表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/31

6.人形

 ミスティアは作りあがった人形を見つめ、ため息をついた。

「何故、このようなものを作ってしまったのでしょう……」

茶色の髪、ダークブラウンの目……アレス王子にそっくりなその人形は、優しい笑みをたたえているだけで返事はない。

 アレス王子がいた部屋のベッドに腰かけて、アレス王子の人形を窓辺に置いた。

「ミスティアお姉さま?」

「……!? リリア?」


 ミスティアはアレス王子の人形を隠そうとしたが遅かった。

「お姉さま……その人形は……アレス王子?」

「……あの……美しかったので……つい」

 リリアはくすっと笑ってから言った。

「お姉さまが誰かの人形を作るのは初めてですね」

「そんなこと……」

 ミスティアは否定しようとしたが、事実、いままで誰かをモデルにして人形を作りたいと思ったことはなかったと気づき、何も言わずにアレス王子の人形を抱きしめた。


「ミスティアお姉さま、その人形はどうするのですか?」

「えっと……アレス王子にプレゼント……したら、驚かれてしまうかしら?」

 リリアはぱっと表情を明るくして頷いた。

「素敵だと思います! ミスティアお姉さま、来週末に開催される王宮の舞踏会でアレス王子に人形を渡してはいかがですか?」

「王宮の舞踏会……」

 ミスティアは表情を曇らせた。


「いつもお姉さまは病気だと言って行きませんけれど、舞踏会はにぎやかで華やかで、楽しいですよ」

「にぎやかで華やか……。考えるだけで気が遠くなります……」

 ミスティアは暗い表情のままリリアに言った。リリアはにこやかにミスティアを見つめている。

 ミスティアは腕の中の人形を見た。人形は……何も言わない。

「……行ってみましょうか」

「お姉さま! お姉さまと一緒に舞踏会に行けるなんて素敵! 来週末が楽しみです!」

リリアは弾むように歩き、部屋を出た。


「アレス王子は……私のことを……覚えていてくださるかしら……」

 腕の中の人形に、ミスティアは問いかけていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ