誤解とすれ違い
少しの間無言の時間がすぎ、その後少し悔しさを含むようなトーンでヴィハン様は話し始めた。
「なんであいつなんだ。」
「あいつとは…?」
「ライリー」
「ライリー様は私が学園に行けるようにフォローしてくださってるだけで…」
「なら俺のところに来いよ。」
話が見えてこない。
そもそも居候の私が居場所を簡単に変えれるのだろうか。
「でも…」
「こっちを見てくれ。」
少し顔の距離を離されたと思ったら、真っ直ぐに見つめられる。
離れたとは言え息が掛かりそうな位近すぎて目を合わせられない。
「リサ」
「あの…」
「リサ」
名前を呼ばれる度に鼓動が早まる。
薄暗く静かすぎる準備室で私の鼓動だけが大きくなり続けている。
「リサ」
また名前を呼ばれ、ヴィハン様の手が頬を撫でる。
「あ、あの!」
キスをされるかと思い、思わず大声を上げる。
「失礼ですが何か勘違いされている気がします。ライリー様は平民の私が学園に来られるようご配慮頂いているだけです。側に居てくださるのは私が至らない事が多いからだと思います。何よりライリー様には婚約者様がいらっしゃいますので、やましい関係ではございません。」
色々な誤解は早めに解かないと大きな事になりかねない。
そして新たな誤解を避ける為に言うことを言わないと。
「それにヴィハン様にもレーイ様とアーヤ様がいらっしゃるのではないでしょうか。学園で知り合ったばかりの私達がこのようなことをしていると誤解されるのではないでしょうか。」
ヴィハン様にも婚約者様がいる。
お2人に誤解されてしまってはいけない。
ヴィハン様は反論されるとは思わなかったのか、少し驚いた後不快な表情を浮かべた。
「レーイとアーヤは仕来りなだけだ。気にすることはない。それにライリーはリサが思っているような人間じゃないし、リサと俺は知り合ったばかりではない。思い出して欲しい。」
冷静ながらも少し怒りの入った声で反論するヴィハン様。
ライリー様が仮想シスコンの心配性ではないということ?
私と会ったのは初めてじゃない?
さらに婚約者2人はあんなにいつも側にいるのに仕来りなだけで関係がないということ?
「仕来りだとしても…!」
健気に寄り添う2人の扱いの悪さに苛立ってしまいつい大声を上げてしまった。
他の事について言葉を続けようとしたタイミングで授業が始まるチャイムが鳴り遮られてしまった。
「…大変失礼致しました。授業ですのでこれで。」
チャイムを聞いて少し冷静になった。
クラスに戻ろうとヴィハン様の腕を掻い潜り、準備室から出ようとした瞬間、またも腕を掴まれて後ろから抱きしめられてしまう。
「リサ、思い出して欲しい。俺との時間を。」
先程の苛立った声ではなく、優しいながらも少し切なそうな声で囁かれる。
「教室に戻ったら普段通りにする。ごめん。」
ヴィハン様は謝ると腕を離し解放してくれた。
そして続けて
「仕来りは気にしないで欲しい。俺に国は仕来りの関係だけでも問題ないし、第三夫人まで娶れる。」
今までこのよくわからないやりとりに加えて、異国の第三夫人のお誘いだったということに衝撃が走り頭が真っ白になった。
「リサ?」
固まってしまった私にヴィハン様が声をかけてくれて我に帰った。
「あの、そういうの大丈夫です!他を当たってください!私は1人の人と愛し愛されたいです!さようなら!」
逃げるように走りヴィハン様のそばを離れた。
「リサ!誤解が!」
ヴィハン様に呼び留められた気もしたけれど、振り返る事なく走って教室に戻った。




