休息
「皆の衆、今日は一段と特別な日になるかもしれない。というのも、今日はドラゴンライダーが来てくれた!それも我が古き友がだ!ドラゴンライダーは我らレイビン王国の同盟相手、ダヴィンレイズ王国の騎士たちだ。」
レトーラ女王が立ち上がり、ワイングラスを高々と掲げると、他の貴族達も掲げた。うちらも同じことをしなくてもいいのか思わずたじろいだ。
「古き良き、高貴なる国、ダヴィンレイズ王国が滅びようとも、我らレイビン王国は仲間であり、友であり、喜んで協力することを、改めて誓おう!」
レトーラ女王が座り、貴族達もワイングラスを机に置くと、今度はステラ姉が立ち上がり、同じようにワイングラスを掲げた。余計に焦った。とりあえず貴族達の真似をしてワイングラスを掲げる。
「レトーラ女王陛下、及びレイビン王国に感謝の意を。我がダヴィンレイズ王国、ドラゴン騎士団の司令官としてこれから先も、ドラゴンと共にレイビン王国を守護することを、改めて誓おう!」
ステラ姉も座った。うちもグラスを置いた。これでいいのか分からないけど。
「さぁ、食事にしよう。皆、自由に食べてくれ。」
そう言うと、貴族達は中心にある料理を手に取り始めた。
「ありがとう。こんな堅苦しいことは嫌いだ。」
「ふっ、相変わらずだなレトーラ。」
「ところでずっと気になっていたのだが、そちらのお嬢さんは?」
「あぁ、連れだ。アデラという名で、彼女もドラゴンライダーだ。」
「よ、よろしく。」
「おぉ!女性がライダーとは!なんとも珍しいことが起こるもんだなぁ!シリウス殿の隠し子かと思って焦ったぞ。」
それを聞いたステラ姉は、一瞬だけ食器の手を止めたが、すぐに手を動かした。
「いや、そんな訳。」
「そっくりだったからつい、な。あぁ、そもそもシリウス殿は玉も竿も無かったな。」
「はは、まぁな。」
召使いが女王のそばによると、ヒソヒソと話しかけた。
「女王陛下、その、あまりお下品なことは……お控えいただけますと。」
「おっと、すまんすまん。」
ステラ姉……どうしたんだろう?
「それで、話したいこととはなんだ?」
「ジュンブレス王国の城に入りたい。」
「なぜそんな急に。」
「彼女の、アデラのお兄さんが捕まってしまって、助けなければならない。」
「助けないといけないほど重要な人物なのか?その人もライダーとか。」
「いや、頼まれたから助ける。それだけだ。それに、我が国の民だからな。」
「シリウス殿らしいな。だが、すまない。残念ながら城を探し出す方法も、入る方法も分からない。」
「そうか。ありがとう。」
「あとは、すぐ隣のデイサルディン王国だな。彼らなら何か知っているかもしれない。」
「あまり気乗りはしないな。」
「だろうな。彼らは気難しいし、炎を吐くドラゴンを嫌うはずだからな。」
「一体どうすれば……。」
うちの兄のためにここまで考えてくれるなんて……何も思いつかなかったことにとても申し訳なく思った。
「ふーむ。こうなると相手から聞き出すしか無いだろうな。」
「聞き出すって……アイツらがそう簡単に言うか?」
「そこだな。いや、待てよ?1人いる。話の分かるやつが。」
「どういうことだ?」
「確かフクロウのような面をつけていたな。我らも奴らに攻められることは何度かあるが、その面をつけた奴がいる部隊を追い返した際に、何かしら助言を残すんだ。それが本当かどうかは分からんがな。」
「フクロウのような面……あいつか。一体、どんな助言を?」
「次どういう形で攻めてくるかとか、どこに隙ができているのか……とかだな。」
「なるほど。」
ステラ姉は何か考え込んでいた。
「まぁ、ひとまずデイサルディン王国に行ってみることにするよ。」
「もう行ってしまうのか?」
「明日には出発する予定だ。」
「もっとゆっくりしていけばいいのに。」
「そうしたいのは山々だが、彼女のお兄さんが殺されてしまう可能性があるとな。早い内に行動したいんだ。」
「そうか。いくらでも帰ってきてくれて構わない。いつでも歓迎する。」
「ありがとう。」
「そういえば、ドラゴン達はどうした?」
「念は送ったから、来ていると思うが。」
「おぉ!見てもいいか?」
「あぁ。」
食事を終えると、厩舎に来た。ラトゥラ達が大きなグレイヴを恐れて隠れていた。グランツは、ちょっかい掛けられてたけど。
「グレイヴ!100年前と比べて倍近くでかくなったんじゃないか!?」
「昔は普通に飛び乗れるサイズだったんだがな。今は一旦翼を降ろしてもらって、そこから上げて貰わないと乗れん。」
グレイヴはレトーラ女王を見て、嫌そうな顔をしていた。
グレイヴどうかしたの?
こいつがガキの時、ベタベタと勝手に触るわ、背中に乗るわで声もうるさいから嫌いなんだ。
「そしてそこのちっこいの!ラトゥラと同じくらいじゃないか!可愛いやつだなぁ!」
今度は半ば興奮気味でグランツに目を向けると、頭をゴシゴシと撫でた。グランツはおどおどしていたが、目をつぶると、急に舌を出して尻尾を振りながらゴロンと床に転がった。
「お?もっと撫でて欲しいのか?犬みたいなやつだなぁ。」
グレイヴはそんなグランツを見て呆れ返っていた。
「厩舎も暖かくしてあるから、ゆっくり休めるはずだ。さぁ、夜の砂漠はオアシスでも冷える。中に入ろう。風呂もあるぞ。」
そして、空き部屋に招かれた。少し小さめの部屋で、床には豪華なカーペットが敷かれ、模様の描かれたベッドが2つ、壁には何か歴史っぽい壁画が描かれていた。全体的に部屋は暖色系なため、身だけでなく、心も温かくなった。
「なんか凄く疲れた。」
「だろうな。王族相手は慣れなきゃ疲れるもんだ。」
「あの食事前の声掛け?よくできるわね。うち全然分からなかった。」
「分からなくてもいいさ。俺は王族では無いが、司令官という立場だったから知っていただけだ。」
「ねぇ、レトーラ女王との関係は?いつ知り合ったの?」
「レイビン王国とダヴィンレイズ王国は古くからの仲だ。お互い尊敬し合い、友として関わっている。だからお互い招いて、招かれてが当たり前なんだ。」
「へぇ〜。」
「基本的には後継者がその王国に訪問し団らんする。ダヴィンレイズ王国の王子は王族の中で唯一ドラゴンライダーとなった。それで、一般の歩兵や騎士たちが着いて来られないということで、王子のライダーとしての先生だった俺がお付の騎士として採用された。」
「それで知り合ったのね。」
「あぁ。王子と国王が会話している中、俺はただ傍に立って護衛するだけだった。それで、当時王女だったレトーラに絡まれたんだ。まだ子供だっていうのに、強気で少々乱暴で、汚い言葉を連発する面白い子だよ。それも王族という立場で。」
「ふーん。」
扉がノックされ、召使いが入ってきた。
「お風呂の用意が出来ました。大浴場とおひとり様用のお風呂がございます。どちらにいたしましょう?」
「うち大浴場にする。大きなお風呂!夢見ていたのよね〜。」
「俺は1人用でいい。」
「かしこまりました。では、失礼いたします。」
召使いが出ていった。
「1人でいいの?」
「ここではいつも1人だ。その方が楽。」
「えぇ?一緒に入れると思ったんだけどな。」
「はぁ。ここでの俺は男だ。」
「でも、本当にステラ姉は女性じゃないの?」
「俺はライダーだ。」
「うちもよ。」
「……昔は、それが当たり前なんだ。それに、1人しかいない女ライダーなどバラしてしまえば速攻身バレする。レイビン王国にも奴らが擬態している以上、隠さねばならない。だから、偽名だって使う。シリウス殿……とな。さ、風呂にしよう。体も冷えてるだろ。」
「え、えぇ。」
「すまないな。俺自身、1人の方が好きなんだ。それに昔と変わらなければ、どうせレトーラが勝手に入ってくるだろうしな。」




