防衛
村に着き、グランツから飛び降りると両親を探した。この時間帯なら、パパが外にいるはずだ。
「パパー!」
「アデラ?……アデラ!」
「パパ!」
うちは思いっきりハグをした。
「無事で良かった。一体どうしたんだ?」
「うぅん。この村が危ないの!……うちのせいで。」
「そうなのか?あのドラゴン騎士団の方は?」
「レイビン王国で襲撃が起こったから、残った。ここはうちが守る。」
すると、村中が騒ぎになり始めた。
「見ろ!なんだあれは!」
皆が見る方を見ると、沢山の邪龍が見えてきた。レイビン王国で見たのと同じように、全員不気味な翠色の模様が身体中を走っている。数はレイビン王国ほどでは無いが、ここにとって、うちにとっては十分脅威だった。
あんなの……どうやって勝てっていうの?ドラゴンライダーになってまだ1週間も経ってないのに……いいや、やる。やらなきゃ。でなきゃ城になんか侵入できない。
グランツが近くに降りてきた。
ね、ねぇどうするの?
うちのせいでこんなことになって、ごめんなさい。お願いグランツ、手を貸して。
もちろん!
ありがとう。
うちはグランツに乗った。
「アデラ!」
「パパ?」
「待て、あんなの勝てるわけが無い。皆で避難するからお前は逃げろ。」
「パパ、うちはお兄ちゃんを助けるのよ。それに、ここが大好きなの。」
そう言うと、一直線にあの大軍へ向かった。あんなこと言ったが、実際かなり怖かった。
そして奴の目の前に来た。レイビン王国を襲撃してきたあの男と同じように、一回り大きな邪龍がいた。でも、他の邪龍と色が違った。深海のような青色をしていた。
「……え?あなたは。」
相手は、あのフクロウの面を着けた男だった。レトーラ女王が言っていた話の分かるやつとはこいつのこと?いや、それでも村に害を成す敵だ。
「小娘、1人か。」
「そうよ。」
どこから敵が来てもいいように、警戒する。するとあいつが軽く口笛を吹くと、たくさんいた邪龍が、あいつの中に吸い込まれていった。
「なんのつもり?」
「お前は、あの者についてどう思う。」
「あの者?誰のことだか知らないけど、あんたなんかに話すことなんかないわ。」
「ふむ、まぁいい。これも仕事だ、お前には死んでもらう。」
あいつは腰にかけていた鞘から不思議な形をした武器を抜いた。うちも弓をつがえる。
「え……うっ。」
なんだ?早い。あいつが居なくなったと思ったら、いつの間にか肩を斬られてしまった。痛い……けど我慢。
「反応が鈍い。もっと集中しろ。」
あいつ、邪龍から離れて攻撃してくるのか。かなり厄介だな。
「次は腕が無くなっていると思え。」
あんなに早いなら、首を斬り落とすことくらいできるはず。なのに肩だけ斬った挙句、猶予を与えた。そして何より、殺意を感じられない。殺す気が無いの?
グランツ、行くよ。
うん!
うちらは、あいつに突進するとグランツの尻尾が光った。そして、光に包まれている隙に背後に回ると、矢を射た。しかし、あいつは目を閉じていた。それなのに武器で矢を弾いた。
ダメか……邪龍って黒魔術の塊なのよね、じゃあ実質煙の塊?なら……グランツ、あいつの真下に来たら、そのまま真上にうちのことをぶっ飛ばせる?
え、えぇ?分かった。
というか、こいつ本当に強い!スピードが段違いに早すぎる。邪龍の背に居なくなったと思ったら、いつの間にか切りつけられてる。ステラ姉がいつか俺よりも強いヤツと相手をする時が来るって言ってたけど、今じゃん!矢も当たんないし。
グランツ、もう一度突進して。目の前に来たら尻尾を光らせて、真下に行くの。
分かった。
うちは、矢を撃ちつつタイミングを見計らうと、グランツがあいつに向かって突進した。そして作戦通り尻尾を光らせて、あいつが油断している隙に真下へ来た。
今よ!
ステラ姉との特訓で使ったあの技と同じように、グランツはうちを尻尾でかち上げた。そして邪龍を貫通し、あいつを空に投げ出した。
頭は面が着いてるからだめ、狙うなら首か心臓!
「ほう?ドラゴンを放っておいていいのか?」
ハッとし、ちらりとグランツの方を見る。グランツは邪龍に追いかけ回されていた。そして、今にも噛みつかれてしまいそうだった。
グランツ……。
気にしないで!多分……大丈夫!
グランツが何とか邪龍の背後に回ると、あいつが軽く口笛を吹いた。すると、邪龍の頭が体の中に吸い込まれると、そのまま反対側……グランツの方に大きく口を開けて頭が飛び出し、グランツの前足に噛み付いた。
「グランツ!」
グランツが悲鳴を上げる。
「ん?」
あいつが余所見をした。なんだ?村の方を見ている。見ると、別の厭世部隊が一直線に村に向かっていた。ま、待って……パパ!ママ!でも、グランツが!
「勝手なことを……死んだふりをしろ。」
「え?」
あいつはうちを武器の柄の方で思いっきり殴った。そのまま一気に地面に衝突してしまった。うっ……意識が朦朧とする。グランツは?グランツは既に地面に横たわっていた。いつの間にか邪龍はあいつを背中に乗せて村に向かって行くと、仲間と合流した。体がズキズキと痛む。
ライダーは耳がいい。アイツらの話が少しだけ聞こえてきた。
『何をしに来た。』
『テルス様、近くを通りかかったので助太刀をしようと。』
『指示もなしに勝手に動いたと?』
『い、いえ。良かれと思ったので、それに、この村はライダーが出たと情報が入っているので。これ以上出さないように…』
『ここはピク村だ。外の者はライダーにならぬ。』
『あのライダーは?』
『生まれはこの村では無い。それに、あいつはもう私が殺した。退くぞ。』
『はっ。』
あいつらがいなくなると、よろめきながら立ち上がった。痛い……。そうだ、グランツは?
アデラ、大丈夫?
後ろを振り向くと、グランツが血だらけの片足を上げて、少し跳ねながら歩いてきた。
あなたこそ!無事でよかった。
うちはグランツの鼻先に額をつけた。
一旦村に帰ろうと歩き出すと、よろめいて転んでしまった。
いった!
なんとか立ち上がると、突然体が浮いた。グランツがうちの洋服の襟を咥えて、背中に乗せてくれた。
グランツ……ありがとう。
えへへ。
空へ飛び立つと、村に帰ってきた。すると、村の皆が出迎えてくれた。
「アデラ!死んだかと思った。」
「パパ。えぇ、大丈夫。皆は無事?」
「あぁ。アデラのおかげだ。そしてドラゴンよ、娘を守ってくれてありがとう。」
「あ、紹介するの忘れてた。グランツって言うのよ。」
「そうか。グランツ、ありがとう。話したいことがたくさんあるが、その前に治療しよう。」
うちらは治療を受けながら、今までのことを色んなことを話した。
「いててててて。」
「よし、ひとまずアデラはこれでよし。あとはグランツなんだが、はぁ……まずいな、薬がもう切れそうだ。ちょっと待っていなさい、母さんに持ってないか聞いてくる。その前に、包帯だけ巻いておこう。」
「えぇ。」
しばらくすると、ママも一緒に出てきて、うちを思いっきりハグした。
「アデラ!あんた無事だったんだね!良かった。」
「ママ痛い痛い、痛いって。」
「おっとごめんね。薬ねぇ、商人が来てくれればねぇ。その商人ももう持ってるかどうか……。」
もしかしたらレイビン王国の人なら何とかしてくれるかもしれない。レイビン王国……?
「あっ!」
「どうした?」
「やばい、すっかり忘れてた!ごめんママ、パパ、感動の再会はこれで終わり!うちら、レイビン王国に助太刀に行かなくちゃ!」
「え、アデラ!」
「今度は絶対お兄ちゃん連れて帰ってくるから!」
そう言いながらうちはグランツに乗って空へ飛び立った。




