未来の王妃は意志を持つ -クロエ-
その日はあの部屋を出たあと、暗闇でも眠れた。不思議な感覚だった。
本当にあの光が私の心の暗闇を食べてしまったのかもしれない。
どうしてもあのぬいぐるみを作った人が気になってしまい、村に行ってみる事にした。
本来買い物などの外出は禁止されてはいないけれど、今まで完璧ではないと思いしてこなかった。
そして完璧ではないその行動に少しドキドキした。
村に到着すると祭りの後ということもあり、まだ少し賑わいや祭りのあとが残っていた。
村を散策していると1組の親子を発見した。
子供があのぬいぐるみを持っていたので声をかけようとしたけれど、隣にいる親と話しているようで声がかけられない。
タイミングをうかがっているうちに会話が聞こえてくる。
「まーちゃんそのぬいぐるみお気に入りね。」
まーちゃんと呼ばれたその子は嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた。
「うん!だってリサちゃんが作ったんだもん。」
リサ?これはリサという人が作ったのね。
「くまちゃんがいれば夜だって怖くないよ!」
「そうね。クマちゃんがいれば1人で寝れるわね。」
「うん!クマちゃんがずっと外にいてくれたら夜のお外も怖くないのになぁ。」
驚いた。暗闇が怖いのは私だけではなかった。
楽しそうに暮らしている彼らも暗闇が怖いことを知った。
そしてあのクマが解決してくれたことも。
『リサ』という人が暗闇からみんなを救ってくれたことを。
リサに会いたい。
私は漠然とその想いが湧き出てきた。
けれど今日は時間を使いすぎてしまったので帰らなければならない。
今日は諦めリサにはまた改めて会いにいく事にした。
数日後、再び村を訪れ『リサ』のことを聞くと「いなくなった」と聞かされた。
「どこに行かれたのですか?」
「知らねえよ。」
一緒に店番をしていたと思われる緑色の髪の青年がひどく不機嫌そうに答えた。
「どのようにしたら会えるのでしょうか?」
「はぁ?自分で考えろよ。話したくねえから行くわ。」
そう言うと青年はどこかに去ろうとした。
「待って!最後に!」
「なんだよ。」
「あれを作られたのは一緒にお店をしていた女の子なのでしょうか?」
「そうだよ!うるせぁな。さっさと帰れよ!」
罵倒にも近い返答をし、彼は去っていった。
他の人にも聞いてみたけれど、皆『どこかに行った』『引越しした』『わからない』とリサの所在はわからなくなっていた。
リサの所在がわかったら教えて欲しいという人も少なくなかった。
途方に暮れ家に帰る。
日も沈みそうで鼓動が早まる。
その時、子供が言っていた言葉が過る。
『うん!クマちゃんがずっと外にいてくれたら夜のお外も怖くないのになぁ。』
外にも明るい光があれば、暗闇が怖い子供も怖れなくなる。
リサが私の暗闇を消してくれたように、私も誰かの暗闇を消し去りたい。
それにリサの作ったものを応用して普及すればいつかその事にリサが気付いてくれるかもしれない。
生まれて初めての自分の意志。
王妃になる以外の意志。
王妃として完璧ではない私の意志にドキドキする。
未来の王妃とは思えない欲求。私『クロエ』の希望。
私は家に帰ると魔導省に連絡を取った。
読んで頂きありがとうございます(о´∀`о)
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