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過去の話とあったかもしれない幸せな未来 12

「村に来てアシルが初めて外に連れ出してくれた時、ここにも来たよね。」


朧げな記憶だが確かに村を案内した時にここにも来たと思う。


「その時アシルが一生懸命『星の収穫祭』の話をしてくれて。最後に花を摘んで『これやる』って言ってくれてくれたの。」


そんなことをしたようなしないような。


「すごい嬉しかったんだよ。その花、今もしおりにして取ってあるの。大切にしてるの。」


あの時のしおり、あれはトーマスの花じゃなくて、俺のあげた花…?


『あのしおりって…』

『しおり?あれね。気に入ってたからしおりにしたの。かわいいでしょ?だいぶボロボロになっちゃったけど』


確かに言っていた『だいぶボロボロに』と。

それは上手く作れなくてボロボロになったのではなく『長年使っていてボロボロになった』ものだったのか。

トーマスの花ではなく俺の花。


花なんてプレゼントした記憶はなかったがどうやら過去の俺は誰よりも早くプレゼントしていたのか。そしてそれを大事にしてくれていた。嬉しい。嬉しすぎる。


「もしかしたらあの時からアシルのことが好きだったのかも。気付いたのはさっきだけどね。」


恥ずかしそうに笑うリサ。

そんなリサを強く抱きしめる。


「俺はその時にはすでにリサのことを好きだった。」

「うそー!?」

「本当だ。リサがこの村に来た時に恋に落ちたんだ。その日からずっとずっとリサが好きだった。ずっとリサのそばにいたかった。」


抱きしめる手を強めるとリサも返すように背中に手を回し強く抱きしめ返してくれた。


「長い初恋だね。」

「うるさいな。」


茶化されることも心地いい。ずっとこうしていたいが冷たい風が吹いた。仕事を抜けさせてもらってるのでそろそろ帰らねばならない。


抱きしめる手を緩めるとポケットからまたチャリとネックレスの音がした。忘れていた。


抱きしめる手を解除してポケットに手を入れる。

そしてネックレスを取り出すとリサの首にかけた。


「これ…」

「リサにあげたくて作ったんだ。リサが好きと言ってくれた俺の色のネックレス。受け取ってくれると嬉しい。」

「アシル…嬉しい…」


月明かりに照らされてネックレスがキラキラと光る。


「アシル…」

名前を呼ばれて顔に触れられる。


「アシル、目を見せて。私の大好きなアシルの目。」


髪の毛をかき分けられリサの目が合う。


「アシルの目、大好き。」

「リサ…」


強い風で星の花びらが舞う中、リサの顔に手をかけ初めてのキスを交わした。




あまりに長い時間外で過ごしてしまい慌てて店に戻った。

店は閉店こそしていないが、閉店間際だった。

閉店準備中に首にかけられたネックレスをみんなから茶化されるリサ。そしてその度に割られるグラス。

明日はお詫びにたくさんグラスを持ってこようと誓った。



帰りも遅くなったのでリサを家に送ることにした。

本当は一晩中でも一緒にいたいが、余裕のない男はモテないと聞く。ここは我慢して送るだけにした。


ドアの前で足を止め、最後のキスをする。


「アシル…ありがとう。おやすみなさい。」

「また明日な。朝迎えにくる。おやすみ。」


別れは寂しい。せめて家の中に入るまで見送りたい。

けれどリサは別れの挨拶をするとドアではなく、近くの窓に手をかけた。


「え?入らないの?」


リサの不可解な行動に疑問が湧く。


「だって玄関のドア、この間アシルが壊しちゃったから開かなくなっちゃったんだもん。じゃあね!」


リサは慣れた動きで窓から家に入ろうとした。

俺は慌ててリサを止めると共に、かつてないほど謝り尽くした。

壊されたドアについては番外編⑨参照です。

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