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第二章 あなたはヒーローですか(またはあの子を救えますか)⑦

 ぱちぱちぱち。

 髪に砂が付くとか、そんなことも考えずに倒れこむ麻琴を、波奈がのぞき込む。


「おめでとう、今度は見てたよ」

 見ててほしいとか、別に頼んでない。

「やった……ね……? なんか怒ってる?」


 自分のことのように嬉しそうに笑う波奈。ちょこんと麻琴の隣に座っている。

「…………」

 泣き止まない赤子相手みたいな顔を波奈はしていた。


 麻琴は両足に力を込めて、上半身をいきなり起こした(流血は収まっていて、傷はなくなっている)。いきなりの体勢変更に、波奈が尻もちをついた。

「君はひどいよ!」

 麻琴は波奈の左手を掴んでそういった。

「突然いなくなるし、僕には連絡一つよこさないし、そのくせ幼馴染とはずっと連絡とってたみたいだし! 再会したと思ったら、自分は怪人を倒してすっきりした顔してるし! 僕がどれだけ……」


 ひっく、ひっく、と麻琴は泣き出していた。こぼれた涙が、地面にしみを作る。困ったように波奈が右手を動かしているのが見える。

「えっと、その、それは……」

 歯切れの悪い返事だ。続く謝罪の言葉を遮って言う。

「一ノ瀬波奈!」

「はっ、はい……!?」


 ここで名前を呼ばれるなんて予想外だったようで、びっくり仰天している。

「君と別れてから。僕のヒーロー活動は、結局のところ悪い影響しか与えなかったんじゃないかって思ってた。けど、そうじゃなかった」

「あの奇想天外な活動は、楽しかったよ」

 波奈が笑う。

「僕も楽しかった……だから、寂しかった」

 最後の言葉は、ほとんどかすれて声になってなかった気がした。けれど言葉は届いていたようで、波奈の頭が麻琴の肩にぶつかる。




「わたしも、寂しかった。雛田麻琴くん」

 肩に乗った体温と、髪の毛のちくちくしたこそばゆい感覚。

 なんだかバカップルみたいなことを夜の公園でやっていて恥ずかしい。

 

 けれど、もう少しだけ、このままで。

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