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油断

うちらは用意してもらった着替えを持って、お風呂にした。お風呂はとても心地よかった。ここが砂漠であることを忘れるくらいには。大浴場なのもあって、他の貴族達も入っていた。そういえば、砂漠にとって貴重な水を使って大丈夫なのかな?まぁ、多分大丈夫なのかな。

「ねぇお嬢さん?あなたドラゴンライダーなんでしょ?」

「えぇ。」

「ドラゴンってどんな生き物なの?」

やばい……ドラゴンライダーになりたてだから詳しいことはあまり分からない。

「ご、ごめんなさい。うち……私、最近ライダーになったばかりで、あまり詳しいことは分からないんです。ステ……シリウスなら分かると思います。」

「あらそうなの。残念。まぁ仕方ないわ。あと、そんなにかしこまらなくても大丈夫よ。私達は仲間でしょ?」

「ありがとう。」

レイビン王国のレイビン人。後頭部や手の甲には飲まず食わずでも生きられるコブがあり、足はラクダの足で手の指は6本。うちの知る人とは一風変わった一族だけれど、本当に良い人ばかりだな。皆優しくて、気さくで、ユーモアがある。うちは大浴場を通して、色んな貴族の方とお話した。でも、正直ステラ姉の居ないお風呂は少し寂しかった。はぁ、命を守るためには、嘘をつかないといけないってなんだか悲しいな。でも、仕方のないことなのか。ライダーは狙われやすいだろうし。特に今の時代は。

しばらくお風呂を楽しむと、部屋に戻ってきた。ステラ姉は既に帰ってきていた。レトーラ女王も一緒にいた。

「おぉ!お嬢さんおかえり。風呂、どうだった?」

よく見ると、レトーラ女王は酒を飲んでいた。顔が赤いから多分酔ってる。

「た、ただいま。えぇ。とても気持ちよかったわ。ところで、ステ……シリウスどうしたの?」

「入って来るなって言っただろ。」

「えっと?」

「なんだー?昔よく一緒に入ったでは無いか?何を今更そんな。」

「毎回やめろと言ってたぞ。」

「そうだっけか?まぁ女同士いいでは無いかー?」

「……は?今なんて?」

「んー?女同士いいじゃん?って話ー?」

「な、なんで……。」

「知ってたの?」

「いや、勝手に女にしてる。」

「え?は?」

「だって、サイズ感とか女みたいだし?玉無し竿無しって実質女じゃん?違う?それに、女ってことにしておかないと、あたしら一緒に入れんし。」

本当は一人称あたしなんだ。

「なぁシリウス〜、将来あたしの夫になっておくれよー。」

ステラ姉が飲んでいた酒を思わず吹き出した。

「こ、断る!というかレトーラ!飲みすぎじゃないか!?」

「まだ4杯目だぞー?」

レトーラ女王がステラ姉に寄りかかりながら酒を一気に飲み干した。

しばらくすると、レトーラ女王が先に眠りこけてしまった。それを召使いが連れて行ってくれた。

「ったく。あんなんで大丈夫か?いつか殺されるぞ。」

「ステラ姉がいるからじゃない?」

「……本当はあまりライダー以外の友を作りたくないんだ。」

「どうして?」

「先に死んでいくからだ。後から生まれたやつも、みーんな、先に年老いて死んでいく。悲しいのは好きじゃない。」

「……うちも。」

「さ、もう寝よう。明日はデイサルディン王国に行く。あそこはほぼ徒歩になる。力を蓄えなければ。」

「え?どういうこと?」

「空から行けば、最悪彼らに撃ち落とされるぞ。詳しくは明日話そう。」

そう言うとステラ姉はベッドで横になった。仕方ないので、うちも眠りについた。


窓から差し込む光に、思わず目を開ける。

「ん〜おはよう。」

「おはよう。」

伸びをし、薄目を開けると机にお茶が用意されていた。それを飲むと、目が覚めた。

「ステラ姉が用意してくれたの?」

「いや、召使いが。」

「そう、後でお礼言っておかなきゃ。にしても、久々にベッドで寝たわ。サイコーだった!」

「あぁ。俺も……100年振りかな。」

「よく腰痛めないね。」

「まぁグレイヴがいたからな。」

「あ、そうそう、昨日大浴場で色んな貴族の方とお話したのよ!凄く楽しかった!」

すると、ステラ姉がうちを睨んだ。なにか不味いことでも言ってしまったのか?

「……何を話した?」

「え、うちについて色々と聞かれたから、それは話したかな。」

「お前……何してんだ。王族以外の者とは関わるなと言ったはずだぞ!?まずい、まずい!」

「え、え?」

「出身地は!?出身地は話したか!?」

「は、話した。」

「デイサルディン王国に行くのは後だ!ピク村に戻るぞ!」

「ど、どういうこと?話が見えてこないんだけど。」

「奴らは、貴族の中にも平気で紛れ込んでいる。ライダーが出現した村を知ったら奴らは……。」

血の気が引いた。心臓が痛いほど鳴っているのが分かる。故郷が……。

「今度はなんだ?」

外が何か大騒ぎだ。嫌な予感がする。

急いで外に出ると、不気味な翠色の模様をつけた大量の邪龍がいた。

「乗り手がいない……ならどこかに幹部がいる。」

すると一段と大きな邪龍が姿を見せた。その邪龍にだけ、乗り手がいた。子供のように小さな男だった。

「どーもどーも、哀れな砂漠の低俗ども。」

あいつは嘲笑うかのように言った。

「ここにライダーがいるんだってね?残念だったね。ライダーなんか迎えるからこうなるんだよ。」

見ると、ステラ姉の手が微かに震えていた。

「そうだ、取引をしよう!ライダーとドラゴンの首を持ってきなよ。そしたら、この国を滅ぼさないでおいてあげるよ。」

すると、レトーラ女王が出てきた。

「ドラゴンライダーは我らの友。自分の国は、自分で護る!皆の者!行くぞ!」

その掛け声と同時に城の壁が大量に開くと、その一つ一つにクロスボウがあった。そして、一斉にそれが放たれた。なんと、あのクロスボウは邪龍に効いていた。ドラゴンの力でしか退けられないはずのに、どうやって?いや、それよりも……

「ステラ姉!一緒に戦わないと!」

ダメだ、完全に固まってしまっている。

「ねぇってば!」

すると、ステラ姉が突然拳を作ると、固く目を閉じた。そして、うちの方に向いた。

「ここは、任せろ。ピク村に行け!手遅れになる前に!……生きろよ。」

「え。」

「グレイヴ!」

何か言う前に、ステラ姉は低空飛行して飛んできたグレイヴにジャンプして掴むと、そのままあいつに向かっていった。

故郷が心配だが、レイビン王国を放っておく訳には……。すると、何かが肩に触れた。見ると、レトーラ女王だった。

「事情があるのだろう?案ずるな。ここは無防備のように見えるが、これでも何回か退けているんだ。」

「……ありがとう。グランツ!」

うちはグランツに飛び乗ると、急いで来た道を引き返した。

しばらく飛び続けた。今までは自分達のペースで飛んでいたが、今回はそんな暇などない。

猛スピードで飛んできたため、あっという間に村が見えてきた。良かった、今のところはまだ大丈夫そうだ。お願い、このまま何事もなく終わって……。

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