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星空

作者: 桃缶


ねぇ、晴くん。

今夜は流れ星が見えてるらしいよ。


寝転んだベッドの上で開いた携帯のディスプレイに表示されたその短い文章に、ふっと頬が弛んだ。

風呂から上がったばかりでぽたぽたと水滴が落ちる髪の毛からタオルで適当に水気を取りながら、返信メールを作る。

手を伸ばしてカーテンの裾を少し持ち上げて夜の空に目を凝らしたものの、星どころか月すら見えない。

その代わりに街灯の光に浮かび上がる無数の銀の筋。気付いた途端聞こえ始めた雨の音。

夕方から雲行きが怪しくなってきていたのは知っていたが、一体いつ降り出したのだのだろう。全く気が付かなかった。


残念。

こっちは雨だよ。


送信しましたというメッセージを確認してから携帯を閉じる。

そのまま何となく画面を閉じたり開いたりを繰り返しながら、彼女の返信を待った。


メールの相手である奈菜は高校時代に付き合い始めた一つ年下の俺の彼女だ。

今年大学受験である奈菜と、大学進学のために家を出て県外で一人暮らしをし始めた俺とは、もう半年以上会っていない。

繋がりは唯一メールだけ。


今でも俺のことを好きなのか。

そんなこと、怖くて聞けない。

こうして奈菜から他愛もない内容のメールが来る度に一人で安堵の息を漏らすのだ。


携帯が手の中で震える。開いて画面に表示された文章を確認して、俺は眉を顰めた。


知ってるよ。


……知ってるってどういう意味?


「っ……」


またもや携帯が手の中で唸り声を上げて、予想だにしなかったそれに驚いて首を竦める。

液晶に表示されたのは彼女の名前。今度は何故か電話の方だった。


「もしもし」

「もしもーし。こんばんは、晴くん」

「こんばんは。何で途中で電話になったの?」

「え?なんとなく、かな」

「ふーん。ねぇ、さっきのメールどういう意味?」

「どういう意味って――――っくしゅん」

「何、風邪引いたの?」

「うん、そうかもー……」

「受験生なんだからもっと体調には気を付けないと駄目でしょ」


「だってー、こんなに降ってるなんて思わなかったんだもん」

「……え?」

「傘なんて持ってなかったから全身びしょびしょだよ」


どうして雨が降ってる?

流れ星が見えるんじゃないの?


思い返してみればどことなく違和感を覚える文章。

“見えてるらしい”って何。


「ねえ奈菜、今どこにいるの?」


半ば確信を持ってそう聞けば、奈菜はおどけた口調で、さあどこでしょうと言って笑った。

刹那、部屋にチャイムの音が鳴り響く。


ベッドの上にそのまま投げ捨てた携帯は、その日画面が閉じられることはなく、翌日バッテリー切れで発見された。


結構修正しました。

気に入っていただけたら幸いです。

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