4.最初の相手と今日の相手(1)
最初にこんな経験をしたときとは、あまりにも違っている。携帯電話の画面の中で、付き合い――と言っていいのかどうかも怪しい関係――の誘いから言葉のやり取りを経て、実際に会う約束にまで至るという流れは同じだったとしても。何しろその時には、僕は自分がこれからこの相手、この人とどうやって時間を過ごすのか、全く理解していなかったのだから。
もちろんその相手は別の人だし、例えば服装も全く違う。肩口に小さくフリルのついた黒いブラウスに明るく淡い緑色の長いスカートというその姿を見て、この人はこれから何をするつもりなのだろうと思ってしまった。それでも話しているうちに、自分の緊張や不安が大げさだったと感じられ始めたけれど、結局はほとんど勘違いのようなものだった。例えば二人でビジネスホテルのフロントに並んでいたとき、どう思われているかだとかを、全く考えられもしなかったのだから。
こういう言い方はあまりにも失礼なのだろうけれど、初めて会ってその人の顔を目にしたとき(写真のやり取りはしていなかった)、十分に美人で、そして、僕との間にある二十以上の年齢の差が、思っていたほどはそこに表れていなかったから、僕はいくらかほっとしていた。しかし入ったホテルの部屋で、ほとんど裸になってベッドに腰かけ、僕を待ち受けている姿に、僕は唖然とした。
それはつまり、こっそりと抱いていた幻想をぶち壊しにするような光景で、重ねて失礼を承知で言えば、僕が写真だとか映像だとかで目にして憧れてきた女性の体との落差だった。お腹の肉は二段に重なって下着の縁にせり出し、胸回りから足の付け根のところまで体の横幅にほとんど起伏がなく、胸は豊かに膨らんでいても左右に広がり瓜のように垂れ下がっていた。さらに顔には、さっきまでなかった細かなしわが、突然いくつも現れたように見えた。
僕がたじろいでいるのを悟ったからか、彼女は約束していた報酬について口にし、「イメージよりもイケメンだったから」という理由で(嘘だろう)、それを増やしてあげると言い出した。結局、ここで逃げ出せばもっと悪い事態が起こるのではないかという恐れのおかげで、僕はその日の『仕事』を果たし仰せた。しかし、紙幣五枚という、少なくとも僕にとっては信じられない大金を渡されても、果たしてこれは僕が今夜させられたことに釣り合っているのだろうかという思いが、強烈に残っていた。つまり、僕はこの日初めて裸の女性と抱き合い、互いの体に舌を這わせすらし、女性の体温に包まれながらそこに自分の熱を吐き出すという経験をしたのだけれど、こんな形でその最初の経験を済ませてしまってよかったのかと、ずっと悩むハメになった。