誕生
家に帰ってくると、荷物の整理を始めた。家族はまだ寝ている。
金の装飾諸々にペンダント、写真に地図、資料にお金。そして大きな金の石。さすがにこの石は大きすぎてすぐバレる。うちの宝箱にしまっておくことにした。今回の収穫はバレたくない。全て片してしまうと、眠りについた。
「ふわぁ。あ、お兄ちゃんおはよう。」
「おはようアデラ。よく眠れた?」
「ま、まぁ。」
「こら、嘘をついちゃダメだぞ?廃城に行ったんだろう?」
「い、行ってない。」
「僕はお兄ちゃんだぞ?いつも廃城に行った日は寝坊するだろう?」
「パパとママに言わないでよ。」
「はは、僕が今まで言ったことあるかい?」
「……たしかに。なんか安心した。」
「さ、朝ご飯の準備をしよう。」
「うん。」
うちらはリビングに向かった。ママは既に朝食を作り始めていた。
「変わるよ母さん。」
「あらいいのかい?じゃお言葉に甘えて。」
「今日は何を作ってたの?」
「今日はね、ガーリックトーストとグラタン、サラダよ。」
「分かった。アデラ、グラタン用の牛乳と、飲料用の牛乳、採ってきてくれるかい?」
「んー。」
バケツを持って家畜小屋に向かった。そこで牛から牛乳を貰って帰ってきた。そして調理は兄が、材料の用意や切るのはうちがやって朝食が完成した。料理を兄が運んでいる最中に、うちはコップに牛乳を注いだ。
「いただきます。」
家族皆でいい、食事を始めた。
「2人とも、いつもありがとうね。いつも美味しいわ。」
「あぁ。美味い。」
「父さん、母さんありがとう。」
「こんな子供たちに会えて私達は幸せ者よ。」
「僕も母さん達に育ててもらえて嬉しいよ。」
うちら家族はいつもこんな暮らしだ。うちも幸せだし、ずっと続いて欲しい。でも兄の考えはあまり分からなかった。多分、うちには血の繋がった本当の家族にあったことが無いからだと思う。お兄ちゃんの本当の家族ってどんな人達だったのかな。
朝食を終えると、パパは仕事に、ママは残りの家事を、うちらは自室でのんびりしていた。
「アデラ、廃城でいつも何を持ち帰ってるの?」
「お、お宝よお宝。」
「見せてよ。」
「え……それは。その。」
「言わないって。僕も気になるんだ。ほら僕、歴史も好きだろう?当時の国の暮らしとか気になるんだ。」
「約束よ。」
うちは地図を引っ張り出してきた。石のことは言わないでおいた。
「これ、大陸と城の地図?」
「多分。」
「凄いなー。城の人達は大陸の地理を把握してたんだ。」
「でもどうやって?」
「きっと、空から見たんだよ。ドラゴンに乗って。」
「……。」
「アデラがいつも言っていた旅に出たいって夢。僕は応援してるよ。」
「ほんとに!?」
「うん。母さんと父さんは僕に任せて、大人になったら行っておいで。」
「一緒に行かないの?」
「母さんと父さんを放ってはおけないよ。僕の分まで世界を見てきてよ。その地図を持ってね。」
うちは兄に抱きついた。
「ありがとう。お兄ちゃん大好き。」
「あはは、可愛い妹のためだ。」
それから1週間が経った。あの日から廃城には行ってない。厭世部隊に会ってしまったから。相手がどんな力を持ってるか分からない以上、もう迂闊に近づけない。
「ん、何の音?」
今は深夜。目を擦りながら周りを見回した。コツコツと何か音がする。
「う、ゆ、幽霊?」
まさか、きっとネズミとか小動物だろう。
ランプに火をつけ、辺りを照らす。何もいない。ベッドから降り、音のする方へ向かう。
「え、ここから?」
宝箱の中から音がしていた。恐る恐る鍵を挿して、開ける。
「何も無いじゃない。」
そうほっと安堵した時だった。
「わっ!なに!?」
今揺れた。石が、揺れた。一旦石を取り出してみる。気の所為か?いや、気の所為じゃない。微かに揺れている。地震……という訳でもない。この石が揺れてる。音もこの石から鳴ってる。息をするのも忘れて、石を見ていると、ヒビが入った。
「これ、石じゃない。」
卵だ。大きな卵。一欠片飛んだかと思いきや、一気に割れた。
「ワイバーン?リントヴルム?じゃない。」
中から黄金の体を持った生き物が産まれた。すぐに目を開け、うちの方を見る。4本の足に背中には鳥に似た羽の生えた翼、三本の角。尻尾の先は丸っこい物がついていた。
『爬虫類みたいな見た目で、四足歩行で、背中に大きな翼が生えてるんだ。』
「あなた、ドラゴン?」
金色の生き物は理解してないように首を傾げた。すると、左手の甲に頭を押し当ててきた。
「痛!」
痛みと共に、手が光出した。しばらくして光が消えると、手の甲にオレンジ色っぽい黄色っぽい小さな結晶が埋め込まれていた。
「な、なにこれ。取れない。どうしよう。」
すると、金色の生き物はキューキューと鳴いた。
「……あ、お腹すいてるの?ちょっとまってて。」
忍び足でキッチンに向かった。仮にドラゴンだとして、ドラゴンは何を食べるんだろう?やっぱり肉とか。でも肉は無いな〜魚ならあるんだけど。近くに池があるから。とりあえず魚を用意した。生の方がいいのか、焼いた方がいいのか。試しに両方用意してみる。
「はい。食べてくれるといいんだけど。」
金色の生き物は匂いを嗅ぐが、首を傾げるだけで食べようとしなかった。
「まじで?そういうのって本能かなんかで食べられるか否かは判別できるんじゃないの?それ、食べられるよ?」
ジェスチャーをしながら教える。そしてやっとどっちも食べてくれた。焼き魚の方が食い付きがいい。食べてる間、手に包帯を巻いた。
「この子、どうしよう。」
とりあえず、隠れて飼うことにした。
「はぁ。」
「どうしたんだい?そんなため息をついて。」
「いや〜?早く大人になりたいなーって。」
「大人になるのはあっという間だよ。えっと、この前言ってた一緒に行きたい旅人ってさ、どんな人なの?」
「なんかちょっと、狼みたいな気難しい人。でも、なんだか惹かれるの……かっこいいなって。また会えるかな。」
「かっこいい物好きのアデラらしいね。」
「ちょっと。」
「はは、僕も是非ともお会いしてみたいよ。あ、そういえば母さんからご近所さんに収穫したきゅうりのお裾分けをしてきてって頼まれてたんだった。ちょっと行ってくるよ。」
「うん。うちもお散歩に行ってくるわ。」
兄が家を出るのを見届けると、うちは金の生き物を連れて裏口から出た。
「見ててね。」
弓を構え、矢を打った。印をつけといた岩の真ん中に命中した。
「どう?凄いでしょ!」
そう声をかけた。金の生き物は理解してるのか分からないが、尻尾を振って目を輝かせている。
「金の生き物って言うのもなんだか味気ない……あなたの名前はそうね、キラキラしてるから、グランツ!」
何も理解してないような表情だった。だってずっと表情も変えずに目をキラキラさせて犬みたいに舌を出して尻尾を振ってこちらを見てくるんだもの。
「グランツ、あなたはドラゴンなの?お兄ちゃんがさ、ドラゴンをみたいって言うから、あなたが大きくなったら紹介しようと思ってるんだけど。って、言っても分からないか。」




