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出会い 1

作者のすずすけと申します。

新作を投稿いたしましたので、拙い文章ではございますが読んでいただけると幸いにございます。


それではまたどこかの前書きでお会いいたしましょう。


「はやくいくぞ、リズ」


「まってよ、おにいちゃん」


 六歳になった僕、キールは一つ下の妹のリズベットを連れて、近くの森を駆けていた。

 普段から食卓に並ぶ山菜や鹿肉を採っている森ということもあり、かなり深くまで入り込まない限り森の地理は全て頭の中に入っていた。


 細い木の棒を手にして冒険気分で走る僕の後ろを身長差はそれほどないもののまだまだ筋力がついていないリズベットが必死に追いかけてくるがその差は開くばかりだ。


 銀色の髪を二つにくくったリズベットは母さんに似て大きくくりっとした目をしていて誰からも可愛がられる容姿をしていた。


「しょうがないなー」


 僕は振り返って、困り眉をしながら小さな歩幅で追いかけてくるリズベットを待つ。

 適当に垂れている木の葉っぱを棒で叩きながら待つ僕のもとに息を切らしてリズベットがやっと追いつく。


「おにいちゃん、つかれた」


「なさけないぞリズ」


 兄の威厳というものをリズベットに見せつけたい僕だが、残念なことに同世代の友だちを含めて回りから舐められている。


 というのも、問題はこの容姿にある。

 僕の容姿もリズベットと同じで母さんによく似ていた。


 細い銀色の髪に、どれだけ陽の光を浴びようと色白のままの肌、そして少女と間違われるほどに幼い顔つきをしていて、リズベットとはよく姉妹と間違われるほどだった。


 だからなのだろう、無意識にリズベットに対抗心を燃やして兄として優れていることをみせつけたくなるのだ。


 自分でも思う。妹を相手に大人げない、と。だけど実際子どもなのだから許してほしい。


「はぁ、はぁ……」


 僕は肩で息をするリズベットの頭についた葉っぱを手で払い除ける。

 必死に追いかけてきたせいか、服のあちらこちらに細かな葉っぱや汚れがたくさんついていた。


「こんなに汚したら、おかあさんにおこられるぞ?」


「おにいちゃんのせいだもん」


 くすぐったそうに僕の手で払われるリズベット。

 いつもこうして僕のペースが乱されるが、妹だから放っておくこともできない。


 僕としてはひとりで散策したかったのだが、いつもリズベットが僕についてくる。静かに家のドアを開けて出かけようとしても、何で気づいたのかリズベットが家の奥から「おにいちゃん、わたしも!」とおいかけてくるのだ。


 何度か気づかないふりをしてそのままでかけようともしたけど、母さんに「お兄ちゃんでしょ、リズと一緒に遊びなさい」と言われてしまうと仕方がない。


 ふくれっ面になりながらリズベットを待つしかない。

 こうして友だちと遊ぶ日以外のほぼ毎日、リズベットと遊んでいるのだ。


「リズも友だちと遊べばいいのに」


「やだ、わたしはおにいちゃんがいい」


「なんでだよ」


「おにいちゃんがいい!」


 頬を膨らませるリズベットの頭を雑に撫でられるリズベットはどこか気持ちよさそうにしているが、僕はため息が出るばかりだ。


 いつになったらリズは僕からはなれられるんだろう。


 そして僕はいつになったらリズを鏡で映したような女々しい容姿から男らしい顔に変わるんだろうか。

 森の木々は父や街の人たちが管理をしていることもあり、程よく間伐されて適度に木漏れ日が差している。


 鬱蒼とした空気はなく、小鳥の鳴き声に心地よい風が吹きぬける。


「リズ、僕はもう少し奥のほうにいきたいんだけど」


「わたし、つかれた」


 太い木に背中を預けるようにして腰を下ろしてしまうリズベット。


「だから言ったじゃないか、家にいろって」


「やだ!」


「……はぁ」


 どうしたものか。

 いつもリズベットのペースに合わせて不完全燃焼で散策をやめてしまう僕だったが、今日という今日はなんとしてももう少し奥の方まで行ってみたいのだ。


「リズは少しのあいだ、ここで休んでなよ」


「おにいちゃんは?」


 上目づかいで僕を見上げるリズベット。


「僕は……、ほらこれ。新しい木の棒を拾ってくる。もうぼろぼろだし」

 手に持った木の棒をリズベットに見せる。

 振り回していたこともあって、皮が剥けたりぼろぼろな木の棒は今にでも折れてしまいそうだ。


「でも……」


「すぐに戻ってくるから。戻ったらまた一緒に遊ぼう? それまでリズは休んでおくんだぞ」


「……うん」


 それっぽい理由を並べて僕は説得すると、リズベットは不安そうではあったが頷いてくれた。

 よかった。これで思う存分遊べる。


「それじゃ、いってくる」


「はやくもどってきてね、おにいちゃん」


 僕は勢いよく駆けだした。

 妹を置いて離れたところを親に見られれば間違いなく怒られるだろうけど、幸いリズベットが腰を下ろしているところは森のなかでもかなり浅いところだ。


 何かあればリズベット一人で家に帰られる距離でもある。よく一緒にここまで来ているからリズベットが家までの帰り道を迷う心配もない。


 あっという間にリズベットが見えなくなるほど奥にやってきた。

 一人でのびのび散策できることもあってか、足が軽い。


「あいつらはとっくの昔にここまで来てるっていうのに」


 友だちらは随分前に一人でこの森で遊ぶこともしていた。

 ここまでの散策も友だちはひとりでやっていたのに対して、僕の場合はリズベットがいつもそばにいるせいでここまで来れたためしがない。


 ぼろぼろの木の棒を放り捨て、新しい木の棒を見つけ拾う。


「暗くなる前にリズのところに戻ればだいじょうぶだろう」


 鼻歌混じりに奥へ奥へと進む。

 この辺も親や友だちと来たこともありとくに不安はない。


 剣を模して棒を振り上げ、葉っぱを叩く。

 パシッと軽い音を立てて枝からおちる葉っぱに、僕は魔獣を退治したような高揚感を覚える。


「くらえっ」


「やぁ!」


 色んな気や枝、葉っぱを魔獣と想定して棒を上下左右に振り回す。

 たのしい!


 リズベットのお守りをしないだけでこんなに自由だなんて、ひと時の幸せだ。

 夢中になって木の棒を振り回していた僕だったが、突如大きな音とともに地響きがした。


「な、なんだ?」


 地響きとともに、木に留まっていた小鳥たちが一斉に飛び上がる。小動物もまるで大きな音に驚いたように姿を見せたのだ。


「も、もしかして……、魔獣?」


【お願い】


少しでも

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