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5.王宮からの迎え

アレス王子がノーム家に保護されて二週間がたった。

 ある天気の良い日、王宮からの使者がノーム家を訪ねてきた。

「ノーム子爵、王からの手紙です」

「はい、承ります」

 ノーム子爵は王からの手紙を読んで、ふうとため息をついた。

 王宮からの使者はノーム子爵に言った。

「王子を助けていただき、感謝していると王は仰せです。本日、アレス王子を王宮に連れて帰るよう、王から指示が出ています。アレス王子のもとへ案内していただけますか?」

「はい、こちらへ」

 ノーム子爵はアレス王子がいる部屋へと使者を案内した。

「こちらでアレス王子は療養されていらっしゃいます」

 使者はそれを聞くと、ドアをノックし、アレス王子に声をかけた。


「アレス王子、私はジーク・ランドです。王の命令でアレス王子をお迎えに参りました」

「ジークか。入ってくれ」

「失礼いたします」

 王の使者、ジークはアレス王子のいる部屋の扉を開け中に入った。

 アレス王子はベッドから上半身を起こし、ジークに向かって微笑んだ。

「アレス王子、怪我の具合はいかがですか?」

「ああ、だいぶ良くなったよ」

「それでは、王宮に帰ることができそうですか?」


「大丈夫だ。心配をかけてすまなかったな、ジーク」

 アレス王子とジークのやり取りを見ていたムーア子爵に、ジークが言った。

「アレス王子を助けてくださったミスティア様に一言お礼を言いたいのですが……」

「ああ、少々お待ちください」

 ノーム子爵はメイドにミスティアを呼ぶように告げた。

「ミスティア様にはなんとお礼を言えばよいか分かりません」

 ジークはそう言ってミスティアが来るのを待った。


「お待たせいたしました……ミスティア・ノームです……」

 ミスティアは扉の陰から、顔を少しだしジークとアレス王子に挨拶をした。

「これ、ミスティア。きちんと部屋に入って挨拶をしなさい」

 ノーム子爵に言われて、ミスティアはおびえながらも、おずおずと部屋に入りノーム子爵の後ろに隠れた。


「ミスティア様、私は王宮の使い出来たジーク・ランドと申します。この度は我が国の王子を助けていただき、感謝の言葉もありません」

「いえ……あの……私……たいしたことは……」

 ミスティアはかろうじて聞き取れるくらいの小さな声で、ジークに言った。

「ミスティア様、改めてお礼を言います。ありがとう」

「いえ……」

 ミスティアはアレス王子の言葉を聞いて、真っ赤になりノーム子爵の後ろに隠れてしまった。

「それでは、アレス王子。そろそろ馬車へ……。私の肩におつかまりください」

「ああ、すまない、ジーク」

 アレス王子はジークの肩を借りて立ち上がると、怪我が治りかけた足を引きずりながら馬車に向かった。


「ノーム子爵、この度の礼はあらためて行いたいと思う」

 アレス王子はノーム子爵の家の前で、微笑んで言った。

「アレス王子、馬車に乗れますか?」

「大丈夫だ、ジーク。少し支えてくれないか?」

「はい、アレス王子」


アレス王子とジークは馬車に乗り込んだ。

ムーア一家は王子を見送るため、馬車のそばに集まっている。

「ミスティア、リリア、アレス王子に挨拶をしなさい」

「はい。アレス王子……お大事に……」

 ミスティアは消えそうな声で言った。

「アレス王子、またお会いできればうれしいですわ」


 リリアは無邪気な笑みを浮かべ、アレス王子に言った。

「ミスティア様、本当にありがとうございました。リリア様もお元気で」

 アレス王子が礼を言った後、馬車が走り出した。

「ミスティア、良いことをしたな」

 ムーア子爵が言うと、ミスティアは表情を曇らせた。

「……そうでしょうか……」


 ミスティアは不安そうな目で、去っていくアレス王子を見送っていた。


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