブレスを回避した。その拍子でステラ姉がグランツから離れ、グレイヴに乗った。

遠距離でも近距離でもだめ。どうすれば……。

うちたちはグレイヴの猛攻を何とか回避しながら、ひたすら考えを巡らせた。

ねぇ。

なに?

光ってこれのことかな?

後ろが何かチカチカする。振り向くと、グランツの尻尾先が点滅していた。

え、あなたいつこんなこと出来るようになったの?

グレイヴにぶつけたときに、力を入れたらできたよ。

あの閃光はあなただったのね。

ねぇ、いいこと思いついたんだけど…いいかな。

何か作戦があるのね?

うん。ステラと空中戦に持っていけないかなって。

え?もう既に空中戦だけど。

そ、そうじゃなくて、グレイヴと引き離した状態の空中に持ってくってこと。

空中……。

うちはさっきのステラ姉がグランツに乗り、グレイヴがブレスを放った後のことを思い出した。

ステラがグレイヴと離れた時に、 ぼくらも離れるんだ。グレイヴはぼくが何とかする。近距離戦しか出来ないステラなら、弓矢を扱えるアデラだとチャンスだよ。

……あなたっていつから天才になったの?

えぇ?ぼ、ぼくが天才?えへへ。

行きましょ!

もう一度同じことをしようとしたが、さすがに同じ手には引っかからなかった。尻尾を頭にぶつけようとしても、グレイヴと尻尾の鍔迫り合いになる……すぐに押し負けるけど。

グランツ、誘い込むわよ!

どうやるの?

尻尾を光らせて教えるの!その後はうちの合図でうちをぶっ飛ばして!

わ、わかった。

どっから来る?かなり賭けになるけど、これが成功すれば確実。聞け、音を聞くのよ……鳥が羽ばたく音じゃない。ワイバーンが飛ぶ音と近い音。

うちは目を閉じて集中した。すると、大きな生き物が羽ばたく音が聞こえてきた。

今よ!

グランツが一瞬だけうちを浮かせたと同時に、まさかの思いっきり尻尾でうちを打った。

痛っったぁ!?

なんとか体勢を建て直し、真っ直ぐ突っ込んだ。すると、思った通り死角からグレイヴが姿を現した。2人とも驚いた表情をしていた。

うちの速度と、グレイヴの飛行速度なら行ける!

「なっ!」

うちはステラ姉をそのままの勢いでタックルし、空中に飛び出した。

「お前……。」

グランツ、信じてるからね。

ステラ姉はナイフを構えるが、攻撃される前に蹴って距離を取り、弓を引き絞った。そして、ステラ姉目掛けて矢を放った。すると、グランツがうちを拾ってくれた。

あれ……?や、やばくない?

この矢がもし頭に直撃でもしたら……しかし、そんな心配をよそに、ステラ姉は左腕を前にして直撃を防いだ。

「って、やば!このままだと海に!」

グレイヴは?いや、グレイヴが行っても辿り着く頃には一緒にドボンだ。

「……ん?え?」

影が何か頭上まで通り過ぎた。

「ステラ……姉?」

見上げると、ステラ姉が空を飛んでいた。さっきまで無かった翼が生えている。翼だけでなく、尻尾に角も。それらはグレイヴと同じ見た目だった。角と角の間には深紅色の結晶が1本突き出し、まるでグランツの角のように三本角に見えた。

「少々無謀だが、まぁ合格だな。」

一旦陸に降り立つと、ステラ姉のグレイヴと同じ部分と結晶は収納されるかのように消えた。ひとまず休憩することにした。

「えっと、それは?」

「エルテノ・レガーレ。ドラゴンとライダーの絆が限界まで高まった時に発現する力だ。こいつは、ドラゴンとライダーの力を足して、更に倍加されるんだ。その分、デメリットも多いがな。」

「そんなすごい力が……100年前は沢山いたんでしょうね。」

「いや……この力が発現していた者は、俺とダレスの2人だけだ。」

「え、そうなの?」

「あぁ。絆の形はライダーによって違う。教えられるもんじゃないんだ。……久しぶりに、使ったな。これ使っても……はぁ、聞こえないか。」

ステラ姉は腕に刺さった矢をなんのためらいもなく引き抜いた。血が流れ出る。

「えっと、ごめんなさい。」

「何に対して謝ってるのか知らんが、矢を当てた事に関してなら、俺がそれを使って攻撃して良いと言った。実戦なら、情けは無用だ。」

「そ、そうね……痛くないの?」

「別に、もう慣れっこだ。」

ステラ姉は鞄から何か液体が入った小瓶を出すと、傷口に液体を数滴垂らして包帯を巻いた。

「にしても、上出来だな。」

「え?うち?」

「あぁ。100年前に居たら、きっと優秀な金龍の乗り手として知られていただろうな。」

「そんなに凄いの?」

「ライダーは突っ走るやつが多い。あんたみたいに、戦闘の中で戦略を立てるやつは中々居ないんだ。同じ金龍の乗り手でも、土壇場で戦略を思いつくやつは少ない。」

「ありがとう。やったね、グランツ。」

うん!

「グランツのその光だが、恐らく魔法能力だろう。魔法能力が先に発現するとは、珍しいな。」

「魔法能力?」

「ドラゴンには3つの力が備わっている。炎ブレス、魔法ブレス、魔法能力の3つだ。」

うちはステラ姉からそれらに関して教わった。まず、炎ブレスは火炎放射、火球、爆炎球の3つの段階に別けられており、炎ブレスはドラゴンの基礎能力。魔法ブレスはドラゴンの体色と同じ色をしたブレス。炎よりも火力が高くて、相手か自身に追加効果を与える。グレイヴなら自身を更に強化するそう。そして魔法能力は補佐能力とも呼ばれていて、グレイヴなら姿を消せるという。

「あんたのお兄さんを助け出すまでには炎ブレスと魔法ブレスを出せるようにはしておけ。あと、あんた自身の魔法もな。それは時間がある時に俺が教える。」

「ありがとう。それで、これからどうするの?」

「お兄さんを助け出すには奴らの城に入らなければならない。だが、入り方が分からない。」

「入り方が分からないって?」

「そもそも奴らの領土であるウィケルは黒魔術によって空間が歪んでいる。その影響で城が隠されているんだ。」

「全部燃やしちゃえば?森なら燃えるでしょ?」

「馬鹿言え。確かに黒魔術はドラゴンの力で打ち消せる。だが、たったの2頭であの広さを燃やすのは負担が大きいし、何より、ダレスとガドルが黙っちゃいない。」

黒魔術ってドラゴンの力が有効なんだ……。

「そもそもあそこはただの森じゃなく湿地帯だ。それに全部燃やし尽くしてしまえば、環境が大きく変わる。」

「じゃあどうやって見つけるの?」

「それを探しに行く。」

「え〜?当てずっぽうってこと?」

「……元はと言えば、言い出しっぺが何も考えてないのが悪いんだからな。」

「うっ、ごめんなさい。」

「はぁ、まぁいいよ。頼れるのは俺しかいないみたいだしな。」

「やっぱり優しいのね。」

「……休憩は充分か?充分なら今からレイビン王国に向かう。」

「えぇ、もう平気。レイビン王国って砂漠よね!?いつか行ってみたいと思っていたのよね。」

「旅行じゃないんだからな。」

「分かってる。あ、グランツは大丈夫?」

うん。平気だよ。

「よし、行くか。」

「えぇ!」

ステラ姉はグレイヴに、うちはグランツに乗ると、一緒に飛び立った。

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