属性魔法
「いいのか?用が済んだらすぐ出ていくつもりだったんだが。」
「そうだな、では担当直入に言おう。デイサル山脈内部から、地下を通りなさい。ウィケルは外側だけ空間が歪んでいる。地下はその影響を受けない。」
「なんだって?本当なのか?」
「時折奴らの偵察に行くからな。信じて欲しい。だが、その道は採掘長の我が弟が仕切っている。どうにかして説得してはみるが……どうだかな。」
「ありがとう。」
「まぁ、やれるだけやってみよう。」
そう言うと、王は部屋を出ていった。それを見届けて少しすると、うちは思わず叫んだ。
「どうした?」
「どうしたも何も!なんなの?王様はまだしも、その弟の方!」
うちは思わず近くの机を殴りそうになったが、なんとか理性が引き止めた。
「あそこまでになったのは俺のせいだ。俺が王と色々と話をしている間に、イーサンが弟さんのグループと大喧嘩を始めたんだ。なんでも、俺に対する悪口が酷かったから我慢出来なかったって。」
ステラ姉が服を脱ぎながら言った。
「仲間とか、友達に対する侮辱なんてされたら誰だって我慢出来ないでしょ!?」
「あぁ。だが、殺すのはやり過ぎだ。」
「え、殺しちゃったの?」
「3人。今回でやっとデイサルディン王国との仲を取り持つことが出来ると思ったが、むしろ余計に悪化した。平和的な兄の一派と、復讐は絶対な弟の一派に別れた訳だな。それで、弟さんが王の兄になだめられて、指だけで許してやるって話になった訳だな。」
「なんで指……。」
「もう1人重傷を負った者の指が使い物にならなくなったからだな。」
ステラ姉は大きな矢が刺さった傷に薬をさそうとしたが、届かずため息をついていた。
「あ、うちやろうか?包帯も。」
「……はぁ。あぁ、頼む。5滴でいい。」
「え、こんな深いのに?」
「あぁ。ライダーは自然回復力が凄まじいからな。いざという時に取っておくべきだ。」
薬をさして包帯を巻いている間、ステラ姉は穴が空いた服を直していた。
「はい。他の傷はいいの?」
「ありがとう。いい。あのくらいなら自然治癒で治る。」
ステラ姉は直した服を広げて確認すると、納得がいったかのように軽く頷いて、畳んだ。そして用意されていた服にさっさと着替えてしまうと、ベッドに仰向けになり、軽く丸まった布で目を覆った。
「ねぇ、髪……良かったの?」
「別に。そろそろ切ろうと思っていたからな。まぁ、あの髪紐ごと燃やされたのはショックだったが。」
「何か思い出の品だったの?」
「……イーサンから貰ったものだ。」
「え、大事なものじゃん!」
「いい。俺たちはそれ以上のものを彼らから奪った。咎める義理は無い。」
「そ、そうかもしれないけど!」
悲しいじゃん……もう二度と会えない人からの贈り物なのに。
気づけばステラ姉は寝てしまっていた。しばらくのんびりしていると、お茶菓子を出された。あんなことがあったから毒でも入ってないか不安になったが、王直々の使いらしいので多分大丈夫だろう。
「普通に美味しい。柑橘系かな。」
「いたたたた……。」
「あ、ステラ姉おはよう。その、大丈夫?」
「あぁ。寝たら少し気分が良くなった。」
「無理はしないでよ?あ、ねぇ思ったんだけど、彼らに名前はないの?」
「ない。デイサル人は大体職名や地位名で呼ぶのが普通だ。」
「ふーん。もし弟が許してくれなかったらどうするの?」
「お望み通り指を切断して持っていくくらいしかないだろうな。」
「それは絶対ダメ!」
「冗談だ。さすがにやらんよ。痛いし、指無いと不便だし。」
苦笑いしながらそう言った。うちはムッとした。なんだかステラ姉が言うと冗談に聞こえないからだ。本当にやりかねない。
「じゃあどうしよう……そういえば蒼い炎を纏う怪物って何?」
「さぁ。ずっと見つかっていないということは、ある意味新種かもしれんな。いやそういえば……」
「なになに?」
「城にその生き物が描かれている絵画が飾られていたな……。」
「え、どんな見た目?」
「さぁな。その絵画も大きな蒼い炎が空を舞っているだけで、どんな見た目をしているのか分からなかった。」
兄がそんな特徴の生き物について、何か話していたような気がする。
『この大陸にはドラゴンに匹敵する、もしくはそれ以上のワイバーンがいるんだ。名前は…………そいつは凄く頭が良いんだ。そして…………だから、絶対に縄張りに近づいちゃダメだよ。』
もっとちゃんと聞いておけば良かった。
王からの吉報を待っていると、召使いが入ってきた。トレーを持っている。そのトレーの上には外に置いてきた武器があった。
「陛下が、奴らの拠点に潜入するなら必要でしょうとこれを。」
「すまない。」
「ありがとう。」
うちらは武器を手に取ると、召使いがさらに袋をうちに渡した。
「これは?」
「レトーラ女王様から弓使いのあなたにと。」
「なんだろう。手紙もある。」
中には、あの邪龍に効いていた矢が沢山入っていた。
『アデラ殿
渡しそびれてしまったものがある。奴らの拠点に潜入するのなら、きっと邪龍共を相手しなければならなくなるだろう。その時にこの矢を使え。この矢は話した通り邪龍共に効く。足りなくなったらいつでも言ってくれれば寄越そう。 レトーラ』
「ありがとうレトーラ。召使いさんもありがとう。」
「いえいえ。あと、私は召使いではなく郵便者です。」
そう言うと出ていってしまった。
「名前が無いなんて不便じゃない?それに、子供とかどうしてるのかしら?」
「子供とかちびっ子呼びだな。ある程度成長すれば青年呼びになる。」
「ふーん。」
数時間が経った。うちらは特に会話もせず、武器の手入れをしたり、地図を見ていたり、各々自由にしていた。しかし、それも飽きてしばらくぼーっとした。王からの吉報はまだ無い。
「……暇。」
「暇だな。」
「外に出ちゃダメ?」
「やめとけ。弟の一派から攻撃されるぞ。」
「そう。ねぇ、何かゲームしない?」
「何を?」
「……何か。」
「……考えてないんだな。」
「宝探しくらいしかしてなかったし。あと、矢を撃つ練習。」
ステラ姉は近くにあった机の上に顔を向けた。そこには『御自由にお使い下さい』と書いてある箱の中に、沢山の紙とペンが入っていた。
「そうだな……騎士団で流行っていたものがある。」
「お、なになに?」
紙とペンを取り出すと、そこに的を書いた。
「的に水を当てるんだ。真ん中が……そうだな、10点にしよう。」
「水って?」
「ん?あぁ、そういえば属性魔法を教えていなかったな。属性魔法を初めて扱う時は、呪文を唱える必要がある。水魔法なら、ヴォヴァハ。できるようになったら、後は頭の中で呪文を唱えればできる。」
うちはさっそく手を出して呪文を唱えた。さすがに1回で成功しなかった。
「水魔法はそんなに難しくない。数を重ねていればできるようになる。」
何回やっても出来なかった。
「何度も言ってると、ちょっと恥ずかしいな。ステラ姉はやっぱりすぐできたの?」
「いや?1番遅かったな。魔法はめっぽうダメでな、グレイヴと全然仲が良くなかったから、レガーレを扱えるようになるのも1番遅かったし。」
「不思議ね。今じゃ1番強いんでしょ?……ヴォヴァハ!」
すると、手から小さな水玉ができた。それが、まっすぐ飛んで行った。
「できたぁ!」
「おめでとう。属性魔法は使えば使うほど性質や威力が変わってくる。水魔法なら最終的に凍る。」
そう言ってステラ姉がやって見せた。水が着弾したと同時に、一気に凍った。兄が見たら、きっと『過冷却水だ!』って興奮していただろうな〜。
「おぉ〜。ってそれゲームできるの?」
「調整がまぁ面倒だが、できるだろう。」
調整できるんだ。
それからうちらはゲームをして待った。どちらも真ん中か、真ん中近くに当たっていた。
「上手いな。」
「でしょ?」
すると、何やら外が騒がしかった。
「どうしたんだろう。」
扉が勢いよく開かれると、そこには弟の一派が、多分金属を叩く用の金槌を持って立っていた。そして、何人かがうちらの肩や頭に乗っかってそれで殴りかかってきた。
「痛い!何すんのよ!」
「一体どういうことだ!」
「黙って着いてこい!」
うちらは顔を見合わせた。
「仕方ない。」
ステラ姉が先に行くと、うちも後に続いた。
「ねぇ、降りてくれない?重いんだけ...いった!」
「黙れ!」
外に出ると、王冠を被ったあの弟がいた。そして、王に仕えていた人や、庶民は弟の一派に捕まっていた。




